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中国高校大会優勝もCB西口大稀主将「今の力じゃ絶対に勝ち上がれない」。立正大淞南は過信せず貪欲に成長を続けてインハイへ

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立正大淞南高CB西口大稀主将は紅白戦で抜群の高さを見せていた

 10年度選手権で3位、インターハイでも3度3位に食い込んでいる山陰の雄、立正大淞南高(島根)が中国大会優勝を果たした。第70回中国高等学校サッカー選手権大会決勝で米子北高(鳥取)に3-0で快勝。プリンスリーグ中国では下位と苦しんでいるが、中国タイトルを獲得し、今後のリーグ戦やインターハイに弾みをつけている。

 米子北戦ではDF植田琉生(3年)、FW野澤颯天(3年)とエースFW永澤叶太(3年)がミドルシュート、カウンターからゴールを決めて3得点。先制後、相手に主導権を握られる時間が増えたものの、野尻豪監督が「粘れるようになってきた」というチームは米子北の反撃に耐え、逆に突き放して山陰のライバルに勝ち切った。

 中国大会では、FW起用されたレフティーMF三島拓人(2年)が3戦3発の活躍。チームとしても一つ結果を残したが、CB西口大稀主将(3年)は「良い自信になりましたけれども、過信にしないように全員で言い続けている」と引き締める。

 中国制覇後初の公式戦となったプリンスリーグ中国・岡山学芸館高(岡山)戦(24日)は0-2で敗戦。翌日に観戦したプレミアリーグWEST・米子北対東福岡高(福岡)戦で、米子北が強敵を上回るようなパフォーマンスを見せたことで選手たちはまた刺激を受けていた。

 西口は「中国大会で決勝、米子北とやって勝って、(この週末は)お互い次の試合だった。自分たちは上手くいかず、普通に負けて、米子北はレベルの高い相手に対しても、対等にやれていたので、そこが(2年連続インターハイ4強以上の米子北と)自分たちとの差だと思います。練習でやっているシュートの部分、パスのトラップの部分とか言われていることがしっかり身についていなくて、勝ちたいという気持ちだけが先行しすぎたので上手く行かなかったと思います」と反省する。

 それでも、26日は朝練から気持ちを入れ直してトレーニング。午後には雨の中、1年生から3年生までが同じメニューを行い、切り替え速い攻防、そしてゴールを目指した。その後、主力組などが紅白戦を実施。前日にバチバチの攻防戦だった米子北対東福岡戦を見ている選手たちは、意識高く、激しくボールを奪い合い、中央突破やセットプレーでゴールを目指しあった。

 夏冬の全国舞台を経験しているGK塚田喜心(3年)がゴールを守り、快足MF久島理功(3年)がドリブルシュートを決めるなど好プレーが見られたが、南健司総監督からは「それでは全国で勝てない」という言葉が飛んでいた。野尻監督も、南総監督も「(中盤、高い位置で相手に寄せ切って)もっとボールを取り切って欲しい」と要求。西口も「奪った後の切り替えの速さとか、奪ったあとに1本繋ぐこと。個人としてはまだまだ守備力とか、3人分守ることとか力がまだ足りていないので練習で求めてやっていきたい」と厳しかった。

 下級生時から先発を務める注目DF西口は、今回のインターハイ島根県予選決勝でヘディング弾2発の大活躍。1学年先輩のU-19全日本大学選抜DF坂井悠飛(福岡大)を目標に挙げるDFは、紅白戦でもゴール前で圧倒的な高さを見せ、一人で3本、4本とヘディングシュートを打ち込んでいた。

「ヘディングシュートは中学校から元々できているところに南先生から教えてもらって、さらに強いというか特化できたかなと思います。跳ぶタイミングとか相手に対する入り方とかヘディングしたあとの目線とか淞南でしか教えられないことを教えてもらった」。片足、両足、どちらでも跳躍できるようにトレーニング。この日の紅白戦ではインターセプトして一気に前進するシーンもあった。

 ただし、主将の求めるレベルはまだまだ高い。「3人分守らないといけないと自分でも思っている。(だが、)チームが上手く行っていない時に自分が守って勝たせる力が全然足りていない。(坂井)悠飛君は自分の目標にしている選手。(昨年、自分が)SBやっていてめっちゃ頼っていたというか、いてくれてデカい存在だったので、自分もあんな風にならないといけない。まだまだ悠飛君には足りていないので、そこをもっと目指してやっていきたい」。そして、チームについても「このままじゃ勝ち上がれない。今の力じゃ絶対に勝ち上がれない」と言い切った。

 シーズン当初不安視されていた今年の世代だが、経験豊富な南総監督、野尻監督の言葉を信じてまとまり、一つになってきている感覚を主将は持っている。課題から目を背けず、取り組み続けて米子北戦、それ以上の試合が常にできるようなチームになること。そして、「一戦一戦丁寧に勝ち続けて、自分たちの良い試合をして、選手権の目標を(さらに)上げることがインターハイの目標です」(西口)。伝統の中央突破、切り替えゼロ秒という特長、学校グラウンドの端のミニコートに選手たちが接ぎ合わせる形で人工芝を敷くなど、“立正大淞南”らしい工夫も変わらない。そして、今年は覚悟を持った選手が多いという世代。競争の中で貪欲に成長を続け、全国大会で勝ち上がる。





(取材・文 吉田太郎)
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