beacon

今年は爪痕ではなく、「噛みつく」。プリンス関西1部、2部で強化の近江が全国で勝ち切る、勝ち上がる

このエントリーをはてなブックマークに追加

躍進を狙う近江高の主将を務めるDF金山耀太

 今年は爪痕だけでは終わらない。滋賀の新鋭・近江高は、29日開幕のインターハイ1回戦で成立学園高(東京2)と対戦。勝てば、2回戦で19年大会優勝校の桐光学園高(神奈川)と戦う。

 近江は16年の本格強化から2年目の17年インターハイで全国大会初出場。19年インターハイにも出場し、20年度の選手権では初出場で全国初勝利を果たした。だが、全国大会での白星はその1つのみ。20年度の選手権は2回戦で神村学園高(鹿児島)に0-1で競り負け、昨年度の選手権も残り6分で昌平高(埼玉)に勝ち越され、初戦敗退に終わっている。

 前田高孝監督は「今までは(強豪校相手に)ちょっと爪痕残して消えていく。でも、多分これが(上位へ行くチームとの)差やと思います。そこで勝ち切るかどうかが大きな差やと思うので。これまでは、詰めが甘かった」と分析する。

 指揮官は昨年度の選手権敗退後、「悔しくて帰れなかった」。関東にコーチ数人と残り、昌平対前橋育英高(群馬)の3回戦をチェックしたという。自分たちに勝った昌平にインターハイ王者の前橋育英は快勝。その前橋育英も、続く準々決勝で大津高(熊本)に敗れた。

 それを見て痛感したことは「トーナメントはホンマに力がないと勝ち上がれない」ということ。ベストゲームでなくても勝てるようなチーム作り、また主軸選手たちのレベルをより引き上げる必要性を学んで滋賀へ戻った。

 迎えた今年、近江はリーグ戦で着実に力をつけてきている。昨年はAチームがプリンスリーグ関西1部で5位残留。そのAチームは今年、C大阪U-18とG大阪ユースからいずれも4ゴールを奪って勝ち切るなど4位につけている。頭の回転の速さや賢さが特長のDF金山耀太主将(3年)はプレーの幅も向上。また、指揮官が大事な番号とする「10番」をインターハイで託したMF山門立侑(3年)は、ドリブルが武器でポテンシャルもある選手だ。

 加えて、MF鵜戸瑛士(3年)やDF西村想大(3年)ら昨年から出場している選手たちを中心に全体的に技術力が高く、試合終盤に勝利への執念を示して勝ち切るなどライバルチームからの評価も高いチームになっている。

 また今年は、近江のBチームがプリンスリーグ関西2部に初昇格。セカンドチームのプリンスリーグ昇格は関西の歴史上初めてだ。近江はプリンスリーグ関西1部、関西2部に加え、Cチームが滋賀県県1部リーグに参戦。高いレベルでの強化を実現している。

 前田監督も「プリンス2部にBチームがいるんでそこが大きいですね。底上げの面で。毎週末は(AチームからCチームまで)40人、50人くらいが(メンバー入りをかけて)熱い戦いをしている」と説明。青森山田高(青森)や静岡学園高(静岡)など一部の強豪チームしかできていないプリンスリーグでのBチーム強化の機会を近江はしっかりと活かしている。

 前田監督は清水や新潟シンガポールでプレー後、関西学院大などを指導を経て近江の監督に就任。本格強化をスタートした当初と比べ、「一番は選手たちが自分たちで『やらなアカン』と。まだまだな面もあるけれど、自分たちで主体的になりつつありますね」と変化を口にする。また、組織作りを意識。外部コーチなどスタッフを増加するなど、チームの土台は全国トップレベルに近づいてきているようだ。

 その中で、前田監督は「ホンマに両方が大事だと思っている」とチームとしての魅力、結果の両方を求めていく考えだ。21日から23日まで参加した「第12回堺ユースサッカーフェスティバル」では試合によってメンバーを入れ替えながらインターハイの準備。気の利くMF廣瀬脩斗(2年)やDF山上空琉(2年)といった下級生たちも全国大会でも出番を待つ。

 前田監督は、インターハイへ向けて「噛みつかんといかん1年。今までは引っかき傷やったんで」とコメント。年々力をつけてきている近江の飛躍は間近だ。今年は惜敗ではなく、勝ち切る。そして、勝ち上がり、インパクトのある結果を残す。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2023

TOP