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[MOM4261]近江FW小山真尋(3年)_愚直に燃やす情熱の炎。Bチームから復帰したストライカーが2得点で難敵撃破の主役をさらう!

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2ゴールでチームの勝利に貢献した近江高FW小山真尋(3年=ヴェルデラッソ松阪出身)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[4.23 高円宮杯プリンスリーグ関西1部第4節 近江高 4-3 C大阪U-18 近江高校第2G]

 スタメンに帰ってきた男が、激しい打ち合いに火を点ける。愚直に、泥臭く、ゴールを目指すのは、自分にできる一番の武器。いつだって、目の前のボールはオレが絶対に触ってみせる。

「いつも練習から監督にも『泥臭く戦え』と言われているんですけど、それは近江のテーマでもあるので、泥臭く戦うことも意識してやれていましたし、ゴール前に詰め込むことも練習から意識していました」。

 セレッソ大阪U-18を4-3で撃破した近江高(滋賀)のストライカー。先週末はBチームの試合に出場していたというFW小山真尋(3年=ヴェルデラッソ松阪出身)が泥臭く2ゴールを挙げて、チームに貴重な勝ち点3をもたらした。

 2試合ぶりの先発復帰だった。プリンスリーグ関西1部第2節の興國高戦ではスタメン起用されたものの、「興國戦が終わってからの週があまり練習の中でも良くなかったんです」という小山は、翌週の試合はAチームが戦うプリンス関西1部ではなく、今シーズンからBチームが参戦しているプリンス関西2部の試合出場を言い渡される。

 大阪学院大高との一戦ではゴールこそ奪えなかったものの、その後のトレーニングは改めて気持ちを入れ直すと、前田高孝監督は再び小山をAチームに呼び戻す。「Bチームでも自分のやることは同じですし、今週もしっかりやり続けていたら監督が自分を使ってくれたので、『今日は絶対にやってやる』という気持ちでした」。スタメンの再チャンスに、気合は十分過ぎるほど入っていた。

 この日の相手は3連勝中のC大阪U-18だったが、そんなことは関係ない。前半4分に迎えたチャンスは相手GKに阻まれたが、携えた『前向きの矢印』も変わらない。6分。MF山門立侑(3年)がシュートを放った瞬間に、もう身体は動いていた。「こぼれは絶対にいつも狙おうと意識していますし、キーパーがこぼしてくれたので詰めるだけでした」。諦めずに飛び込み、プッシュしたボールはゴールネットへ到達する。「メッチャ嬉しかったです」という小山の一撃で、近江が先制点を手繰り寄せる。

 以降もエネルギッシュにピッチを駆け回る。「相手は上手くて、押し込まれる展開が多い中で、後ろはしっかり頑張って守ってくれていたので、前に来たボールは絶対に自分が収めてやるという気持ちでやっていました」。前線で身体を張ってキープしたかと思えば、プレスの先鋒としてボールホルダーへ果敢に向かっていく姿勢が清々しい。

 お互いが点を獲り合い、3-2で迎えた後半10分。再び泥臭いストライカーの本領が発揮される。右サイドでMF鵜戸瑛士(3年)がボールを持つと、2人の意志は共有される。「鵜戸とはクロスの練習をしていて、あそこで目が合ったので飛び込むだけでした」という小山は恐れることなくゴール前へ。

「キーパーも出てきていて、どっちが触るかわからなかったですけど、ゴチャッとなってボールがこぼれたので、詰め込むだけという感じでした」。気持ちで押し込んだこの日の自身2点目のゴールで、スコアは4-2に。終盤は一方的に攻められ、1点を返されたものの、最後は逃げ切りに成功。「今日はアップからメチャメチャ雰囲気良くできていて、『やってやるぞ』という感じでみんなやっていました。メチャクチャ嬉しかったです」と笑った小山が、首位撃破の主役を鮮やかに担ってみせた。

 中学時代の所属チームは三重のヴェルデラッソ松阪。もともと近江のことは知らなかったが、「コーチが近江を紹介してくれたんですけど、泥臭く戦うことは前提で、しっかり繋いでマイボールを保持してというサッカーが見ていて面白くて、自分も『ここでやりたいな』と思いました」とのこと。寮生活も含めたチームの一体感が心地良く、自身の選択は間違っていなかったと日々実感しているそうだ。

 3年生ということもあって、今年は高校サッカーのラストイヤー。だが、小山はそれ以外にも2023年に勝負を懸ける理由がある。「小学校低学年の時に、地震の時に活躍している消防士さんをテレビで見て『カッコいいな』と思って、そこからずっと消防士になりたいという夢があるので、高校でサッカーを最後にする予定です」。

 だからこそ、成し遂げたい。この最高の仲間たちと掲げた目標を、全員で、堂々と。「絶対にインターハイも選手権も全国大会に出て、全国でベスト4というチームの目標を達成できるように、ラスト1年を全力でやるだけです。その中で自分は前でボールを収めたり、チームを盛り上げたり、良い雰囲気を練習中から作っていけたらなと思っています」。

 愚直に、泥臭く燃やしてきた、ゴールへ向かう情熱の炎。自分で決めたサッカーキャリア最後の1年に懸けるその炎は、どれだけ手強い相手にも、どれだけ屈強なディフェンダーにも、誰にだって消させはしない。



(取材・文 土屋雅史)
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