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[総体]山陰の実力派から全国屈指の強豪へ、立正大淞南が島根県勢31年ぶりの4強進出!

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平成23年度全国高校総合体育大会「2011熱戦再来 北東北総体」サッカー競技(秋田)
[8.1 全国高校総体準々決勝 立正大淞南3-2尚志 男鹿総合運動公園陸上競技場]

 立正大淞南が島根県勢31年ぶりのベスト4進出! 秋田県内で開催中の平成23年度全国高校総合体育大会「2011熱戦再来 北東北総体」サッカー競技は1日、準々決勝を行い、男鹿市の男鹿総合運動公園陸上競技場で行われた第1試合ではともに初のベスト4進出をかけた立正大淞南(島根)と尚志(福島)が激突。後半31分に10番FW林大貴(2年)が決めた決勝ゴールにより、立正大淞南が3-2で競り勝った。1980年の松江南以来、島根県勢31年ぶりの4強進出を果たした立正大淞南はあす2日の準決勝で桐蔭学園(神奈川)と対戦する。

 もはや「山陰の実力派」ではない。立正大淞南が1月の高校選手権ベスト4に続く準決勝進出。尚志の驚異的な粘りで2度追いつかれる壮絶な一戦を勝ち切り、再び「全国トップ4」に名乗りを挙げた。試合は前半6分、立正大淞南のMF浦田雅之が決定機を迎えたが、これをGK秋山慧介のビッグセーブで守った尚志がその後主導権を握る。FW木村篤弥やFW皿良優介のキープ力、突破力を活かして相手の最終ラインにプレッシャーをかける。加えて立正大淞南は前半20分にMF隅田竜太が右足首を痛めてFW清水大地と交代。攻撃のキーマンの一人を失ったチームはパスミスが目立つなどスピードに乗った攻撃ができず、流れの悪い時間帯が続いた。それでも前半27分、相手ディフェンスのマークが緩くなった隙を突いた林のゴールで立正大淞南が先制する。

 ただ、原発事故の影響に悩む中、「福島県というハンデを力に変えてきた」という尚志は怯まない。後半6分、MF金田一樹(3年)からのパスを中央で受けたMF山岸祐也(3年)が、相手のマークを左側から外してすぐさま左足を一閃。グラウンダーのシュートはゴール右隅へ吸い込まれ、同点に追いついた。山岸の4試合連続ゴールで試合を振り出しに戻した尚志はさらに11分、皿良がスピードに乗ったまま相手の逆を取るドリブルで2人を抜き去りPAへ侵入。山岸の右足シュートがゴールを脅かすなど一気に逆転を目指す。

 だがダイヤモンド型の中盤の底に位置する大黒柱のMF稲葉修土主将が攻守に大車輪の働きを見せるなど、高速プレスと相手に間を与えずに清水やFW田路大樹が仕掛けた立正大淞南は後半27分、自陣からのフィードを林が頭でディフェンスラインの後方へ落とすと抜群のスピードで抜け出した田路が左サイドを独走。中央へのラストパスに走りこんだ清水がゴールへ押し込み、勝ち越した。

 尚志は30分、PAへと送られた金田の右ロングスローのこぼれ球を皿良が右足でゴールへと蹴りこむ。土壇場で生まれた同点ゴール。起死回生の一撃にスタンドには歓声と悲鳴が交錯した。だがゴールの余韻が覚めやらぬ1分後の31分、熱戦に終止符を打つ決勝弾が尚志ゴールを揺らした。立正大淞南は右サイドから清水がPAへ浸入。その折り返しに対してやや前方へ入りすぎた林が、後方へ流れたボールに体勢を崩しながらも強引に右足を振りぬくと、フワリと舞い上がったボールはカバーに入ろうとした尚志DF陣の逆をついてゆっくりとゴールへ吸い込まれた。

 尚志は後半ロスタイム、ラストプレーとなったロングフィードで競り勝ち、複数の選手が一気にPAへ飛び込む。そしてボールを動かし、2選手がフリーとなった左サイドへボールをつなぐ。決定的な形だったが、立正大淞南は懸命に戻っていた稲葉が渾身のスライディングタックルでボールをインターセプト。前線へ大きく蹴りだした瞬間、試合終了の笛が鳴り響いた。 

 南健二監督は「ウチは弱いですよ! ホンマ結果だけです。でも(2度追いつかれたが)追いつかれるのは慣れているんで」。今年の立正大淞南は「弱い」と言われ続けてきたチームだった。圧倒的な攻撃力で選手権全国4強まで勝ち上がったチームから先発10人が卒業。近年は島根県で絶対王者に君臨しているものの、新チームは新人戦を落とし、今大会の県予選でも益田との準決勝では相手のシュートが3本連続でポストを叩く幸運に救われ、松江南との決勝でも1-0辛勝と苦しんだ。それでも指揮官が「(最近)結果が出てきて『簡単には終われない』という雰囲気がある。卒業生から引き継いできている伝説を感じてくれている」と話したように、チームはPK戦にもつれ込んだ山梨学院との3回戦に続く苦しい試合を勝ち切り、この日チームの歴史に新たな1ページを刻んだ。

 期間中、選手たちは南監督とともに、近隣会場で行われているバスケットボール競技を観戦。劣勢のチームの選手が試合終了間際の残り1分30秒から3ポイントシュートを連発し、逆転勝利する姿を目の当たりにした南監督は「究極の時に冷静にできるのがスター」。この日は後半ロスタイムの稲葉のディフェンスなど「究極の時」とも言える場面で選手たちが見せたスーパープレーが、自らを勝利へと傾けた。徹底した中央突破など豪快なサッカーのイメージがあるが、独特の精神統一方法や緻密に計算されたコンディション調整などを取り入れ、よりよいパフォーマンスを発揮できるようにしてきた。そして勝つことによって自信を得た「弱い」チームは逞しく全国ベスト4の座を勝ち取った。

 試合後には大声援を送り続けた控え部員たちとともに恒例の「勝ちロコ」を披露。主将の稲葉は「まだまだプレミア(リーグ)にしてもいい結果を残していない。(総体の4強)これが実力だと思われるように頑張らないといけない」と気を引き締めつつ、「(応援団と)一緒になって戦った。(あと2試合)勝ちロコを踊れるといい」。立正大淞南としてはもちろん、島根県勢初の決勝進出へ。あす2日、全国で再び羽ばたいているチームが桐蔭学園を突破し、新たな歴史の扉を開く。 

(取材・文 吉田太郎)

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