[9.15 関東大学1部第12節 中央大1-2順天堂大 味フィ西]

　第86回関東大学サッカーリーグ戦関東1部リーグは15日、後期が開幕し、第12節1日目の2試合が行われた。首位・専修大と勝ち点24で並ぶ2位・中央大は11位の順天堂大と対戦。中大は後半3分にFW奥山慎主将(4年=帝京高)のゴールで先制したが、順大は後半39分に交代出場のFW原田開(3年=磐田ユース、前・湘南)が同点ゴールを決めると、ロスタイムにもMF天野純(3年=横浜FMユース)が決勝ゴールを決めて2-1で逆転勝ちした。

　冷静さを失わなかった順大が劇的な逆転勝ちをおさめて大きな勝ち点3を獲得した。立ち上がりからボールを支配したのは中大。清水加入内定のMF六平光成(4年=前橋育英高)が圧倒的なキープ力で相手をいなしていたほか、各選手が流動的な動きからスペースに顔を出してポゼッションすると、高い位置取りをした大宮入り内定の右SB今井智基(4年=大宮ユース)や左SB神田直哉(4年=秋田商高)、そしてディフェンスラインの背後を狙う奥山や川崎F入り内定のFW安柄俊(4年=東京朝鮮高)へボールを配球していく。

　11分にはFW田辺圭佑(3年=成立学園高)の左足FKがゴールを捉え、13分にはPAへ走りこんだ六平に右サイドから田辺が出したスルーパスが通る。だがこの決定機は順大GK川口大起(3年=市立船橋高)の好守によってスコアは動かない。24分にも左サイドの奥山が逆サイドのスペースへボールを落とす絶妙なサイドチェンジ。これを受けた田辺の左足シュートが順大ゴールを襲った。

　CB新井一耀(清水商高)、ボランチMF青木翼(清水商高)、トップ下のMF進藤圭介(桐蔭学園高)と1年生3人が先発した順大は攻守両面でサポートの意識が高い。攻撃面では各選手が囮となる動きを欠かさず。ダイレクトのパスワークはラストパスを入れる前に乱れてボールロストしていたものの、それでも守備面では中央を全く譲らない。押し込んでいた中大はサイドを攻略しかけるところまではいくものの、中央を切り崩すことができなかった。

　それでも後半開始直後に中大が先制する。2分、六平が絶妙なステップでGKをかわして上げた右クロスは、中央でフリーの安が合わせられずに得点することができなかった。ビッグチャンスを逃したが直後の3分、左サイドで奥山がFKを獲得すると、これを安が強烈な右足シュート。GKが弾くが、混戦からDFを外した奥山が右足で先制ゴールをねじ込んだ。

　集中力を切らさずに粘り強い戦いを見せていた順大だったが、痛い失点。14分にFW山嵜駿(2年=柏U-18)、19分にはオーバートレーニング症候群を再発して開幕戦以来の出場となる原田をピッチへ送り出す。ただ19分に大きな展開から天野が頭で出したラストパスに山嵜が飛び込む場面もあったが、後半はシュートゼロの時間帯が続いた。

　闘争心を表に出し、攻守に存在感のあった天野や10番MF栗本広輝(4年=清水商高)中心に相手の隙を狙う順大だが、中大は致命的なミスを犯さない。無得点のまま残り時間20分を切り、焦りも出てきそうな展開だった。ただ原田が「ボールを持たれるのは分かっていたので、イライラせずに一発を狙った」と振り返ったように順大の選手たちは集中力を研ぎ澄ましながら「その時」を待ち続ける。

　そして後半29分だ。順大は右サイドで山嵜、天野とボールをつなぎ、天野が中央へ絶妙なラストパスを送ると、この1本のパスで中央の局面は数的同数に。コントロールで今井を振り切った原田がGKの動きを見極めて同点の右足シュートをゴールへと流し込んだ。原田の復活ゴールに沸き返る順大イレブン。ほぼ支配していた試合展開に反して追いつかれた中大は、交代出場のFW皆川佑介(3年=前橋育英高)やMF澤田崇(3年=大津高)ら中心に攻撃の手を強めるが、順大はPAで強固な守りを築いて得点を許さない。

　ともに勝ち越しゴールを目指し、テンポが上がったまま突入したロスタイム。ラストプレーで順大が決勝ゴールを奪う。カウンターから左中間でボールを受けた原田がスピードのある今井との勝負を避けて中央突破を選択。「見ていて両CBの足の調子がおかしいと。だからCBで勝負。案の定、足に来ていてついてこられなかった」。CBを緩急で抜き去った原田が右前方へラストパスを送ると「練習通りでした。最後はシュートを決めるだけだった」という天野が利き足と逆の右足で決勝ゴールを流し込んだ。公式記録上の後半のシュート数は2本。降格圏内からの巻き返しを誓う順大が全員で粘り、そして「ここぞ」の局面を逃さずに上位勢撃破を果たした。

[写真]後半ロスタイム、決勝ゴールを決めた順天堂大・天野が左手を突き上げる

(取材・文　吉田太郎)

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