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「奪って攻撃」「奪ってゴール」の意識付けと守備連動、全日本大学選抜が短期合宿で「金獲り」策徹底

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 今年7月にロシア・カザンで開催されるユニバーシアードで金メダル獲得を目指す全日本大学選抜が23日、東京都内で2日間のショートキャンプをスタート。GKを含めたハーフコートでの8対8や12分間2本の10対10などで汗を流した。

 横浜F・マリノス特別指定選手の専修大MF長澤和輝(4年=八千代高)やすでに鹿島アントラーズ入り内定が発表された筑波大FW赤崎秀平(4年=佐賀東高)、筑波大MF谷口彰悟(4年=大津高)ら注目選手たちを擁する全日本大学選抜の目標は2年前の前回大会に続く「世界連覇」。ただ、3月のドイツ遠征と韓国に0-2で敗れたDENSO CUP SOCCER 第10回大学日韓(韓日)定期戦を通して課題も出てきている。

 今回の合宿のテーマは2つ。「奪って攻撃」「奪ってゴール」の意識付けと、「中に入ってきたボールは縦の関係で奪う。ワイドはズレて横の関係で奪う」(吉村雅文監督=順天堂大)というディフェンスの考え方を連動させることだ。攻撃面に関しては赤崎や法政大FW松本大輝(4年=大津高)という動き出しの速さ、抜群のスピードを備えた選手がいる。だが、現状ではまだその武器を活かしきれていない印象だ。吉村監督は言う。「『奪ってゴール』、『奪ってゴール』というイメージを出せない。今は『奪ってキープ』、『奪って保持』というような。ポゼッションはあくまでポゼッションであって、それが得点に結びつくことはない。2-0、3-0になってからポゼッションは考えればいいし、1-0で勝っている時の残り数分ならば分かるけれど、上手くなっていかなければならない、力をつけていかなければならない選手たちが“威張ってキープ”という発想はなくそうと。我々は代表チームとして成長していくということを考えると、そこのイメージを持てる子が必要」。

 3月のドイツ・韓国遠征を通してボールを奪う意識付けは大分浸透した。だが、奪った後の仕掛けが遅く、どうしてもボールを落ち着かせてしまい、相手に守備陣形を整える時間を与えてしまう。そして逆に相手に速い攻撃をされてしまって失点。ジュビロ磐田内定の筑波大MF上村岬(4年=磐田ユース)や専修大MF下田北斗(4年=大清水高)らボールを保持することのできる技術の高い選手もいるが、より強い相手との連戦を制すための術として「奪って攻撃」「奪ってゴール」という速さへの意識づけを徹底しなければならない。今回の合宿では瞬間的にボール出すことのできる選手である順天堂大MF天野純(4年=横浜FMユース)も再招集された。迎えたこの日の練習では、スペースのない中でも松本が高い身体能力を発揮して抜けだし、ゴールを破るなど成果が出ている場面もあった。専修大FW仲川輝人(3年=川崎F U-18)が「前に行く時はリズムよくできている。前のイマジネーション(の共有)はできている」というように多彩な攻撃陣のアイディアをより活かすためにも、24日のJFL・FC町田ゼルビアとの練習試合、そして今後の合宿でも奪ってからのスピード感の共有はテーマとなりそうだ。

 守備については、中央に入ってきたボールに関してはディフェンスラインと中盤のライン、そして中盤のラインと前線とでそれぞれ縦の関係で挟み込み、ワイドに逃げていく相手、ボールに対しては外側へ押し出して局面で奪い取ることに重点が置かれた。現時点ではディフェンスラインとボランチとの間で挟み込む意識は高まってきているが、指揮官は「前はシンドくても下がってこなければいけない」と前線にもより、ボールを奪うために落ちてくることを求める。そして「2つの方法をインプットしておきたい。これが連動することによって、中を通された時に縦の関係、ワイドのボールに対して押し出す関係が出来れば真ん中は間違いなく(陣形は)コンパクトになる」。

 吉村監督は「ユニバで毎試合失点食らっているチームで優勝しているチームはない」と守備の重要性を口にする。本大会では1次ラウンドからトルコ、ウクライナ、ウルグアイと同じブロックという混戦。今回の1泊2日のショートキャンプのようにチームとして活動できる期間はわずかだが、厳しい試合の連続を乗り越えて再び金メダルを獲得するために取り組んでいるテーマを自分たちの武器にする。

[写真]攻撃のキーマンとなりそうな法政大FW松本。この日も抜群のスピードからゴールを陥れた

(取材・文 吉田太郎)

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