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教育実習で主力不在もチーム守る「本当に頼りになる仲間」、筑波大DF松村&MF浅岡が示す強さの源

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背番号2の浅岡、13番を背負う松村

[6.18 第91回関東大学1部L第10節 明治大0-2筑波大 味フィ西]

 大学サッカーでは5月から6月へかけての時期、『教育実習』により4年生の主力選手が抜けるのが恒例の風景のひとつとなっている。現在、関東大学リーグで首位に立つ筑波大も例外ではない。磐田内定FW中野誠也(4年=磐田U-18)や主将のFW北川柊斗(4年=名古屋U18)らが順に教育実習でチームを空けていた。その間には、主力不在のチームを守った4年生の姿があったという。彼らの存在なしには、筑波大はこの順位にいない。

 小井土正亮監督が「指導者になりたいとか考えている選手はいけよ、ということで、積極的に採ってくれている」と話すように、筑波大蹴球部では多くの学生が教育実習を選択している。今季も中野と北川、GK森本泰介(4年=栃木ユース)、DF野口航(4年=大津高)、MF戸嶋祥郎(4年=市立浦和高)らが順にチームを離れた。行き先が近隣の中学校だった場合は、教育実習後に筑波大へ戻り、夜遅くに練習をするなどコンディションの差を埋めたという。

 指揮官は「普段は立ちっぱなしでいることなんてないだろうに、一日中立ちっぱなしで教育実習をして、練習もやって、コンディションを整えて、また教育実習というのを3週間。感謝しかないですし、頭が下がります」と学生たちの取り組みを称える。そんななか、実習とサッカーを両立する4年生の奮闘もそうだが、チームへ残った4年生の存在も忘れてはいけない。

 なかでもトップチームの最上級生であり、一般企業からの内定を得ているMF松村遼(4年=國學院久我山高)やDF浅岡大貴(4年=JFAアカデミー福島U18)は、主力不在の日々でも淡々とトレーニングへ取り組み、チームを牽引した。派手さはない二人だが堅実な背中に後輩たちはついていった。

 主将の北川は「松村選手と浅岡選手の二人は教育実習にいっていなかった。僕らがいない間、4年生として練習の質を下げないように逆に上げたり、後輩のメンタル面も気にしながらやっていたと聞きました。本当に頼りになります」と感謝。

「だからこそ、こういう大一番の強い相手(明治大)を前にして先発しても、差がなく、いいパフォーマンスで波がない。いつも自分のいい状態を出せるようなコンディション作り、メンタル作りをしてくれているので本当に頼りになる仲間です」と同級生を誇る。

 この日の明治大戦では、浅岡と松村がそろって先発。浅岡はダブルボランチの一角で、今季初先発となった松村は左SBでそれぞれ献身的に戦った。「今日は浅岡や松村が十二分にやってくれた」と指揮官が労ったように、90分間フル出場で随所に気の利いたプレーをみせては仲間をカバーした。

 松村は國學院久我山高から高校選手権直後の一般入試で合格を得て、筑波大へ進学。B1チームでスタートし、1年生の後期に一時はトップチーム入りしたが再び“降格”。1年間をBチームで過ごし、大学3年から再びトップチームへ戻った。

「なかなか試合に出られずに辛い時期もあったんですが、いつかチャンスは来ると思っていて、自分が家族や高校の同期や友達も応援してくれて、励まされて支えられてきた。そういう人たちに試合へ出て、恩返しをしたいという気持ちがすごいあって。そういう気持ちがあったので、努力を継続して、ここまで来れたかなと思います」

 今季ここまで2試合に途中出場。そして初先発となった明治大戦で及第点以上の戦いぶり。指揮官は「一般(入試)で入ってきて、なかなかチームに定着できないような選手でしたけど、元々持っていたフィジカル的なポテンシャルはチームのなかでは一番だとみんなが認めていた。それをなかなか継続して発揮できなかったというところ、4年間で期するものがあって成長して、今日の試合のパフォーマンスだったと思うので頼もしいなと思います」と松村を褒めちぎった。

 表立っては教育実習や就職活動で抜ける仲間を快く送り出しつつも、実際には内部で波風立っているチームも少なくない。就職活動で抜ける主力選手へ当たりが厳しくなる指導者やチームもあるのがリアルだ。しかし筑波大はそうではない。それぞれがしっかりと自分自身の道を見据え、互いの選択を尊重しあっている。サッカー、学業、進路……真摯な取り組み方をしている先輩の姿を後輩たちは見て、同じように歩む。それが重なり、伝統はつくられている。そこに筑波大の強さの源がある。

 すでに就職先を内定させている松村にとって、真剣にサッカーをできる時間はあとわずか。「やっぱり本気でできるのは今年が最後、小井土さんにも言われたのですが、キャリア最高の自分を見せて、自分も納得できるように終わらせたいなと思います。4年間でチームにまだ何も貢献できていないので、そこが一番。チームになにか貢献できれば」と微笑んだ。

 頼れる4年生たちとともに、文字通りにチーム一丸となり、筑波大はインカレ制覇に続くタイトル奪取へまい進していく。

(取材・文 片岡涼)
●第91回関東大学1部L特集

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