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[MOM734]桃山学院大DF石津大地(4年)_“関西制覇”を成し遂げたリーダーシップ

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桃山大主将・DF石津大地(4年)

[7.25 第50回関西学生サッカー選手権決勝 桃山学院大1-0関西福祉大 ヤンマーフィールド長居]

 近年の大学サッカーは、プレー面だけでなく「主体性」や「人間力」といった精神的な成長も追求しながらチームを作っていくのが主流になっている。桃山学院大も、松本直也監督が2016年に就任して以降、選手たちが中心となって運営されるチームへと変化してきた。今シーズンは前期リーグで下位に沈む状況が続いているが、「学生が逃げずにミーティングを重ね、やっと少しずつ今年のチームの形ができてきた」と松本監督が言うように、全員で苦境に向き合い、関西選手権に臨んだ。

 主将・DF石津大地(4年=鳥取U-18)が「練習から口うるさく言っていた」という粘り強さで、大阪府立大に競り勝って初戦を突破。大阪教育大、関西学院大と難敵を退けていくに従い、自信も取り戻していった。決勝戦は、MF谷本駿介(3年=C大阪U-18)やMF奥村仁(2年=C大阪U-18)といった関西福祉大のキーマンを、掴みきれずに前半は難しい展開となったが、後半になると相手の背後をとるプレーが増え、リズムの良い攻撃からFW池田翔大(3年=聖隷クリストファー高)がヘディングでゴール。関福大の推進力を持った反撃にも、しっかりとリスクマネジメントして対応し、2004年以来の関西選手権制覇を成し遂げた。

「リーグでは結果が出ず、自分たちのサッカーがわからなくなっていた。『日本一』という目標がぶれていたので、ほんとに俺らが目指すところは何なんやという部分を、一人ひとりが追求していって、練習の質や試合の内容につながっていった」と石津が話したように、全員の積み上げが桃山大を頂点へと押し上げた。

 松本監督が「リーダーシップがなかったら、あいつはなにもない。選手に厳しいことも言うし、憎まれ口も叩く。でも、言うだけのことをちゃんと実践してやっている」と評するチームを束ねるリーダー。小中高でもキャプテンを務めてきた石津だが、大学は100人を超える人数をまとめるという難しさもあるため、「最初は僕、キャプテン、マジでやりたくなかったです」と笑う。だが、「4回生全員が僕を推してくれて、信頼してくれたおかげで、腹をくくれました」とチームを背負う覚悟を決めた。桃山大で主将を務めた3才上の兄・優介(現・ベルガロッソ浜田)の「お前ならやれる」という言葉にも背中を押された。

 しかし、リーグではプレーが安定せず、メンバー外となる試合ともあった。そこでモチベーションが落ちそうになった石津を支えたのも、尊敬する兄だ。兄の優介は、ケガで試合に出られない時間も長かった。それでも腐ることなくリーダーとして振る舞い、チームを率いる姿をチームの一員として石津も見てきた。「僕は出られなかったとき、兄貴みたいにできなかったんですね。どうしてあんなことできるんだろうって、正直、憧れてました」と兄への尊敬を口にする。「そこで腐るのは二流だぞ。主将に推薦してくれた仲間はどう思う」という兄の言葉に、己を見つめ直した。

 石津を信じて主将へと推してくれた仲間の助けもあった。互いの思いを話す中で、チームメイトから「思考は現実化する、信じろ」という言葉をもらったことで、考え方を切り替えた。「勝ってることをイメージし続けて、信じろ」と周りに声をかけて、試合中に皆を励ました。PK戦にもつれこんだ関学大との試合では、PKを外して肩を落とすDF奥田勇斗(2年=G大阪ユース)に駆け寄り、「勝つための過程だから大丈夫、これで逆転したらめっちゃドラマチックやろ、それ想像しとけ」という言葉通りの結末を手にした。

「彼の良さが上手くチームに波及した」と松本監督も話すように、主将としての影響力の大きさは石津本人もよく理解している。「全員のモチベーション上げるのは難しいことですけど、それができなきゃこのチームのキャプテンしている意味がない。一人ひとりの最大値を出すっていうところが、やっと出せたかな」と手応えを口にする。

 だが、目標である『日本一』を獲るためにはまだ足りないことも多い。石津は「勢いだけじゃ勝てないってのは、みんなわかってる。どうチームメイトを生かすかを、自分がやらなあかんと思う。信じてやるだけです」と力強く話す。日本一へのイメージが現実となることを信じ、主将としてひたむきにやり続ける。

(取材・文 蟹江恭代)

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