“長友専属シェフ”加藤超也が明かす「疲れない体のつくりかた」
「食事で体は変えられます。疲れない体をつくるポイントは、たんぱく質と、良質な脂質です」。そう食事の重要性を説くのは、長友佑都(FC東京)の専属シェフを務める加藤超也(かとう・たつや)シェフだ。サッカー選手をはじめとしたアスリートが「疲れない体」を手に入れることができれば、練習や試合で高いパフォーマンスを発揮することができる。その秘訣を、加藤シェフに聞いた。
37歳で迎えた2023シーズンも、リーグ戦29試合に出場し鉄人ぶりを見せつけた長友。今年5日午後5時55分には、2024シーズンの契約更新も発表された。
長友の体をサポートする加藤シェフが長友と出会ったのは2016年のこと。筋肉系のケガに悩み食事法やトレーニング法をSNSで模索していた長友へDMを送って、自らをアピールしたことがきっかけ。DMの翌月には当時インテルに所属していた長友の元へとわたった。それから8年。いまなお専属シェフとしてサポートを続けている。
「2015年シーズンの長友選手はケガに悩まされていたのですが、僕がサポートをさせていただくようになって、食事にフォーカスを当ててケガの対策に取り組んでいきました。特に意識したのは、魚の脂です。サッカー選手は『脂質をあまり摂らないほうがいい』という印象を持たれていることが多いのですが、炎症作用を緩和するため、つまりは筋肉系のケガを予防するためにも、良質な脂質を意識して摂取することが重要だと思っています」
魚に含まれる良質な脂質の重要性を加藤シェフは強調する。それを裏付けるように、加藤シェフが長友を食事の面で支えるようになった後、2018年ロシア、2022年カタールと2度のW杯もレギュラーとしてプレーした。
「送り出せたと言ったらすごく偉そうな聞こえ方になるかもしれないですけど、長友選手が目標・目的としているところへケガなく送り出すのは、プロとしての自分の責任だと思っていました。長友選手がケガを心配することなく躍動した姿を見られたのは、とても嬉しかったです」
長友の活躍にも一役買ったという良質の脂質。手軽に摂るにはどうしたらいいのだろうか。
「意識的に週に1〜2回は魚を摂るようにするのが、重要だと思っています。理想は青魚なのですが、白身でも、赤身でも、OKです。一人暮らしをしている大学生で、自炊したいけどあまり包丁を握ったことがなくて何を食べたらいいのかわからない、という人にはスーパーで安いところを見つけて、お刺身を買って食べるようにすることをおすすめしています。ただし、生魚はお腹を壊しちゃいけない試合の当日や前日は避けたほうがいいですね」
また、手軽に食べられる優秀な魚として「しらす」を加藤シェフは推奨する。
「しらすはいわしの稚魚なので、青魚なんです。カルシウムとビタミンDも含まれています。骨の強化に必要な栄養素としてカルシウムは知られていると思うのですが、骨に必要なカルシウムがより吸収されやすくなることが期待できます。しらすは料理をしなくても食べられるのがおすすめしたい点で、長友選手もしらすをサラダに乗せて食べたりしています」
疲れない体をつくるうえで、加藤シェフが脂質とともに重要だと位置づけているのが、たんぱく質。人間が生きていくのに欠かせない、必須栄養素のひとつだ。近年は、コンビニでもたんぱく質を多く摂取できることを謳った食べ物を見かけるようになっている。
「たんぱく質は、筋肉の修復および筋肉の増量に関わっています。中高生や大学生のプレイヤーからメールをいただくこともよくあるのですが、彼らが一番気にしているのがたんぱく質なんです」
手軽にたんぱく質を摂る手段として、プロテインが挙げられるが、体との相性を見極める必要があることを加藤シェフは挙げる。
「大前提で気をつけてほしいのは、プロテイン種類によっては合う人と合わない人がいるケースがある為注意が必要です。体質検査をして、遅延性食物アレルギー検査を実施すると、ホエイプロテインなど牛乳由来のたんぱく質は体質的に反応がでやすい人もいるとよく耳にします。僕の周りでも、プロテインを飲んだら下痢したという人が結構いるんです。プロテインを飲んでみて自分の体がどう反応するかをよく観察することが重要ですね。自分の体がちゃんと答えを出してくれているのだから、人の答えじゃなくて自分の答えを信じてほしいと思います。トレーニング後の30分以内にたんぱく質を補うことはゴールデンタイムと呼ばれていて、どちらにせよたんぱく質は摂取した方がいいので、プロテインに限らず、ツナや鮭のおにぎりやゆで卵を食べて、たんぱく質を補給するようにしましょう」
加藤シェフの最新刊『今日もお疲れさま!超回復めし』(主婦の友社)の中で、特におすすめの一品を聞いてみた。
「1つ挙げるならたんぱく質の補給に適した『しっとりささみのリカバリーボウル』ですね。菅原由勢選手はオンラインで食事のサポートをしているのですが、彼もハマってつくっていました」
現役の日本代表にも刺さるレシピは、学生にもすすめたいと加藤シェフはいう。
「ささみと卵でシンプルに美味しくつくれるのですが、ポイントは、まず簡単だということ。もう1つは低コストであること。この2点が掛け算されているところが、アスリートに習慣的につくってもらえる理由だと思います」
料理できる力を身につければ、必ず自分の武器になる。加藤シェフは学生のプレイヤーにそうエールを送る。
「食事は毎日のことなので、どうしてもお金がかさんでしまう。いまは安く食べられる外食も増えていますが、自炊したほうが圧倒的に安くなります。学生のうちに自分で料理をつくれるようになったら、社会人になっても絶対に武器になります。自分の技術の一環だと思って、時間がある時に自炊力を磨けば、たとえば、海外を目指している選手にとっても、絶対財産になるなと思っています」
■材料(2人分)
・鶏ささ身…4本
・ねぎの白い部分…1/2本分
<合わせ調味料>
・塩…小さじ1/2
・黒こしょう…少々
・鶏ガラスープのもと…小さじ1
・ゆずこしょう…少々
・ごま油…大さじ1
・温泉卵…2個
・あたたかいごはん…茶わん2杯分
・ちぎりのり…適量
■つくり方
1.下ごしらえをする
ねぎは斜め薄切りにし、ささ身は筋を除く。
2.ささ身をゆでる
鍋に水500ml、塩小さじ1/2(分量外)を入れて沸かし、ささ身を加えてふたをし火を止める。余熱で5分ほど火を通したらとり出し、あら熱がとれたら手で裂く。
3.調味料とあえて、仕上げる
ポウルにささ身とねぎ、合わせ調味料の材料をすべて入れてあえる。器にごはんを盛り、のりを散らしてささ身とねぎをのせ、温泉卵をのせる。
(取材・文 奥山典幸)
長友も取り組む良質な脂質の摂取
37歳で迎えた2023シーズンも、リーグ戦29試合に出場し鉄人ぶりを見せつけた長友。今年5日午後5時55分には、2024シーズンの契約更新も発表された。
長友の体をサポートする加藤シェフが長友と出会ったのは2016年のこと。筋肉系のケガに悩み食事法やトレーニング法をSNSで模索していた長友へDMを送って、自らをアピールしたことがきっかけ。DMの翌月には当時インテルに所属していた長友の元へとわたった。それから8年。いまなお専属シェフとしてサポートを続けている。
「2015年シーズンの長友選手はケガに悩まされていたのですが、僕がサポートをさせていただくようになって、食事にフォーカスを当ててケガの対策に取り組んでいきました。特に意識したのは、魚の脂です。サッカー選手は『脂質をあまり摂らないほうがいい』という印象を持たれていることが多いのですが、炎症作用を緩和するため、つまりは筋肉系のケガを予防するためにも、良質な脂質を意識して摂取することが重要だと思っています」
魚に含まれる良質な脂質の重要性を加藤シェフは強調する。それを裏付けるように、加藤シェフが長友を食事の面で支えるようになった後、2018年ロシア、2022年カタールと2度のW杯もレギュラーとしてプレーした。
「送り出せたと言ったらすごく偉そうな聞こえ方になるかもしれないですけど、長友選手が目標・目的としているところへケガなく送り出すのは、プロとしての自分の責任だと思っていました。長友選手がケガを心配することなく躍動した姿を見られたのは、とても嬉しかったです」
長友の活躍にも一役買ったという良質の脂質。手軽に摂るにはどうしたらいいのだろうか。
「意識的に週に1〜2回は魚を摂るようにするのが、重要だと思っています。理想は青魚なのですが、白身でも、赤身でも、OKです。一人暮らしをしている大学生で、自炊したいけどあまり包丁を握ったことがなくて何を食べたらいいのかわからない、という人にはスーパーで安いところを見つけて、お刺身を買って食べるようにすることをおすすめしています。ただし、生魚はお腹を壊しちゃいけない試合の当日や前日は避けたほうがいいですね」
また、手軽に食べられる優秀な魚として「しらす」を加藤シェフは推奨する。
「しらすはいわしの稚魚なので、青魚なんです。カルシウムとビタミンDも含まれています。骨の強化に必要な栄養素としてカルシウムは知られていると思うのですが、骨に必要なカルシウムがより吸収されやすくなることが期待できます。しらすは料理をしなくても食べられるのがおすすめしたい点で、長友選手もしらすをサラダに乗せて食べたりしています」
長友は食事の改善でいまなお活躍を続けている
自分に合ったたんぱく質を取り入れよう
疲れない体をつくるうえで、加藤シェフが脂質とともに重要だと位置づけているのが、たんぱく質。人間が生きていくのに欠かせない、必須栄養素のひとつだ。近年は、コンビニでもたんぱく質を多く摂取できることを謳った食べ物を見かけるようになっている。
「たんぱく質は、筋肉の修復および筋肉の増量に関わっています。中高生や大学生のプレイヤーからメールをいただくこともよくあるのですが、彼らが一番気にしているのがたんぱく質なんです」
手軽にたんぱく質を摂る手段として、プロテインが挙げられるが、体との相性を見極める必要があることを加藤シェフは挙げる。
「大前提で気をつけてほしいのは、プロテイン種類によっては合う人と合わない人がいるケースがある為注意が必要です。体質検査をして、遅延性食物アレルギー検査を実施すると、ホエイプロテインなど牛乳由来のたんぱく質は体質的に反応がでやすい人もいるとよく耳にします。僕の周りでも、プロテインを飲んだら下痢したという人が結構いるんです。プロテインを飲んでみて自分の体がどう反応するかをよく観察することが重要ですね。自分の体がちゃんと答えを出してくれているのだから、人の答えじゃなくて自分の答えを信じてほしいと思います。トレーニング後の30分以内にたんぱく質を補うことはゴールデンタイムと呼ばれていて、どちらにせよたんぱく質は摂取した方がいいので、プロテインに限らず、ツナや鮭のおにぎりやゆで卵を食べて、たんぱく質を補給するようにしましょう」
手軽につくれる回復めし
加藤シェフの最新刊『今日もお疲れさま!超回復めし』(主婦の友社)の中で、特におすすめの一品を聞いてみた。
「1つ挙げるならたんぱく質の補給に適した『しっとりささみのリカバリーボウル』ですね。菅原由勢選手はオンラインで食事のサポートをしているのですが、彼もハマってつくっていました」
現役の日本代表にも刺さるレシピは、学生にもすすめたいと加藤シェフはいう。
「ささみと卵でシンプルに美味しくつくれるのですが、ポイントは、まず簡単だということ。もう1つは低コストであること。この2点が掛け算されているところが、アスリートに習慣的につくってもらえる理由だと思います」
料理できる力を身につければ、必ず自分の武器になる。加藤シェフは学生のプレイヤーにそうエールを送る。
「食事は毎日のことなので、どうしてもお金がかさんでしまう。いまは安く食べられる外食も増えていますが、自炊したほうが圧倒的に安くなります。学生のうちに自分で料理をつくれるようになったら、社会人になっても絶対に武器になります。自分の技術の一環だと思って、時間がある時に自炊力を磨けば、たとえば、海外を目指している選手にとっても、絶対財産になるなと思っています」
しっとりささみのリカバリーボウルのつくりかた
■材料(2人分)
・鶏ささ身…4本
・ねぎの白い部分…1/2本分
<合わせ調味料>
・塩…小さじ1/2
・黒こしょう…少々
・鶏ガラスープのもと…小さじ1
・ゆずこしょう…少々
・ごま油…大さじ1
・温泉卵…2個
・あたたかいごはん…茶わん2杯分
・ちぎりのり…適量
■つくり方
1.下ごしらえをする
ねぎは斜め薄切りにし、ささ身は筋を除く。
2.ささ身をゆでる
鍋に水500ml、塩小さじ1/2(分量外)を入れて沸かし、ささ身を加えてふたをし火を止める。余熱で5分ほど火を通したらとり出し、あら熱がとれたら手で裂く。
3.調味料とあえて、仕上げる
ポウルにささ身とねぎ、合わせ調味料の材料をすべて入れてあえる。器にごはんを盛り、のりを散らしてささ身とねぎをのせ、温泉卵をのせる。
(取材・文 奥山典幸)