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全日本大学選抜・中野監督インタビュー「ブラジルW杯に何人が入れるか」

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 来年8月のユニバーシアード競技大会(中国)で05年以来、3大会ぶりの優勝を目指す全日本大学選抜が7月末に発足した。7月28日から今月7日まで行ったトルコ遠征では、トルコのクラブチームなどと練習試合を行い、7勝1敗という好成績を残した。トルコ遠征出発前に、チームを率いる中野雄二監督(流通経済大監督)にインタビューを行った。

―今回の大学選抜はどんなチームになりそうですか?
「まだ選手の特徴が分かりきっているわけではないですが、招集した選手の能力をいかに最大限引き出して、組み合わせるかという考え方だから。こういうサッカーがやりたいからこういう選手を集めたというわけではなく、今、各チームで調子のいい選手、調子のいいチームの選手を集めています。今すぐに1年後に向かって、こういうコンセプトでやろうという考え方ではないです」

―チームのキーマンとなるのは?
「当然、経験から言ってもDF山村和也(3年=流通経済大)が軸になる。ただ、難しいのは来年のユニバのときに、五輪の予選とか南米選手権とかで、日本代表として山村が招集される可能性もある。そうしたらこのチームにいない。なので、そのへんを臨機応変に考えておかないといけない。

 今、U-19の遠征(北アイルランド遠征、7月22日~8月1日)にも5人(DF田中優毅(2年=日本体育大)・DF寺岡真弘(1年=関西大)・MF六平光成(2年=中央大)・MF藤田息吹(2年=慶應義塾大)・MF山崎直之(1年=東京学芸大))行ってますよね。彼らをどうするかというのもある。逆に言えば、山村がいなくても、U-19に行っている5人がいなくても、そいつらのポジションがないというような『大学選抜大変だよ』というチームにしたいですね」

―選抜のトレーニング内容はだいぶ厳しいものですね。
「朝から走り、3部練習。トルコで8試合。毎日試合で午前中も毎日練習。かなりハードだと思うが、トルコは大会ではないから、そこで倒れるまでやって、悪条件の中でも力を発揮できるというのを習慣にしないと。調整して調整してということばかりしても、若いんだから、今鍛えないとだめ。今鍛えないと、25、26歳になってから頑張れと言ってもそれは無理になる」

―だからこそ、この年代で厳しいトレーニングを?
「今のことが今後の財産になりますから。『なんでこんなに走らなきゃ』と選手は言いますけど、これがお前らの財産になるんだということを植えつけていかないと。

 サッカーはボールを持たない時間の方が長い。自分が動く、アクションを起こすということがどれだけチームに貢献するか。それが楽しくなるぐらいにならないと。俺が動いたから、あそこにスペースができたとか、そういう意識を持たせたい。

 みんなスキルは高くなったけど、ボールが来たときしかサッカーをやらない。ボールがない時間の方がはるかに長いんだから、練習もそっちの時間が長くなきゃおかしい。そういうのを分からせて理論的につめていかないといけない。やっぱり大学の中のトップを集めているから、トップが高い意識を持たないと、2014年W杯や先にはつながらないと思う」

―今回の選抜ですが、トレーニング中心ということで、目的はチームづくりとは別のところにあるんでしょうか?
「大学選抜の練習に行って『とにかく練習が自分のチームの倍くらいきつかった』と。でも『あそこに選ばれたらそれを普通にやれないと次は呼んでもらえないんだ』という意識にしないといけない。各チームに帰ったとき、自分のチームの練習で『きつい』ってなったら、選抜に行って何をしてたのってなりますよね。

 ユニバは目標かもしれないけど、最終目標じゃない。実はこいつらを鍛えることが目標。鍛え抜いて各チームに戻して、そこでその意識をみんなに伝達してもらって。各チームに意識を持ち帰ってほしい。じゃないと選抜が集められるのは年間で30日~40日。そんな時間で変えられない。あとは日々のトレーニングでどれだけ持続できるかだから」

―では先々のチームとしての目標は?
「この子たちの中から次の2014年のブラジルW杯に何人が入れるかというこだわりを持たせないといけない。ちょうど今、21歳とか18歳の選手ですから、4年後は25歳とかになる。この枠からJリーグでレギュラーになって活躍して、23名の代表に選ばれるかというのを具体的に目標にさせないと。そのためには、世界で戦う上でこのくらいの練習は普通だと思わないといけない」

―4年後を既に見据えることができている選手はいるんでしょうか?
「今話していることが夢物語になっている子が多い。W杯には出たいな。五輪には出たいな。小さい子が将来の夢について、難しさを考えずに、思ったままを語りますよね。それと変わらないんですよ。

 4年後、23人のメンバーに入るためには、今年は計画的に体づくりをしよう。来年はこういう風にしようとか、短期目標、中期目標、長期目標をちゃんとスケジューリングして、それを妥協せずにこなせるかどうかだと思うけど、個人でスケジュールをちゃんと考えている選手はいないですよね、残念ながら。意識が低い。でもW杯には出たい。そんなんで世界の舞台には立たせてもらえない。だからこそ、ここでしっかりとそういう意識を持ってほしい」

(取材・文 片岡涼)

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