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[大学選手権]“金メダル効果”高知大が延長戦制し8強へ

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[12.18 全日本大学選手権1回戦 鹿屋体育大0-2高知大 西が丘]

 大学サッカー日本一を争う第59回全日本大学サッカー選手権が18日、開幕。関東各地で1回戦が行われた。昨年度8強の鹿屋体育大(九州2)と17年連続出場の高知大(四国)との一戦は、0-0で突入した延長戦の末、2-0で高知大が勝利。高知大は23日の準々決勝で前回大会優勝の明治大と対戦する。

 “金メダル効果”だ。110分間の熱戦となった実力派対決。高知大はU-21日本代表の一員として第16回アジア競技大会(中国)に出場し、決勝で優勝ゴールを決めたCB實藤友紀(4年、川崎フロンターレ加入内定)がチームに好影響をもたらした。「(實藤が優勝ゴールを決めたので)金メダルは高知大が取ったようなもの」と野地照樹監督は笑い飛ばしていたが、背番号3のDFリーダーを「ああいうのがいるのといないのでは違う。頼もしい」と賞賛。対人の強さやアジア競技大会で印象付けた得点力などのプレー面だけではない。この日の試合前、實藤はベンチ外の選手に頼んで、チームがウォーミングアップしている最中に「チームのみんなを信じて自分らのサッカーをしよう!」というメッセージをロッカールームのホワイトボードに書いてもらっていた。アップからロッカールームへ戻った選手たちはそのメッセージを見て一丸となった。
 
 アジアで頂点に立った自信をチームに注入した實藤も「(メッセージで)チームがひとつになれたんじゃないかと思う」と微笑んでいたが、金メダリストに火をつけられたチームは苦しんだ試合で負けなかった。前半はロングボールを多用しながら、ギラヴァンツ北九州加入内定のMF多田高行(4年)、MF岩崎司(1年)らがダイナミックにゴール前へ飛び込んでくる鹿屋体育大の攻撃に危険な場面をつくられた。対してMF芝野創太(4年)のドリブル突破などで攻める高知大は、12分にMF香川大樹(4年)のスルーパスからFW福本圭(2年)が決定的な左足シュートを放ち、38分にもゴール至近距離から香川が決定的な右足シュート。だが32分にはPAでボールを奪われ、鹿屋体育大の岩崎にポスト直撃の左足シュートを浴びるなど決定的な場面もつくられた。

 ポゼッションで圧倒した後半も相手GK井上亮太(2年)のビッグセーブに阻まれてリードを奪うことができない。逆に後半27分、右クロスのクリアが中途半端になったところを岩崎にゴール至近距離から決定的な左足シュートを打たれる。ただ「GKが右後方にいて、自分しかいないのが分かっていた。体を張ろうと思っていた」という實藤が頭でスーパークリア。アジア競技大会決勝でゴールを決めたことにより、使ってしまっていた幸運を「まだ使い果たしていないと思うんで・・・・・・」と期待していた實藤は「まだツキが残っていた」とチームを救ったビッグプレーに安堵した表情だった。

 守備陣の奮闘もあり、ゴールを守った高知大に待望のゴールが生まれたのは0-0でもつれ込んだ延長前半9分。中盤中央左寄りの位置でFKを得た高知大はMF西山巧真(3年)の蹴ったボールこそ鹿屋体育大DFに頭で弾かれたが、小さなクリアとなったセカンドボールに「こぼれ球が結構あそこに来ていた。来たら蹴りこんでやろうと思っていた」と読んでいた芝野が鋭く反応して左足ダイレクトであわせる。ゆっくりとゴールへと吸い込まれたボールを確認した芝野はひざをついたまま両手を握り締めて歓喜を爆発。後半途中から足が攣っていた芝野は決勝ゴールと引き換えに完全に動けなくなり交代となったが、この一撃がチームを救った。そして延長後半5分には右SB赤木俊秀(2年)の右クロスにフリーで走りこんだ途中出場のFW竹内宏次朗(2年)が頭で押し込み2-0。高知大が110分間の熱戦を制した。

 アジア競技大会でヒーローとなったことで實藤に取材が集中するが、芝野は「(アジア大会での優勝ゴールは)素直にうれしかったし、誇りに思った」と意に介さず、實藤自身も「高知大も注目されるのでありがたいこと」と喜ぶ。4年生を中心としたまとまりの良さはチームの大きな武器だ。また今大会は昨年の総理大臣杯全日本大学トーナメント準優勝メンバーの大半が残り、實藤以外も実力派揃い。實藤がU-21代表で見せた活躍で注目度を高めた高知大は、今度はその実力で勝ち続け、さらなる注目を集める。

[写真]延長前半9分、高知大はMF芝野(背番号14)が先制ゴール
(取材・文 吉田太郎)
第59回大学選手権特集

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