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[大学選手権]名門追い詰めた浜松大、悔やみきれない終戦

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[12.23 全日本大学選手権準々決勝 筑波大2-2(PK3-1)浜松大 平塚]

 痛恨の失点だった。前半32分にFW神谷嶺輔のゴールで先制した浜松大は一度追いつかれながらも後半30分、MF増田誠也のスルーパスから途中出場のFW大石明日希が右足シュート。このこぼれ球をFW村松知輝が押し込んで再び勝ち越し点を奪った。筑波大の怒涛の反撃を跳ね返し、後は試合終了の笛を聞くだけ。だが、3分が提示されたロスタイム残りわずかで筑波大FW赤崎秀平に右足シュートをねじ込まれてしまった。

 元日本代表MFで女優・長澤まさみの父でもある長澤和明監督は「あの1点は防げる失点。状況に応じて守ることができていなかった。勉強だね」と無念の表情。だが「筑波を苦しめたということで、少なからず浜大の名前は残せた」と胸を張っていた。

 それでも勝ちたかった。この試合は骨折した骨がまだつききれていないというMF安間ム月主将が強行先発。指揮を執る井幡博康コーチは試合前「きょうはム月でいくよ。4年生だし、途中から出すよりもいけるところまでいってもらえれば・・・・・・。浜大らしく楽しいサッカーをしてくれればいい。勝つチャンスも十分ある」と説明したが、MF水野翔介とその安間、先発でわずか2人だけの4年生中心に、全国にかける思いをピッチの上で披露する。

 気迫だけでない。確かに一人ひとりの技術では年代別日本代表経験者の並ぶ筑波大の方が上。それでも増田の絶妙なドリブルとスルーパス、村松のスピードを生かしたサイド攻撃、そして中盤の底の位置で健闘した大芝貴明やCB鍋田圭吾ら4バック、GK佐野恭佑の粘り強い守りまで、全国屈指の強豪相手に全員で真っ向勝負を貫いた。

 GKをかわしながらシュートを外すなど再三突き放すチャンスがあったこと、また2-2の延長戦にもビッグチャンスが訪れていたことを考えると、悔やみきれない試合内容。プレッシャーのかかったPK戦は1人目のFW高嶋淳をはじめ、3選手のシュートが枠をはずれ、終戦が決まると選手たちは悔し涙を流した。

 選手たちは分かっていた。東海地区の浜松大が全国でアピールするためには強豪たちを叩くしかない。出身校のリストを見ると26人中15人が地元・静岡の選手。全国クラスのチームと比べ、決して選手が集まっている訳でもないが、それでも総理大臣杯全日本大学トーナメント準優勝の中京大を上回り、東海タイトルを獲得すると、今大会8度優勝の名門・筑波大を追い詰めた。ただ指揮官が「(準決勝へ進めなかったのは)力の差」と振り返ったように日本一を狙うチームとの間では目に見えない差があった。

 中盤で十分な存在感を放った増田は「自信はあったけど2度もリードできるとは思っていなかった。ただ筑波はめっちゃうまかった。ボールを取れないように動かされた。そして勝つチームは最後の最後まであきらめない」。村松は涙ながらに「もうひとつ、もうふたつ上にいくため、自分自身の足りないところを見つめ直したい」と誓っていた。

 メンバー26人中4年生は5人だけ。チームの柱は失うが、それでも強豪と110分間の死闘を演じた選手たちが来年も残る。東海地区を突破することは簡単ではないが、水野が「まだまだやりたかった」と目を赤く染めたまま語った先輩たちの思いを胸に「今年1勝が目標だった」チームは来年、本気で上を目指して全国舞台へ舞い戻る。

(取材・文 吉田太郎)
第59回大学選手権特集

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