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“裏・世界一決定戦”が開幕

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[3.11 東アジアサッカー選手権2010予選大会第1戦 マカオ代表 6-1 北マリアナ諸島代表 グアム・レオパレススタジアム ]

 11日、2010年2月に日本で行われる東アジアサッカー選手権2010決勝大会の予選大会がグアムのレオパレススタジアムで開幕した。FIFAランキング最下位タイに当たる201位(09年2月、以下同)のグアム、同197位のマカオ、同193位のモンゴル、FIFA未加盟の北マリアナ諸島(07年にはグアムに0-9で敗れている)の世界下位4チームが集った大会は言わば“裏・世界一決定戦”。この4チームが1回戦総当りのリーグ戦で優勝と東アジアサッカー選手権準決勝大会(8月、台湾。日本は決勝大会のみ出場)への出場権を争う。

 開幕試合は、マカオと昨年名古屋グランパスでコーチを務めていた神戸清雄氏が新監督に就任した北マリアナ諸島との対戦。FW CHAN Kin SengとFW HO Man Houがそれぞれ2得点を決めるなど計6得点を奪ったマカオが6-1で勝った。

 気温28度の暑さの中で始まった試合は、公式戦で白星を得たことのない“最弱候補”北マリアナ諸島が先制点を奪った。前半5分、右サイドでボールを持ったFWJoe Wang MILLERが相手DFひとりをかわし、そのまま左足で今大会の初ゴール。2年前に世界最下位・グアムに9点取られた“実績”があるだけに大会関係者から「大敗しなければいいんですが・・・」と心配までされていた北マリアナ諸島のゴールで会場は沸いた。
 4-1-4-1システムの中盤の底のポジションに入ったMFのNicolas Benjamin SWAIM(前北マリアナ代表監督!)が相手の攻撃を摘み攻撃の起点に。前線では、アメリカ国籍を取得して代表入りしたという中国系プレーヤー・MILLERの個人技と超大型センターFW Ross Benjamin WOODの高さを生かして相手ゴールへ迫った。試合序盤の多くは北マリアナ諸島の時間帯。「(力は相手が上だが)10分までは驚かせよう」という神戸監督のアドバイス通りに試合は進んでいった。

 ただ、自力に勝るマカオは国際経験の浅い北マリアナDFラインの裏のスペースにロビングやスルーパスを送って混乱させる。試合の主導権を握り返すと、前回の予選大会でFW鄭大世(川崎F)も出場していた北朝鮮代表からゴールを決めているマカオのエースCHANが爆発。13分、24分にゴールを決めて逆転すると、さらに32分にはカウンター攻撃からドリブルで相手の守備網を切り裂き、最後はそのスルーパスをHO Man Houが右足でゴール。CHANの活躍で3連続得点を挙げたマカオは40分にもFW LEONG Chong Inが決めて3点リードで前半を折り返した。

 北マリアナ諸島は後半11分、SWAIMの左足FKがゴール右ポストをかすめ、39分にはDFラインの裏を突いた左MF Jason SCHROEDERが決定的な左足シュートを放った。だが、2点目のゴールは奪えず。逆に後半、17歳のMF LOI Wai HongのゴールとHO Man Houのこの日2点目となる一撃で2点を加えたマカオの勝利となった。

 世界ランキングでは下にわずかな数しかいないマカオだが、前回大会予選では今大会の出場チーム中最上位に入っており優勝候補。白星スタートについてLEUNG Sui Wing監督は「(暑くて)難しいコンディションだった。内容は満足していないが今回はまだ初戦。残り2試合いいゲームをしたい」とコメントした。
 一方、就任からわずか1ヵ月で大会に臨んだ北マリアナ諸島・神戸監督は「国内では体感できないスピードを味わえたことは経験面でのいい収穫。(狭いスペースでの崩し方など)練習でやってきたことを出せていた面もあった」と選手たちの健闘を讃えていた。対人プレーに強さを見せ、決定機も作り出すなど、スコア以上の戦いぶりを見せただけに今後の2試合にも期待をすることができそうだ。

 北マリアナは次戦でグアム代表と対戦。現グアム代表はかつて同代表を率いていた神戸監督の指導を受けた選手が多く、「師弟対決」でもある。「楽しみだけど複雑ですね」と神戸監督。グアムはこの日の第2試合で優勝候補筆頭と目されていたモンゴルを破ったが、「グアムにできた(育成からの強化)ことがノーザンマリアナ(北マリアナ)にできないわけではない。ひとつでも多くのことを経験させて島に持ち帰りたい」。代表チーム強化と選手、スタッフ育成に意欲を燃やしている神戸監督は、マカオ戦同様かつての教え子たちにも簡単に勝たせるつもりはない。

<写真>2得点を挙げるなど大活躍したマカオのエース・CHAN Kin Seng(左)
(取材・文 吉田太郎)

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