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[戦評]タレント性よりもバランスが整ったブラジル

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[6.28 コンフェデ杯決勝 ブラジル3-2アメリカ ヨハネスブルク]

田村修一の「視点」

 決勝戦前半はアメリカがMFクリント・デンプシーランドン・ドノバンのゴールで2-0とリード。しかし後半ブラジルがFWルイス・ファビアーノの2発、ルシオのゴールで3点を奪取し、逆転勝利を飾った。

 アメリカはこれまでのどの試合よりも前半からアグレッシブに攻めていた。これまでは基本的に守りを固めていたが、決勝では前への押し上げが強く、より多くの人数をかけてブラジルに相対した。運動量はブラジルよりも多く、これが前半の2点に繋がった。その証拠に、前半は1人当たりの走行距離がブラジルよりも500m勝っていた。しかし後半は特に攻守の面で疲れが見え、ブラジルの攻撃に対応する時間が長くなってしまった。決勝は負けてはしまったが、エジプトに勝ったあたりからアメリカはこの大会で成長を見せた。組織的に強くなったが、選手たちが自信を持って守れるようになった印象がある。戦力としては、世界のトップ10よりやや下のクラスに付けているのではないだろうか。2点目のカウンターアタックからのドノバンのプレーは見応えがあった。パスの散らしも、シュート前のフェイントも簡単なように見えるが、日本にあれだけのプレーが出来る選手がどれだけいるのだろうか。

 ブラジルは今大会全体を見ても、決して運動量は多くなかった。しかし、後半早々のファビアーノの1点が流れを変えた。ドゥンガ監督は、サイドからGKとDFラインの間にクロスを入れていく攻撃を指示し、選手たちは意図的にそこを狙っていた。また真ん中にクサビを入れては、相手DFが中央に集まるよう揺さぶりをかけチャンスを作った。ブラジルは監督の戦術が浸透している印象がある。戦術的ではあるが守備的でなく、攻守ともに非常にバランスがとれている。ドゥンガが現役時代のブラジルは守備的なサッカーで評判は良くなかった。しかし今はオフェンス、ディフェンスのバランスが良い。非常に組織的だが機械的ではなく、戦術ありきで選手たちが臨機応変に動けている。タレント性でいうとアドリアーノ、ロナウジーニョらがいた06年の頃の方が上。しかし、バランスは今回の方がとれているように思える。中心選手はやはりカカ。リプレイで見るとゴールラインを割っていた"幻のヘディングゴール"がノーゴールとなっても、カカは判定に対して変に熱くならなかった。彼の性格もあるが、このドゥンガのチームは非常に理性的且つ冷静な気持ちでゲームに臨んでいるのがうかがえた。W杯まで1年あるが、改めてブラジルの力を見せられた一戦となった。

(取材 フットボールアナリスト田村修一)

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