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アフリカの夢ついえる…泣き崩れるジャン、まさかのPK失敗

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[7.2 W杯準々決勝 ウルグアイ1-1(PK4-2)ガーナ サッカーシティ]

 ガーナの、そしてアフリカ中の夢を乗せたキックはクロスバーを叩き、乾いた音がスタジアムに響いた。ブブゼラの音はピタリと鳴り止み、8万4017人で埋め尽くされたスタジアムは一瞬、静寂に包まれた。

 延長後半ロスタイム、決めればガーナの勝利は確実となるPK。FWアサモア・ジャンが右足で放った渾身のシュートは、しかしクロスバーに弾かれた。直後に延長戦終了の笛。試合はPK戦にもつれ込んだ。

 ユニフォームで顔を覆い、呆然とするギャン。それでも、PK戦の1人目として再びキッカーを務め、今度はしっかりとゴール右上に決めてみせた。流れをなんとか引き戻したい。そんな執念が伝わってくるキックだったが、3人目のDFジョン・メンサー、4人目のFWドミニク・アディアーが立て続けにGKのセーブに遭い、万事休す。PK2-4で、アフリカ勢史上初となる4強入りはならなかった。

 初めてアフリカ大陸で開催されたW杯。しかし、地元の南アフリカを含む5ヵ国がグループリーグ敗退に終わった。唯一、決勝トーナメントに進出したガーナは1回戦で延長戦の末にアメリカを下し、同国史上初、アフリカ勢としてもカメルーン、セネガルに続く史上3ヵ国目の8強入りを果たした。

 次はアフリカ勢初のベスト4。地元の南アフリカのファンもスタンドでガーナ国旗を振り、ガーナカラーのユニフォームを着て声援を送った。ガーナがチャンスを迎えるたびにブブゼラの轟音が響き、ウルグアイのチャンスにはブーイングが飛んだ。8万を超える大観衆はガーナの勝利を祈っていた。しかし、全員が歴史的勝利を確信した直後、悲劇が待っていた。

 試合後、泣き崩れるギャンをPK戦で失敗したメンサーが抱き起こし、肩を抱いた。「アフリカを代表してベスト8に進むことができた。すべてのアフリカの人たちを誇りに思う」と話し、アフリカの希望を全身に背負ってきたギャンの号泣。ミロバン・ライェバッチ監督は「これもサッカーだ。私に言えるのはそれだけだ。我々は自分たちが成し遂げたことに誇りを持たなければならない」と言葉を絞り出し、敗戦を受け入れるしかなかった。

<写真>泣き崩れたギャンはスタッフに支えられる……

(取材・文 西山紘平)

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