beacon

カタールW杯のSNS誹謗中傷データが判明…GLはドイツvs日本が最多検出、大会期間中28万件超の投稿が非表示に

このエントリーをはてなブックマークに追加

グループリーグではドイツvs日本に関する悪質な投稿が多かったようだ

 SNS上での誹謗中傷が世界的に大きな問題となっているなか、国際サッカー連盟(FIFA)と国際プロサッカー選手協会(FIFPro)は、昨年行われたカタールワールドカップにおけるデータを発表した。

 世界最大級のスポーツイベントであるW杯は多くのファンが観戦する一方、視聴者の母数が増えるため誹謗中傷的な投稿がされるリスクが高まる。そこでFIFAとFIFProはソーシャルメディア保護サービス(SMPS)を導入したという。

 SMPSは大きく分けて「モニタリング」と「モデレーション」の2つに分類される。「モニタリング」はSNS上に誹謗中傷的な投稿がないかを確認し、判明した場合は各運営団体と連携して投稿の削除を行うもの。「モデレーション」は誹謗中傷的な投稿をリアルタイムで検出し、投稿を非表示にするものだ。選手、チームスタッフ、審判員が競技に集中できるようにするため、合計1921のアカウントが保護対象となった。AIを駆使しつつ精度を高めるため、人の目でもチェックが行われた。

 FIFAによると「モニタリング」により、19636件の投稿が誹謗中傷と判断されたという。そのうちの13105件はツイッターに投稿されたものだったようだ。「モデレーション」は機能の関係でツイッターが含まれていないものの、28万件以上の投稿が誹謗中傷的な疑いとして非表示になった。これらの取り組みにより、選手が悪質な投稿を目にすることは減ったとされている。

 PK戦に及ぶ激闘となった決勝では、44710件の投稿をAIが誹謗中傷の疑いとしてリストアップ。そのうち1255件のコメントが誹謗中傷的なものとして各SNS運営団体に報告され、2946件の投稿が非表示にされている。ただ、悪質な投稿として報告されたアカウントの中にはSNS運営団体によって放置されているものがあることも発表された。

 なお、最も誹謗中傷的な投稿が検出された試合は準々決勝・イングランド対フランスで、試合から24時間が経過しても多くの悪質な投稿があったという。グループリーグに限るとドイツ対日本が最多で、報告及び非表示とされた投稿は約9000件に及んだ。日本が大金星を掴んだ一方でドイツにとっては衝撃的な敗戦となっただけに、ファンから攻撃的な投稿が相次いだと思われる。

 また、FIFAはSMPSを通じて誹謗中傷のパターンについて分析を行った。その結果、300人以上の選手が人種差別的な投稿の被害に遭っていたことが判明。同性愛嫌悪の差別的な投稿も多くあったが、文化的な理由でSNS運営団体による積極的な対応はされなかったという。また、英語以外の言語で書かれた悪質な投稿は削除されるまでに時間がかかったり、対応が不十分だったりすることが分かった。

 サッカー的な観点では、大会が進むにつれて脅迫的な投稿が増えたことが明らかになった。決勝トーナメントからは顕著で、敗退が決まった選手やパフォーマンスが良くなかったとされる選手、PKを失敗した選手に対する脅迫が目立ったようだ。

 これらの検証が示すように相手国のファンや第三者のファンに限らず、当該選手の自国のファンによる悪質な投稿も大会を通じて多かったことが分かっている。また、アカウントの凍結を免れるために直接的な表現ではない方法で投稿される場合も多かったようだ。FIFAはカタールW杯のデータをもとに、7月に開幕する女子W杯では対応を強化するとしている。

TOP