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小屋松同点PK!日本高校選抜はインカレ王者・早大と引き分け、無敗で欧州へ

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[3.22 練習試合 日本高校選抜1-1早稲田大 姉ヶ崎公園サッカー場]
 
 3月23日からの欧州遠征で第51回デュッセルドルフ国際ユースサッカー大会(ドイツ)に出場する日本高校選抜が22日、千葉県の姉ヶ崎公園サッカー場で全日本大学選手権優勝の早稲田大と練習試合を行い、FW小屋松知哉(京都橘高2年)の同点ゴールによって1-1で引き分けた。

 日本高校選抜が対外試合無敗で欧州へ乗り込む。25分ハーフで実施されるデュッセルドルフ国際ユース大会を想定して25分×3本で行われた練習試合は0-1で迎えた3本目終了間際、右中間でMF小原裕哉(鵬翔高2年)からパスを受けた小屋松が、ディフェンスラインの背後を狙ってループパスを送ると、ボールコントロールしようとした早大DFがハンド。自らキッカーに名乗り出る選手がいない中でプレッシャーのかかるキッカーを務めた小屋松が右足を振りぬくと、ボールはゴール左上へ突き刺さった。

 これで選考合宿での練習試合を含めてチームは対外試合無敗。主将のDF米原祐(作陽高3年)は「最後追いつけたところは大きいと思いますし、負けてそのまま海外行くより、引き分け以上というところで自分たちのモチベーションも高められたと思う。でももっと、次は引き分けじゃなくて勝利へ突き詰めていければと思います。一戦一戦、内容のところを含めて勝利していけるように一歩一歩やっていきたい」と語った。

 遠征前最後の実戦ではやや負傷を抱えているMF松井修平(桐光学園高3年)とDF河面旺成(作陽高3年)が大事をとって欠場。先発GKは置田竣也(星稜高3年)で右から室屋成(青森山田高3年)、米原、諸石健太(桐光学園高3年)、高橋壮也(立正大淞南高2年)の4バック。中盤は小原と磐瀬剛(市立船橋高2年)が中央に入り、右が平岡翼(作陽高2年)で左が仙頭啓矢(京都橘高3年)。前線には田村翔太(四日市中央工高3年→湘南)と小屋松が配置された。

 対する早大はAチームで試合に臨み、インカレ優勝メンバーの全日本大学選抜GK松澤香輝(2年=流通経済大柏高)やFW榎本大希(3年=横浜FMユース)、MF近藤洋史(2年=名古屋U18)らが先発に名を連ねた。高校選抜はプレッシャーが非常に速く、フィジカル面でも高校生とレベルの違うインカレ王者に苦しめられたが、攻めこまれても押し返す強さを発揮する。立ち上がりの6分に左アーリークロスからDFと入れ替わった小屋松が決定的な右足シュート。また右サイドで3人が絡んで相手を切り崩す連動性の高い攻撃も見られた。ただ、よりチャンスをつくっていたのは早大の方。高校選抜は14分に小原に代えてMF植田裕史(星稜高3年)を投入したが、MF近藤貴司(2年=三菱養和SCユース)のドリブルや榎本の飛び出しからサイドを突かれ、早大新主将のMF中田航平(3年=横浜FMユース)に決定的なヘディングシュートを放たれるなど自陣で戦う苦しい時間帯が続いた。

 1本25分間と短いため、ハイテンポの攻防戦となったが1本目は0-0で終わった。2本目、高校選抜はGKを小川司(大津高3年)へスイッチ。甲斐健太郎(立正大淞南高3年)、山田将之(青森山田高3年)、諸石、高橋の4バックで中盤は植田、磐瀬、小原。そして右の平岡と左の田村が鋭くゴールへ迫り、最前線ではFW野路貴之(桐光学園高3年)が奮闘する。3分には平岡が段違いのスピードで右サイドをえぐり、10分には植田の左クロスを田村が決定的なヘディングシュート。そして14分には植田が前方のスペースへボールを落とすと、GKを外した平岡が角度のほとんどない位置から右足シュートを放つ。ゴールライン手前でDFにクリアされたが、ビッグチャンスをつくり、大学王者を慌てさせる場面もあった。

 ただ、守備面ではオフサイドを取り損ねる場面が目立ち、早大の迫力ある飛び出しに再三抜け出されるなど決定機をつくられた。25分に小川が近藤洋との1対1をストップしたほか、磐瀬の厳しいチェックや甲斐の好カバーなど好守と相手のミスにも助けられて0-0で2本目を終えたが、ジワジワと押し込まれた3本目についに失点してしまう。GK小川(13分→置田)、右から米原、山田、甲斐、室屋の4バック、植田、小原のダブルボランチ、右MF平岡(14分→磐瀬)、左MF仙頭で野路と小屋松の2トップで臨んだ3本目は仙頭がカットインから惜しいシュートを放ち、小屋松が抜群のスピードを活かしてPAへ切れ込む場面もあった。

 だが、19分に早大のパス交換からMF竹谷昂祐(3年=G大阪ユース)の放った右足シュートがDFに当たってゴールへ吸い込まれる不運。それでも、ここから高校選抜が波状攻撃で早大ゴールへ押し寄せる。左SB室屋が非常に高い位置取りから何度もドリブルで仕掛けたほか、セットプレーなどからゴールへなだれ込もうとした。早大の堅い守りを崩すことはできなかったが、それでも幸運な形で得たラストプレーのPKで引き分けに持ち込んだ。

 合宿、試合を重ねるごとに選手間のイメージは共有できてきている。ただし、チームが進化すればするほど、新たな課題が出てくる難しさがある。それでも野村雅之監督(作陽高教)は「やろうとしていることは大分整理ができていると思うんですけど、まだそれがシンクロしてできていないところであったり、逆にイメージを共有して同期してシンクロさせようとしているところで初めて出てきた問題点が出てきたり。もっと(選手間で)共有させていく。イメージができていてもそれだけではダメ。シンクロさせたいと思っています」。28日からは「本番」の戦いが始まる。指揮官は「選手にずっと言っているんですけど、『いつでも、本番』『いつでも、練習』。本番って永遠にない。常に練習。だけど練習っていつまでたってもない。常に本番だから。そういう発想で行けば、成功しようが、失敗しようがトライすること自体に意味がある訳だから、この大会も常に本番なんだけど、大会へ向かうトレーニングマッチも全部本番なんだけど、練習だと。そういう発想でいくことが一番サッカーで成長し続けることになのかなと思う」。全国15万人の高校サッカー部員の中で18人だけが経験することのできる欧州遠征。サッカー選手として成長過程の選手たちが大きな経験、成功を得て帰ってくる。

(取材・文 吉田太郎)

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