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[プリンスリーグ関東1部]ショートパスの崩しとエースの決定力!市立船橋がF東京U-18に5-0快勝!

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[5.12 プリンスリーグ関東1部第6節 市立船橋高5-0F東京U-18 グラスポ]

 高円宮杯U-18サッカーリーグ2013プリンスリーグ関東1部は12日、第6節を行い、千葉県船橋市の法典公園(グラスポ)では11年度全国高校選手権優勝校の市立船橋高(千葉)とFC東京U-18(東京)の強豪同士が対戦し、市立船橋がエースFW石田雅俊(3年)のハットトリックの活躍など5-0で快勝した。

 全国制覇した一昨年度から昨年度は県内無冠。DF小出悠太主将(現明治大)をはじめ、日本一経験者を残しながら、昨年は高校総体予選、高校選手権予選ともに準決勝でPK戦の末に敗れて全国へ駒を進めることができなかった。名門にとって今年は雪辱を果たす1年となる。新主将の日本高校選抜DF磐瀬剛(3年)は「毎試合失点して点もあまり取れないのが続いていたけれど、きょうは点も取れて、後ろもゼロに抑えたので良かった。(だが)自分たちは勝負弱いと言われている。最後まで強さをもっと出せるようにしないといけない」と語り、CBで磐瀬とコンビを組む柴戸海(3年)も「去年は最後、攻撃の迫力がなくて点が取れなかった。今年はまだまだ勝負弱い。ロスタイムの失点があるし、意識していても最後にやられてしまっている。でも変えていければいいチームになる」と引き締める。選手たちも自覚しているように現在、課題となっているのは開幕から3試合連続で後半アディショナルタイムに失点するなど勝ち点を落とした勝負弱さ。攻守の精度の面においてもまだまだ向上の余地はあるが、この日の市立船橋は同じく5ゴールを叩き込んだ横浜FMユース戦に続き、強さを十分に見せつける快勝で成績を2勝2分2敗とした。

 F東京は184cmFW矢島輝一(3年)とCB大西拓真(2年)の2人が負傷のために欠場。攻守で軸となる選手が不在だったが、立ち上がりはスペースへの飛び出しなど縦への迫力のある攻撃でビッグチャンスをつくる。2分、左オープンスペースを突いたFW岸寛太(3年)が相手CBの前に強引に身体をねじ込んで一気にPAへ侵入。右足シュートは市立船橋のU-18日本代表候補GK志村滉(2年)の好守に阻まれたが、直後の右CKではU-18日本代表候補MF川上翔平(3年)の左足キックから同じくU-18日本代表候補の左SB鴨池陽希(3年)が頭で合わせるなど勢い良く試合を進める。

 ただ、磐瀬が「自分たちは小さいし、身体能力も高くないんで、蹴っても勝てない。今年は去年よりも前の選手が上手いのでこういうサッカーをしている」という市立船橋は局面をテンポの速いショートパスで切り崩すサッカーを展開。11分には左中間から細かいパスでボールを動かすと、FW横前裕大(3年)からのパスを受けたMF室伏航(3年)がすぐさま縦へ入れる。左サイドから顔を出した石田は狭いDF間を通されたパスを絶妙のタッチでコントロールすると、そのまま中央へ切れ込んで右足シュートをゴール左隅へ流し込んだ。

 この鮮やかな崩しから奪った先制点を皮切りに、市立船橋は今年目指すスタイルを体現するような内容、得点シーンを披露する。田代圭祐(3年)と石川怜央(2年)というCB候補2人が負傷で長期離脱中の市立船橋はともに本来中盤の磐瀬と柴戸をCBで起用。何度か背後を取られる場面もあったが、下級生時からレギュラーとして経験豊富な2人はF東京の攻撃に冷静に対処すると、攻撃の起点としても力を発揮する。

 最終ラインでボールを動かす市立船橋は中盤にボールが入ると、ダイレクトパスを交えてスピードアップ。またCB2人からの局面を変える縦パスが相手を後退させる。前半は引き気味でしっかりとブロックをつくっていたF東京はカウンターから鋭く仕掛けたFW長澤皓祐(2年)がシュートへ持ち込むなど、得点機をつくっていた。ただ、テンポ良くショートパスをつなぐ市立船橋の攻撃にバイタルエリアを攻略され、またミスも重なって突き放されてしまう。

 中央でのパス交換から石田とMF成田悠冴(3年)の両サイドハーフがPAへ飛び込んでくる市立船橋は32分、成田が敵陣左中間でDFのパスをインターセプト。右前方の室伏へラストパスを通すと、この日存在感を示していた司令塔が右足でゴールへ叩き込んだ。さらに市立船橋は43分、自陣左サイドから磐瀬、左SB山之内裕太(3年)、石田、横前とボールを動かすと最後は室伏のスルーパスで左サイドを抜けだした石田が左足シュートをゴールへ流し込んで3-0とした。

 F東京は後半開始から一挙に3選手を入れ替え、前からボールを奪いに行って強引に流れを引き戻そうとする。その攻勢の前に市立船橋は局面局面で後手を踏み、シュートまで持ち込まれていた。だが、市立船橋はまたもやショートパスによる崩しとエース・石田の決定力で追加点。13分、中盤左寄りの位置で前を向いた石田から中央の室伏、成田とつなぐとギャップへ飛び込んできた石田が絶妙なボールコントロールから右足を振りぬき、ハットトリックを達成した。

 F東京は18分、俊足FW蓮川雄大(2年)が抜群のスピードでDFを振りきって右足シュート。その後も岸や川上が積極的にシュートへ持ち込み、後半だけでシュート10本を放った。ただ、高精度の左足を持つ川上のミドルパスからアタッカー陣が迫力ある攻撃を見せていたが、最後まで1点を奪うことができず。逆に高い位置取りをする両SBの攻撃参加を交えて攻める市立船橋は、39分に左中間でボールを持った石田のループパスから交代出場のFW小田大樹(3年)が右足ループシュートを決めて5-0で快勝した。

 プレミアリーグ昇格を争うライバルに快勝にしても朝岡隆蔵監督はスピードアップしたい場面で「ファーストブレイク」していく選手がいなかったことを指摘。「少し(相手の守備を)壊していく選手が欲しい。じゃんけんでいうとグーとチョキだけで勝負している。きょうは良かったけれど、これだけではいけない」。この日は遅攻から局面での崩しが見事にハマった形となったが、崩しきれず、攻め切れない試合もある。それだけにカウンターでDFを切り裂くような迫力や「もう一歩」という選手層の厚さも必要だと指揮官は感じているようだ。

 磐瀬は「もっとできると思う。今のところはインターハイの県代表を目指していく。まずこの1か月間、良い準備してインターハイで全国に出ることを意識していく」。プリンスリーグ関東はこの後、6月末まで中断。名門・市船はまずは高校総体予選を勝ち抜き、全国復帰を果たす。

[写真]後半13分、市立船橋FW石田がハットトリック達成

(取材・文 吉田太郎)

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