beacon

[プリンスリーグ関東1部]市立船橋が圧倒するも横浜FMとの王者対決はドロー

このエントリーをはてなブックマークに追加

[9.8 高円宮杯プリンスリーグ関東1部 横浜FMユース1-1市立船橋高 みなとみらい21トレーニングセンター]

 注目の「王者対決」は市立船橋が優勢に進めたが、ドローに終わった。プリンスリーグ関東1部は8日に各地で第12節を行い、神奈川県横浜市のみなとみらい21トレーニングセンターでは横浜F・マリノスユース(神奈川)と市立船橋高(千葉)が対戦し、1-1で引き分けた。ホームの横浜FMは、今夏の日本クラブユース選手権王者。対する市立船橋は、全国高校総体の覇者。全国タイトルを勝ち取った2チームがプリンス関東の舞台で対峙した。

 試合の立ち上がりは、見どころのある主導権争いとなった。3分に横浜FMがFW深澤知也のドリブル突破で先に仕掛けたが、市立船橋は両サイドから容赦なくロングパスを送り込んでカウンターを仕掛けて押し戻した。トップ下に入った室伏航が「この前(前節、前橋育英高に1-3で敗戦)不甲斐ない試合をしてしまって今日は意気込んでいたので、勢いで行けた」と話したように、パワーの出し惜しみのない前線の動きで主導権を奪取。15分が過ぎるとショートパスをつなぐ攻撃に変化し、17分には室伏が右MF横前裕大との連係から惜しいドリブルシュートを放った。

 横浜FMは前線からのプレスで敵陣に押し込もうとしたが、市立船橋はU-18日本代表候補GK志村滉を含めたボール回しでプレッシャーを回避。24分、市立船橋は石田雅俊がドリブルで左から中央へ切り込んで後ろ向きのままで横前へパスを落とし、横前が左に展開すると左DF山之内裕太がシュートを狙ったが、クロスバーを越えた。試合は市立船橋のペースで進んだが、横浜FMの守備陣も奮闘。なかなかゴールを割らせなかった。

 しかし、前半終了間際の43分、市立船橋は再三ロングパスを送り込んでいた左DF山之内が1トップの小田大樹に縦パス。これは相手DFにつぶされたが、こぼれ球を拾った山之内がダイレクトで再び前線へパス。準備の遅れた横浜FM守備陣の隙を見逃さなかったのは、市立船橋のエース・石田だった。山之内からのパスを受けると、すかさずターン。「蹴って来ると思った。後ろを見たらターンが出来ると思ったので前を向いた。あとは、相手が一人だったので自分で仕掛けた」と振り返ったカットインから、最後は相手と競り合いながらも右足インサイドキックで冷静にシュートを決めた。

 後半は、両チームとも選手交代を行って臨んだ。1点リードの市立船橋はDF田代圭亮を投入し4-5-1から3-6-1に布陣を変更。横浜FMはU-18日本代表候補の左MF汰木康也に代えて2年生アタッカーの田崎遼太郎を投入。より積極的に出るのは横浜FMかと思われたが、市立船橋が先手を取った。マイボールでの試合再開とともに前線の3枚でコンビネーションアタック。ボールを後ろに戻すことなく、あっという間にシュートへ持ち込んで観衆をどよめかせた。さらに4分、石田のカットインから室伏が際どいシュートを飛ばし、直後には横前がミドルシュート。その後も怒涛の攻撃を見せた。

 横浜FMは主将の早坂翔が「こんなに悪い試合は、久しぶり。みんなが他人任せになっていた気がした。(王者対決で)負けられないという気持ちで臨んだけど、出鼻をくじかれた。相手はこっちが前からプレスに行くと蹴って来ることが多かったけど、引いて守ると中盤が上手くてパスワークで崩された。ボランチも背後に出て来るし、嫌な相手だった」と吐露したように、随分と苦しめられた。しかし、長田健斉藤海の2年生CBコンビが体を張ってシュートブロックするなど、懸命にゴールを死守。そして市立船橋の追加点を阻止し続けて終盤の43分、早坂が中盤で左から中央へボールを送ると、競り合いのこぼれ球を途中出場の瀬賀悟が冷静なコントロールシュートでゴール左へ流し込み、同点に追いついた。

 痛恨の失点について、市立船橋の主将を務めるDF磐瀬剛は「何本も決定機があって入らなかったのは仕方がないが、最後に押し込まれたときに最終ラインが下がってしまった。クリアをもう少し大きく蹴っていれば……とか、ラインをもっと押し上げておけば……という思いがある。昨年も同様の展開があったのに、そのときの反省を生かしきれなかった」と悔やんだ。その後はシュートの打ち合いのような時間帯となったが、結局ゴールが生まれることはなく、試合は1-1の引き分けに終わった。

 市立船橋は勝ち損ねた印象だが、朝岡隆蔵監督は「選手は今年の特徴として最後まで点を取りに行く姿勢を出していた。終盤は体力的に厳しくなっていたし、信用して切れる交代のカードもなかった。それなら1-0で終わらせるというシナリオをこっち(指導陣)が持っていても良かったのかなと思う。ただ、相手の力を認めて最初から3バックでやるプランもあったけれど、まだ伸びしろを作っていかなければいけないチームだから(そうはしなかったわけだし)結果的にはこの戦い方で良かったのだと思う。あとは10本シュートを打って何本入るかという数字を上げていかなければいけない。でも、うちの良さは十分に見られた」と試合内容に及第点を与えた。

 一方、横浜FMの松橋力蔵監督は、敗戦濃厚の展開から勝点を拾った選手の意地を称えながらも「シンプルにプレーできずにボールを奪われていることを選手は個々のせいにしているが、周りの関わりがないことが問題。相手はボールを受けるときにサポートがあるからシンプルにパスが回り、アイデアも生まれる。チームとしての成熟度は、残念ながら市立船橋さんの方が素晴らしかった。修正していかなければいけない」と相手を見本に例える口ぶりで苦戦を認め、出直しを誓った。

 プリンスリーグ関東1部は、残り6節。上位3チームは、高校年代最高峰のリーグ戦、高円宮杯プレミアリーグへの参入戦出場資格を得る。市立船橋が勝点19で4位、横浜FMユースは同18で5位につけている。今後の直接対決はないが、ともに3位以上が目標なだけに激しいレースが続きそうだ。

(取材・文 平野貴也)
▼関連リンク
2013 プリンスリーグ
2013 プリンスリーグ関東1部

TOP