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[選手権]親子鷹で全国制覇!!富山一・大塚主将「恩返しできたかなと思います」

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[1.13 全国高校選手権決勝 富山一3-2(延長)星稜 国立]

「恩返しできたかなと思います」。大熱戦の末に初優勝を決めた決勝終了後、富山一MF大塚翔主将(3年)は父・大塚一朗監督への思いをしみじみと口にした。富山一に入学した2年前はコーチと選手、そして2年時にその関係は指揮官と選手となり、この1年は指揮官と主将に変わった。指揮官の息子、そして主将ということで誰よりも厳しい目の中でプレーし、結果を求めてきた。その大塚に与えられた試練。1点ビハインドで迎えた後半アディショナルタイム、チームのすべてを背負ってPKを蹴った。48,295人の大観衆が見つめる中でのPK。異常なほどの重圧の中で迎えた場面だったはずだが、大塚は冷静に左隅へ決め、延長戦の末に親子で日本一を勝ち取った。

 PK直前、大塚は紫色に染まったスタンドを見て、3年間苦楽を共にしていた3年生のチームメートたちからの声を身体全体で感じ取っていた。「本当に自分が決めてやるんだという気持ちはとても大きかった。『翔、決めろ』という声は聞こえていたんで、その気持ちは強くなりましたね」。左へ跳んだGKの逆を突く一撃で同点ゴール。その時、時計はアディショナルタイム表示の3分を迎えようとしていた。「外せば負け」の状況の中で決めたゴールには父・大塚監督も大いに感動していた。

 大塚には辛い思いをした過去がある。2年前の富山県予選決勝。当時1年生だった大塚は交代出場したが、絶好のチャンスをポストに当ててしまい、チームは全国切符獲得を逃した。名門の敗戦。批判は1年生の大塚に集中した。「かなり掲示板で叩かれまして、本当に30ページに及ぶような。『親父のコネで試合に出ている』とか辛辣な言葉で書かれました」と大塚監督は説明する。

 ただ大塚は「絶対に見返してやるという気持ちでした」と振り返るように、それをバネに成長した。練習から誰にも負けないという姿勢で取り組み、技術もメンタル面も向上させてきた。そして今大会では主将、10番を背負う大黒柱としてチームを決勝へ導き、チームの絶体絶命の場面でも見事にPKを成功。「これ外してまた掲示板に書かれんじゃないかなと。報われてほしい」という大塚監督の不安も振り払うゴールで逞しく成長した姿を見せつけた。

 3-2と勝ち越した後、交代でベンチに戻った際には指揮官と熱い抱擁。その際、大塚監督は目に涙を受かべていたという。「ボクは『まだあるぞ』、と言ったんですけど。本当に泣き虫なんで」と笑った大塚。親子鷹で日本一という物語を最高の形で完結させたMFはこれから、父のアドバイスも受けつつ、大学サッカーという新たなステージで活躍を目指していく。「(富山一で)監督にもいっぱい教わったし、チームにも仲間の大切さを本当に教わった。(これから)ボクがプロになってもっともっと活躍した姿を見せられればと思います」。今大会のヒーローは父、家族、そして富山一への恩返しをこれからも続ける。

(取材・文 吉田太郎)

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