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[プレミアリーグWEST]「ダイヤモンドナイン」の頂点に「勝つ」、選手権覇者・富山一は勝って伝統積み上げる

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[9.28 高円宮杯プレミアリーグWEST第15節 京都U-18 5-0 富山一高 京都サンガF.C.東城陽G]

 北信越勢初優勝の快挙を成し遂げた1月の全国高校選手権から8か月。厳しいシーズンの中で成長を遂げてきた富山一高が、10月4日から14年度の選手権富山県予選に臨む。今夏の全国高校総体富山県予選では準決勝で高岡一高に1-2で敗れてまさかの予選敗退。高校年代最高峰のリーグ戦、プレミアリーグWESTでは昨年と同じく8位につけているが、Jユース勢を次々と沈めた昨年ほどのインパクトは残すことができていない。この日もCB村上寛和(3年)やCB能松大河(2年)、GK高橋昂佑(3年)を中心にしぶとい守りを見せる時間帯もあったが、わずかな隙を確実に突いてくる京都U-18の前に5失点。9月は残留争いのライバル・東山高を2-1で下し、全国高校総体王者の東福岡高とも引き分けるなど、成績は上向きだったが、選手権予選前の2試合をいずれも0-5で落とすこととなった。昨年度の全国大会優秀選手でもあるFW西村拓真主将(3年)は「やっぱり失点の仕方が悪い。声であったり連係、コミュニケーションがまだ取れていない。選手権も始まっちゃうし、短時間でやっていかないといけないかなと思います」と危機感を募らせていた。

 今年、富山一の3年生は21人。この日の先発はわずか4人だった。怪我人、怪我明けの選手がいることも確かだが、3年生の世代はカターレ富山U-18の一期生と同じ世代でチームに富山県内の有力選手が少ないという事情もあるようだ。それでも総体予選後は1、2年生が台頭。この日も攻撃力を示していたFW坂本裕樹(2年)や先発で富山一伝統のサイド攻撃を担ったMF久保佳哉とMF南田直樹の両1年生アタッカーらがチーム力を高めてきた。大塚一朗監督は「1、2年は厳しいところでやっていない選手が多いので、春先からいろいろな経験してきて、ちょっと調子に乗ったところをバシッと折られて、また上に上がっていければいい。3歩進んで2歩下がるって一歩進んでいければ」。ここから期待されるのは3年生の巻き返し。大塚監督は「3年生は自分たちの力がないという状況を分かっていると思う。自分たちの代の上手かった選手がカターレに行っている訳ですから。その辺の自覚はあると思うので。でも伝統を引き継いでしっかりとやりたいと思っていると思う」。選手権優勝GKの高橋とポジション争いを演じるGK野崎仁や体調不良から復帰したFW堀淳樹ら3年生の踏ん張りでもう一段階、チーム力を底上げして選手権予選に臨みたいところだ。

 3年生たちにも意地がある。富山一では毎年、春に行動指針とも言える「ダイヤモンドナイン」を選手たち自身で決定する。日本一になるために必要な9要素を決め、ダイヤモンド形に並べた「ダイヤモンドナイン」。昨年は最も重視する一番上の頂点に「感謝」という言葉を置き、一番下に「勝つ」を置いていた。だが大塚監督によると、「去年は一番上が『感謝』で一番下が『勝つ』。『感謝』が上にくるからいいんですよね。日本一になるために一番大事なのは『感謝』という。で、今年やったら『勝つ』が一番上に来て。でも彼らに聞いたら、やっぱり『日本一というのをベースにして、さらに自分たち富一の伝統を築いていきたいから、まず優勝、勝つことをベースにしていきたい』と。じゃあ、それで行こうと。そういう意味じゃ、彼らも弱いから自覚持って、1試合1試合勝っていって伝統を積み上げたいと思いがあると思う」

 西村は「弱い分、勝利しなければ去年のチームには近づけないというのがある。そういう意味で一番最初に勝利を持ってきた。その過程で感謝などをするようにしました」と説明する。昨年度の選手権覇者とは言え、まだまだ若い成長途上のチーム。指揮官も「チャレンジャー」であることを強調していたが、選手たちはがむしゃらに勝利を目指していくつもりだ。西村は「ここでどれだけ切り変えていけるか。あともっと分析してもっと強くならないといけない。県民の皆さんとかの期待に応えられるように。プレッシャーはあると思うんですけど、乗り越えていかなければダメですね」。今シーズン、結果の出ていない富山一だが、選手権では勝ちにこだわって、新たな伝統を積み上げる。

(取材・文 吉田太郎)

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