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[選手権予選]崩し、破壊もする“進化した”冬の駒澤大高へ、夏の王者が7発発進:東京A

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[10.4 全国高校選手権東京都Aブロック予選2回戦 駒澤大高 7-0 西高 駒沢第2]

 4日、第93回全国高校サッカー選手権東京都Aブロック予選2回戦が行われ、夏の全国高校総体予選優勝の駒澤大高は都立勢の西高に7-0で快勝。三鷹高と対戦する準々決勝(12日)へ進出した。

 夏の王者・駒澤大高の初戦の対戦相手は、1回戦で昨年度4強の東海大高輪台高を撃破して勝ち上がってきた好チーム・西。だが、試合開始からスタンドの控え部員たちがド迫力の声援を送る駒大高が序盤に幸先良く先制点を奪う。4分、ペナルティアークやや外側の位置でFKを獲得すると、キッカーはMF鈴木隆作(3年)。背番号6がゆっくりと右足を振り抜くと、大野祥司監督が「昨日あれだけヤツと練習したんですよ。助走がこうで、角度がこうでやってやれと。昨日とまったく同じパターンで入って我々もビックリしているんです」と説明した一撃がゴールネットへ吸い込まれる。優勝候補にとって難しい戦いとなる可能性もあった初戦。それも強敵を破って勢いに乗っている西を落胆させる一発で駒大高がリードした。

 駒大高はさらに12分、CB須藤皓生主将(3年)がロングボールを豪快なヘッドで跳ね返すと、これを拾った鈴木がすかさず前線のスペースへ送る。縦パスを絶妙なコントロールで収めたエースFW安藤丈(3年)が左足でゴールへ流し込んで2-0とした。この後も主導権を握った駒大高は2点リードにやや安心したか攻撃で手数を掛けすぎる場面も見られたが、鈴木が「(初戦敗退した全国総体後から)攻撃練習を多くして、きょうとか足元でつないでダイレクトプレーだったり、練習でやってきた面が出てきたのでよかったと思います」という多彩な崩しで西を攻め立てる。ただ、西はCB池田龍(3年)が駒大高の安藤と激しいエアバトルを繰り広げ、CB柴田普天(3年)らがゴール前で身体を張った守りを見せるなど追加点を許さない。

 逆に西は高いキープ力や1タッチでのラストパスなど前線で存在感を放つFW中野正樹(3年)中心に反撃。敵陣でFKを獲得すると、MF服部智也(3年)の右足FKに池田が飛び込み、服部のFKのクリアボールをMF西田将(3年)が右足で狙うなど反撃した。一方の駒大高は前半アディショナルタイムにショートパスをつないで左サイドまで運ぶと、MF山口将広(3年)がDF2人の間を割って入り、PKを獲得。ただ山口が放った左足シュートはゴール右へ外れてしまう。

 “射程圏内”の2点ビハインドを保ったことで勇気を得たか、後半立ち上がりは西のペース。4分には右サイドで中野、FW湯浅大周(3年)とつなぎ、最後はMF小深川恵太(2年)が右足でフィニッシュ。10分にはスピードのあるパスワークから湯浅が右足シュートへ持ち込んだ。普段に比べて出足が緩く、セカンドボールを拾われた駒大高はピッチ内で「一歩一歩相手より遅い!」と厳しい声が飛ぶ。だが、12分、駒大高は右サイドからドリブルで持ち込んだMF幸野高士(3年)が豪快な左足シュートを叩き込んで3-0とした。これまでトップ下でハードワークを続けていたMF柳澤歩(3年)をボランチへ下げ、代わってトップ下に起用された幸野は全国高校総体は登録外ながらもこの試合で10番を背負った技巧派MF。大野監督が「頑張る子と上手い子がうまくミックスできなかったら、“進化した冬の駒澤”は出せないと思っていたので。もうちょっとやって欲しいんですけどね。技巧派とうまくミックスできれば崩せるし、破壊もできるし、と思って」と語る「進化系の駒大高」を表現するキーマンのゴールで点差は3点となった。

 この後も幸野がGKとの1対1を阻まれてしまうなど、乗り切れていなかった駒大高だが20分、鈴木が右中間からこの日2本目となる右足FKでのゴール。これで西の勢いを止めると、30分には鈴木がPAへ入れたパスから最後は安藤がゴール右隅へ左足シュートを沈めた。駒大高は32分にも鈴木が左サイド後方から入れたFKをタイミング良く飛び出した柳澤が頭で押し込んで6-0。終盤、交代出場のFW佐藤瑛磨やMF野本克啓(ともに2年)がチャンスをつくり出す駒大高は38分にも野本の右クロスをファーサイドの安藤が左足ダイレクトでゴール右隅へスーパーゴールを叩き込む。これでハットトリックを達成した安藤も「ダイレクトでボレーというのは決めていましたし、バウンド的にも左足からしたら凄く良い感じで来たのでファーに行けば入るかなと思ったんですけど、あんなに速くて良いシュートが行くとは思っていなかったです」と頷く会心の7点目。駒大高が全国大会へ向けた大事な初戦を7-0で大勝した。

 駒大高は前日、ハーフコートでサブ組の選手たちと10分ハーフの試合を行い、0-1で敗戦。1週間前に行われた文化祭の「フワフワした感じ」(大野監督)が残ったままだったという。加えて大野監督はハーフタイムには必死のプレーで食い下がる西を讃えて「向こうも必死にフェアプレーでやっていたので『献身的なところを見習いなさい』と話をした」というが、求めるレベルまでには至らなかった。安藤は「(2-0で前半を終え)自分的には悪くないなと思っていたんですけど、その後はやっぱりうまくいかなくて、その時にはみんな慌てていたので、まだ自分たちは甘いかなって思いました」と反省。この日の反省を活かして、チームを引き締めて難敵・三鷹との準々決勝に臨む。東京で、全国で「進化した」駒大高の姿を披露できるか。鈴木は「今まで関東大会、インハイ出てきましたけれど、高校サッカーといえばやっぱり選手権だと思う。選手権出れないと意味ないと思う。きょう勝って良かったと思いますけれど、また次の準々決勝を勝ち切れるように一週間全力でやっていきたい」と誓った。

[写真]前半12分、駒澤大高は安藤が左足で決めて2-0

(取材・文 吉田太郎)

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