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プレミア参戦のF東京U-18が示した自力と逞しさ、横河武蔵野FCユースに2点先取されるも逆転勝ち!

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[2.1 東京都クラブユースU-17選手権 F東京U-18 3-2 横河武蔵野FCユース 武蔵野苑多目的]

 平成26年度第16回東京都クラブユースサッカーU-17選手権大会は1日、決勝リーグ最終節を行い、Bグループでは首位・FC東京U-18と2位・横河武蔵野FCユースが激突。前半に横河が2点を先取した試合は後半にF東京が3点を奪い返して3-2で逆転勝ちした。3連勝でグループ1位を決めたF東京は2月8日の決勝でグループA1位の東京ヴェルディユースと戦う。

 アグレッシブなチャレンジャーにバタつかされた。不用意なミスなどで2点を奪われたのに加え、ピッチ内で選手たちがイライラしてしまうようなシーンも見えた。それでも今年、高校年代最高峰のリーグ戦であるプレミアリーグに復帰するF東京は、自分たちで立て直して大逆転。追い込まれた状況の中、自分たちで激しく意見を言い合いながらも、切り替えてチームのために戦う姿勢も見せて白星に結びつけた。佐藤一樹監督は「スパンと切り替えられるのは積み上がっているものがあるから。あそこでズルズルと崩れなかったので、自分たちの中でもコントロールできるのがあるのかなと思います」。昨年の3-4-3から今年は4-3-3の新システムを導入し、左MF小山拓哉(2年)をフロントボランチで起用するなどいろいろな試みも見られた。「刺激は怖がらないでやっていかないと。やれる選手が多いのでどのように融合させてチームの出力を出していくか」という指揮官の下、激しいポジション争いなど本格的なシーズン開幕へ準備を進めているF東京が、厳しい展開となったこの日、チームとして大きな収穫を得た。

 試合は横河の10番MF見木友哉(2年)が「前半2-0でいい内容でできていたので、後半逆転されたのは凄く悔しいです。絶対勝ち切るという気持ちで前から行った。でも後半続けられなかった」と悔やんだ90分間。昨年11月のJユースカップ2回戦でF東京と対戦(0-2)している横河は増本浩平監督が「Jユースやクラブユース選手権の時だと(やや後ろに重きを置いた)負けられない戦いになる。でも、この時期はチャレンジしないと。どこまで行けるかを見たかった」と積極的に前へ出る戦いを選択した。Jユース勢からの勝利への意欲も非常に強かった横河イレブン。立ち上がりこそ球際緩く、ベンチから厳しい指摘が飛んでいたが、すぐに高まったファイトする姿勢と、時に1タッチのパス交換で相手をかわす巧みな攻撃など印象的な戦いを見せる。

 ファーストDFが出足良く相手のパスコースを限定し、高い位置でボールを奪うことに成功した横河は8分、見木のパスから鋭くターンしたMF太田翔主将(2年)がシュートへ持ち込み、11分にも太田の仕掛けから最後は見木が左足を振りぬく。そしてアタックを繰り返していた時間帯の16分にスコアを動かした。PA付近でボールを持った相手CBに太田が「スピードが持ち味なのでDFのところは狙っていた。一番初めだと食えるかなと思った」と50m走5秒8の快足を活かして強烈プレス。インターセプトすると、自らのシュートのこぼれ球を左足で押し込んで先制点を奪った。この日、FW大熊健太(2年)が修学旅行のために不在のF東京はPAでの制空権を握っていたCB渡辺拓也主将(2年)やCB岡崎慎(1年)のヘディングシュートなどで反撃。また両SBが高い位置でボールに絡むなどパスワークと仕掛けから厚みのある攻撃を見せるが、横河はCB槙廉とCB宇野木晨兵(ともに2年)が前線へ入ってくるボールを確実に弾くなど、PAを攻略させない。また前線から相手のパスワークを厳しくチェックし続ける横河は、攻撃面でもMF梅原陸(2年)やMF渡辺基希(1年)が1タッチでボールを動かして相手PAまでボールを運ぶ。そして33分、太田から梅原に斜めのパスが入ると、3人目の動きで抜け出した見木がPAでDFのタックルをかわして左足シュート。これがゴール右隅を破って2-0と突き放した。

 F東京にとっては力で圧倒された訳ではなかったが、それでも2点のビハインド。この後は判定にも敏感になってしまうなどリズムを崩していた。ただクールな印象の選手たちが、厳しい口調で言い合いながら勝利という目的に向かって団結。MF伊藤純也、MF生地慶充、MF鈴木喜丈と3人の1年生を投入した後半、相手を完全に押し込んで逆転して見せる。5分、右SB相原克哉(2年)の右クロスをFW西元類(2年)が頭でねじ込んで1点差とすると、14分にはPAのこぼれ球をFW佐藤亮(2年)が決定的な右足シュート。横河も15分にスピーディーな攻撃から梅原が決定的な一撃を放つなど、再び奪い返す力があることを示す。だが、中盤でMF安部柊斗(2年)が再三ボールを奪い返すなど球際激しい好守から攻撃に繋げるF東京は、足の止まり始めた相手を押し込んで攻め続けると38分、生地の左クロスを西元が豪快な左足シュートで叩き込んで同点に追いついた。

 完全に流れを傾けて攻めるF東京はさらに42分、小山が獲得した左FKを伊藤がけり込むと、「得点を取りに行かないといけないという想いで入って行ったんで、それが結果に結びついて良かった。いいボールが入ってきたのでチームに感謝ですね」という佐藤が頭で合わせて決勝点。横河もアディショナルタイム突入後に見木、田代雄大(2年)と繋いで最後は梅原が決定的な右足シュートを放ったが、わずかにゴール左へ外れて試合終了を迎えた。横河の増本監督は「思ったよりは前に行けたと思います。でも後半意図的にボールを奪えなかったですね。(また)こういうチームをどういなすか。もっと意図的にボールを動かして、守備もできれば」と無念の表情を見せたが、「年間通してこういうゲームができればいい」と前向きだった。

 F東京の佐藤は「これからプレミアリーグとかレベルの高い試合をやっていくに当たって、この2点ビハインドから逆転できたことは今後自信を持っていいんじゃないかと思います」。また自らのミスを「空回りしてしまった」と反省した渡辺主将は「きょうは特にみんな勝ちたいという気持ちが強かった。(安部)柊斗とかボクに言って来たり、それを励ます人がいたり。みんながみんな結構周りが見えている。普段から言い合って改善できていることが結構ある。(また)早い時期にこういう拮抗した試合ができたのはいい経験ができたと思います」とホッとした表情を見せた。

 F東京にはトレーニングから激しい競争を繰り返し、全国大会で勝負強さを見せた昨年のベースがある。佐藤監督は「やろうとしていることを理解している連中が多い。球際、球際ともううるさく言わないですし、当たり前のことになっている。ハードワークもそう、全員攻守もそう。余裕はないですけど、やっている中で少し追い込まれてもそんなにブレない。選手たちの中でもそういうプライドが意外とあるみたいです」と微笑む。そしてシーズン開幕へ向けて「自分たちのやりたいことをやり通して局面で勝つということは当たり前なんですけど、相手がこういうやり方をしてきているのであれば、そこで隙をどう取れるかだったり、嫌な攻め方、守り方ができるのかを考えながら、なおかつ勝つということができるか」。自分たちのサッカーを押し通したのが昨年だったが、それを維持しながら、相手の戦い方に個々が柔軟に対応してよりチームとしての良さを発揮することを狙う。

 F東京は昨年、日本クラブユース選手権が準優勝で、Jユースカップは3位。勝負強さを発揮して上位へ進出したが、あと一歩で頂点に手が届かなかった。渡辺は「去年全国制覇できなかったのでまず制覇してプレミアも優勝。チャンピオンシップで勝てるように頑張っていく」。その目標を達成するために、ベースとなっている昨年以上の日々を送り、よりレベルの高いチームになる。

(取材・文 吉田太郎)

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