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好守から自慢の攻撃力発揮!四日市中央工が選手権優勝の星稜に4発勝利!

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[2.7 ジャパンユーススーパーリーグ 四日市中央工高 4-2 星稜高 時之栖Hグラウンド]

 7日、ジャパンユースプーマスーパーリーグAグループで14年度全国高校サッカー選手権優勝の星稜高(石川)と13年度同4強の四日市中央工高(三重)が激突。四中工が4-2で名門校対決を制した。

「出来過ぎですよ」。四中工の樋口士郎監督は会心の内容のサッカーに頬を緩めた。選手権予選敗退後の昨年11月に新チームへ切り替え、12月のプリンスリーグ東海参入戦を1、2年生チームで突破し、三重県新人戦を5試合25得点無失点で優勝。まだ選手権優勝から新チームがスタートして1か月弱で、木原力斗監督代行が「自分たちのチームだけでなく、他のチームからも学ぶところはたくさんある。(四中工は)ハードワークもそうですし、学ぶところが多いです」と語った星稜が試合の中で選手同士が厳しく指摘し合いながら徐々に良さを増やしていた一方、四中工は立ち上がりから攻守ががっちりとかみ合い、現時点での強さを遺憾なく発揮していた。

 四中工で特に光ったのは攻守の切り替えの速さと際の部分での厳しさ。「練習試合でも全部の試合で勝負にこだわりたい。守備でいいプレーした後は攻撃でも走れるんで連続した守備を最近意識しています」と説明したように、ボールを失っても諦めずにスライディングしてボールを奪い返そうとしていたFW伊藤圭都(2年)らが前線からのプレスで星稜の攻撃を限定し、特に前半は舘幸希山本駿(ともに2年)の両CBが相手の攻撃を一発で潰すようなシーンが続いた。そして豊富な運動量で局面に顔を出していたMF寺尾憲祐(1年)やMF森島司主将(2年)がセカンドボールを回収し、背後へのボールも右SB三輪輝(2年)らがしっかり対応。この好守によって持ち味の攻撃をより引き出した四中工は、ともに日本高校選抜候補の2本柱、森島司とFW小林颯(2年)がボールを巧みに収めて攻撃を組み立て、右MF木下史也や左SB首藤凛兵(ともに2年)らが広い視野から正確なサイドチェンジを連発、個人技も随所で発揮してビッグチャンスをつくり出した。

 5分に小林が抜群のボールキープとアイディアあるパス出しでゴール裏のJクラブスカウト陣を唸らせると7分、四中工は左クロスをファーサイドの木下が決定的なシュート。GKとクロスバーを弾いた跳ね返りを伊藤が左足で押し込もうとするが、これも右ポストを叩いた。だが直後の9分、右サイドを抜け出した木下のアーリークロスに絶妙なタイミングで飛び出した伊藤がコントロールから右足シュートを流し込んで先制に成功する。この日、日本高校選抜候補のGK坂口璃久(2年)が不在の星稜も個人技でDFを剥がすMF大橋滉平(2年)やU-17日本代表MF阿部雅志(2年)の突破、そしてテンポの速いパスワークも交えて反撃。それでも、相手を押し込んでチャンスを連発する四中工は23分にも最終ラインでのパス交換から舘が鋭い縦パス。DFと入れ替わるように抜け出した左MF上田航大(2年)がGKとの1対1から右足シュートを沈めて2-0と突き放した。

 この後も森島司のタイミングのいい飛び出しや相手のプレスを剥がして前へボールを進める舘らが攻撃に厚みを加える四中工は、上田が立て続けに決定機を迎えるなど3点目のチャンスをつくり出す。対する星稜も28分、敵陣でインターセプトした大橋がFW大倉尚勲(2年)とのパス交換とゴール前での鮮やかな切り返しでビッグチャンス。直後の左CKを阿部が入れると、こぼれ球をCB東方智紀(2年)が押し込んで1点差とした。圧倒的に攻められながらも、少ないチャンスで確実に仕留める星稜。あっという間に勝敗の行方を分からなくしたところに、3年連続で選手権4強以上へ進出するなど結果を残しているチームの勝負強さが感じさせた。

 それでも四中工は後半立ち上がりに連続ゴールを奪う。3分にGKと1対1となった伊藤のループシュートで3点目を奪うと、5分には豪快な突破で左サイドを破った首藤の折り返しを小林が左足ダイレクトでゴールへ沈める。その後も小林の右足ミドルや上田のドリブルシュートなどで相手ゴールを襲う四中工に対し、星稜も大橋のスルーパスからFW新保大規(2年)がGKと1対1となるなど決定機をつくり、28分には流れるような攻撃から最後は阿部の絶妙なスルーパスで左中間を抜け出した大橋が右足シュートを決めた。一時3点差をつけられた星稜は後半、チーム全体が危機感を高めてプレー。チーム内でよく声が出て、より高いレベルのプレーを求めあいながら試合を進めると、終盤は主導権を握る時間帯もつくった。38分には飛び込んでくるDFをいなす阿部のドリブル、スルーパスからMF片山浩(1年)が決定的なシュート。だがGK森島佑太(2年)が阻止した四中工は追撃を許さず、白星を収めた。

 四中工は現在、グラウンドが人工芝への改修工事中。近隣のグラウンドを借りてトレーニングを行っているが、そこで連日40~50分間行っているゴール付きの5対5が切り替えの部分で大きな効果を発揮しているという。「感覚的には野洲とやった時のあのレベルの切り替え、囲い込みができるという実感がある」と現在のチームを、高い評価を受けた05年度時のチームと比較する樋口監督は「この子らに言っているのは『自分たちの良さを出すために攻撃的に守備しよう』。今年、絶対的にストロングポイントは攻撃やと思うんです。でも、全国のトップレベルとやるときにマイボールにできなければ出せない。そこのところをしっかりと受け入れてやってくれていると思いますね。去年、守備できなくて負けたというのがあるので、余計守備に対する厳しさというのを持ってくれているかなと思います」。選手権は一昨年度に全国4強も昨年は県予選決勝で敗退。守備の甘さが全国から遠ざけただけに守備に関しては選手たちも徹底していく意識がある。

 森島司は「チームのテーマは守備。自分の対峙している相手に絶対に負けないとか、意識していることができれば強いチーム相手にもああいういいサッカーができるのかなと思います。去年は攻撃は上手かったですけど守備は失点が多かったり。今年は守備のベースをしっかりして、自分たちの特長である攻撃を出せればこういう試合ができる。この守備をベースとして続けられれば、絶対に全国もいいところ、優勝まで行けると思います」と口にした。小林が「下のカテゴリーの子も必死にやるというか、言われたことをくじけずに必死にやるというのがある。ひたむきにやってくれるところがいいところだと思う」と分析する今年の四中工。「継続性がウチの課題。継続していけるように」という樋口監督の下、名門は意識の高まっている守備と抜群の攻撃力をより発揮できるように日々磨いていく。

(取材・文 吉田太郎)

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