beacon

[関東大会予選]埼玉5冠を狙う西武台、試合終了間際の劇的V弾で埼玉栄撃破

このエントリーをはてなブックマークに追加

[4.18 関東高校大会埼玉県予選準々決勝 西武台高 2-1 埼玉栄高 西武台高第2G]

 平成27年度 高校サッカー関東大会埼玉県予選は18日、準々決勝を行い、新人戦優勝校の西武台高埼玉栄高との一戦は、後半アディショナルタイムにCB小川匠主将(3年)が決めた決勝ゴールによって2-1で西武台が勝利。西武台は19日の準決勝で成徳深谷高と対戦する。

 土壇場で勝負強さを発揮した西武台が埼玉栄との再戦を制した。1-1で突入した後半アディショナルタイム、西武台は右SB林一輝(3年)の右FKのクリアボールを左サイドで拾ったMF山口大輝(3年)が左足でアーリークロス。最終ラインの背後を狙ったボールを小川がタイミングの飛び出しから頭で合わせると、ボールはゴールネットへと吸い込まれた。大興奮の小川は雄叫びを上げながら歓喜のダッシュ。逆サイドにある味方ベンチまで走り切ると、控え選手たちの黄色い輪の中へ飛び込んだ。

 西武台は昨年、夏の総体予選を制して全国総体16強。今年は川田航平橋本陸新行内一輝(全て3年)という3トップのテクニックと攻撃力に特に注目が集まるが、勝負強さも持ち合わせているチームだ。小川は「(意識していることは)守備と走り切るところ、そしてやっぱり練習の中からしっかり戦うことですね。上手さだけじゃ勝てない。(守屋)監督も言っているんですけど、上手いだけじゃ勝てないし、どんな相手でもしっかりと勝ち切れるチームが強くなっていくと思う」。その西武台が1点勝負の熱戦を制した。

 試合は序盤、新人戦の西武台戦を1-6で落としている埼玉栄の気迫が上回る。西武台は橋本が「新人戦の時に栄とやって、その時よりも相手がどんどんプレスをかけてきて、それに慌ててしまって、相手の流れになって自分たちのプレーができなかった」と振り返ったように、本来のスピーディーなボール回しをすることができない。ハードワークと球際での非常に激しいプレーで流れを引き寄せた埼玉栄は前半4分、左サイド後方からのFKのこぼれ球をU-17日本代表FW高橋利樹(3年)が右足ボレー。これは西武台DFのスーパークリアに阻まれたものの、高橋、杉浦拓磨(3年)、貫井拓弥(2年)の3トップが思い切った仕掛けと積極的な守備を見せる埼玉栄はロングボールのこぼれを拾いながら相手を押し込んでいく。

 対する西武台は小川とCB田中雅己(3年)中心に相手の攻撃を跳ね返すと、ダイレクトのパス交換からサイドへ運び、アーリークロスなどで反撃。20分にはMF今井祐太朗(2年)の放った右足ミドルが素晴らしい弾道を描いてクロスバーを叩く。さらに24分には林の右FKから中央でフリーとなった山口が決定的なヘディングシュートを放つ。だが、埼玉栄GK小山隼主将(3年)がわずかに触ったボールはクロスバーを叩いてゴール外側へ。この後、今井の突破などからチャンスをつくる西武台に対し、埼玉栄もワンツーや高橋のドリブル突破から先制点を狙った。

 スコアが動いたのは後半7分だ。西武台はカウンターから右タッチライン際でボールを受けた山口がDF1人を巧みに抜き去ってアーリークロス。これに反応した橋本がコントロールから左足で先制ゴールを押し込んだ。その後も西武台は個人技光る川田を起点にチャンスをつくると、18分にはカウンターから新行内、川田と繋いで最後はフリーの橋本が決定的な左足シュート。だが、このピンチを小山とDFの好守によって切り抜けた埼玉栄に同点のチャンスが訪れる。

 23分、敵陣ゴールライン際で粘ってボールを繋いだ埼玉栄は左SB飯田勇吹(3年)が左足でクロス。これがゴール前にこぼれたところをMF山口泰生(3年)が押し込んで同点に追いついた。一気に逆転を狙う埼玉栄に対し、西武台は1対1に強い松井晴生(3年)をCBへ投入して小川をボランチに上げる配置変更。その交代策が当たり、最後はその小川が決勝点を決めて4強進出を果たした。追う展開の中で良く同点に持ち込んだ埼玉栄だったが、稲垣忠司監督は迫力で相手を上回っていた序盤のチャンスを活かせなかったことを指摘。「ああいうところで決めきれないのが現状の力」と語り、次の戦いへ切り替えていた。

 一方、西武台の守屋保監督は「昨年の子たちは(サッカーに取り組む姿勢が)気持ちよく、ボクが彼らに『練習をさせてもらった』というチーム。今年は彼らほどの明るさはないけれど、それを持っている。(きょうは)良くヘディング負けていたりしていたけれど、最後までボールに食らいついていた。しっかりと評価して上げたい」と評し、先制点を決めた橋本は「声出して明るくやっていけば練習の質も上がってくる。行動の速さとか意識してやっている」。

 決して技術力が高い訳ではないながらも、相手を上回るハードワークなど個々、チームの頑張りで結果を残した昨年の西武台。そのチームに続いて良い雰囲気の中で練習できているという西武台は小川の「新人戦取った後にも言ったんですけど、出た大会全部、5冠ということを目標にしている。この関東で負けたら途切れてしまう。あした、その次も勝って優勝したい」という目標を全員で叶えてまずは2冠を達成する。

(取材・文 吉田太郎) 

TOP