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強烈な個性”求めるNIKE FC「HYPERVENOM TRAINING」、新たに9名が8月のキャンプへ進出

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 ナイキジャパンが手がける育成年代の特別強化プログラム「NIKE FC」は、7月20日、今年2回目のセッションをレッズランド(埼玉県さいたま市)で開催し、中学2年生から大学1年生まで、42名のプレーヤーが参加した。今年のメインテーマは「決定力」。“試合を決める強烈な個性”を求めるトレーニングは「HYPERVENOM TRAINING」と名付けられている。

 セッションは「4対1」のパス回し、通称“ロンド”からスタート。このトレーニングから一貫して指導されたのは、プレーの一つひとつ、その細部に意識を働かせることだった。

 どのポジションで、どのタイミングでパスを受けるのか。どちらの足でトラップし、どこにファーストタッチをコントロールすれば次のプレーに移りやすいのか。「相手より遠い足でトラップすること」は基本中の基本だが、コーチ陣からはそれをより正確に、より速く実行するための指示が飛び交う。ウォーミングアップを兼ねた“ロンド”は、次第に熱を帯びていった。

 続いて行われた2パターンのシュート練習と「4対4+4(フリーマン)」のパス回しでも、コーチ陣は同じことを強調した。シチュエーションを予想して素早くリアクションし、常に2つのパスコースを作りながら、より精度の高いコントロールとスムーズな動きを意識しなければならない。一つのプレーが終わったら次、目の前で起きていることの状況が変わったらまた次へ。大切なのは「頭の中を切り替えるスピード」だ。

 トレーニングは悪天候により一時中断したが、この日から特別コーチを務めるイバン ヘッドコーチとの即席トークセッションが設けられることになった。イバンは現在、プロの指導者として世界を渡り歩き、あらゆるカテゴリーのプレーヤーと接しているスペイン人コーチで、育成年代ではアンドレス・イニエスタとの対戦経験もあり、プロ選手としていくつものクラブで活躍してきた。

「同じように体格の小さいスペイン人と日本人の違いは?」との問いに対し、彼はこう答えた。

「違いについて、今回初めて日本に来た僕は、まだ明確な答えを持っていない。ただ、スペインでも“求められる選手”が変わってきていることは間違いないと思う。一昔前までは、スペインでも体が大きい、強い、速いという選手が重宝されたよね。でも、今はイニエスタのような選手が求められている。僕は幸運にもイニエスタとマッチアップする機会に恵まれたが、考えるスピードと予測があれだけ速い選手は見たことがない。今はスペインでも、ああいう選手が求められていると思う」

 思わぬアクシデントによって設けられたトークセッションだったが、“世界のサッカー”を知るコーチとの対話はプレーヤーにとって貴重な経験となった。天候は30分後に回復し、トレーニングは無事に再開。選手たちはグラウンドに戻り、再びボールを蹴り始めた。

 続いて行われたパス回しのトレーニングでは、特に「ファーストタッチ」と「1プレー後のアクション」に対する意識の高さが要求された。5メートル四方の角を利用して動きながらパスを回すトレーニングで、コーチ陣から声が飛ぶ。

「止める、蹴るをしっかり意識して! ミスは大きなピンチにつながるし、正確なプレーはチャンスにつながる。このスペースで発揮されるクオリティこそが大事なんだ!」

 センターラインからテンポ良くパスをつないでサイドに展開し、クロスからフィニッシュを狙うトレーニングでも、同じような意識とクオリティが求められた。この日の仕上げは、ハーフコートでの5対4とバイタルエリアでの6対6。より良い状況でシュートに持ち込むために必要とされたのは、この日のトレーニングで何度も意識付けされた「考えるスピード」と「精度」だった。ゴールを奪うためには、より良い状況を自ら作り出し、複数のオプションを持って相手との駆け引きを制する必要がある。そして、最後の局面ではファーストタッチや体の向き、コントロールなどの“ディテール”が重要となる。

 すべてのトレーニングを終えて、8月の「HYPERVENOM CAMP」に進出する9名として鈴木暢(VFC)、永田達也(つばさ総合高)、糟谷瞭(つばさ総合高)、内藤大智(中央大学杉並高)、宮崎達也(東大和高)、元秋葉暁(所沢高)、永山健斗(大成高)、森泰志(大成高)、今野卓杜(大成高)の名が発表された。彼らはさらなるプラスアルファを得るため、2日間の合宿(8月)に臨む。

 合格者の一人、内藤に話を聞いた。彼はイバンコーチとのトークセッションで「指導者になりたい」と話した高校1年生だ。

「NIKE FCには初めて参加しました。ものすごく勉強になりましたし、刺激になりました。基本的なプレーでもしっかりとした意識を持ってやらないと、あるトレーニングではうまくできても、違うトレーニングではうまくできない。『基本あっての応用』ということがすごくよく分かりましたし、トレーニングの狙いを考えて、理解して臨むことの大切さを感じました」

「僕は小学生の頃から、将来はサッカーの指導者になりたいと思っていたんです。小、中、高と本当にいい指導者に恵まれてきたので、いつか僕もそうなりたい。だから、本を読んで勉強したり、こういう場所で普段接することのできないコーチの皆さんに指導してもらうことがすごく貴重です。今回はキャンプに参加するメンバーに選んでもらえたので、すごく楽しみですし、もっと勉強したいと思います」

 最後に、イバンにも言葉を求めた。ゴールを奪うために必要な“ディテール”とは、具体的に何を指すのか。

「いくつも挙げることができる。例えば、足下のスキル、パスを受ける時の体の向き、使う足とその角度、パスを引き出すポジショニングや呼び込む声。ただ、やはり最後の局面で求められる最も大切な能力は、1対1の局面を打開する力、その判断力と精度。いかに多くの選択肢を持ち、それを相手との駆け引きにうまく利用できるか。そうした“ディテール”が、ゴールできるかどうかを左右すると思う。だからこそ、日頃のトレーニングから強く意識することが大切なんだ」

「それからもう一つ、大切なのは希望を持って今の自分を客観視すること。つまり“考える力”を持っていれば、今の自分の特長がどこにあって、何が足りないのかが分かるはず。逆に、今の時点で評価されている選手は、考えることを止めてしまう傾向にもある。だから、サッカー選手としての自分を成長させるためには、常に考えなければならない。僕はそう思う」

「NIKE FC」による特別プログラムは続く。7月29日にはJ-GREEN堺(大阪府堺市)で行われ、それぞれのプログラムで選出されたプレーヤーたちは、さらなるレベルアップのための特別プログラムである「HYPERVENOM CAMP」で“強烈な個性”を磨く。

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