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[adidas Cup in TOKYO]夏から「一回り二回り強くなった」新潟明訓が帝京三に攻め勝つ

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[9.26 adidas Cup in TOKYO 新潟明訓高3-2帝京三高 RKUフットボールフィールド]

 冬の躍進を目指す全国の強豪11校が参加した「2015 adidas Cup in TOKYO」が9月25日から27日まで開催された。ともに今夏の全国高校総体に出場している新潟明訓高(新潟)対帝京三高(山梨)戦は3-2で新潟明訓が競り勝った。

 注目レフティー・MF加藤潤主将(3年)が「インターハイが終わってから、チームが一回り二回り強くなったと思う」と手応えを口にしていたが、新潟明訓は初戦敗退した全国高校総体からスケールアップしたことを印象づけるような戦いぶりだった。まずは試合開始直後、キックオフからのボールを奪って攻めた新潟明訓は中央からサイドへ逃げながらボールを受けたFW田辺大智(3年)が逆サイドのゴールネットへファインショットを突き刺して先制。その後も新潟明訓は「(チームのバランスを考えて)自分はとにかく守備になりましたね。個人であれば1対1、特に守備では負けたくない」というように、守備に重きを置いてプレーする加藤と抜群の展開力と攻撃センスを持つMF中村亮太朗(3年)という全国トップクラスのボランチコンビを軸に、相手を圧倒するような内容で試合を進めていく。

 対して、全国高校総体16強の帝京三はこの日指揮を執った新村知仁コーチが「サブの選手たちのレベルアップを図らせたいというのもあった」と説明したように、今大会は先発奪取を目指す選手たちで構成されたメンバー。静岡での走り合宿を経てこのadidas Cupに参加している帝京三は試合勘をやや欠いていることもあってか、新潟明訓戦の前半は開始直後に失点し、シュート数は0-10で折り返した。それでも"らしさ”を発揮するような要所を締める守りで1点差のまま折り返すと、後半3分に右サイドからMF佐々木祐真(3年)が出したラストパスをフィジカルコンディションの上がってきているというFW梅田隆次(3年)がニアサイドで合わせて同点に追いつく。

 だが新潟明訓は13分、中央でボールを持った田辺が中央突破。対応するCBを強引に右側からかわしながら放った右足シュートがゴールへ突き刺さった。新潟明訓はこの後も推進力のある2トップに加えて再三相手の逆を取って打開するMF高橋怜大(3年)の突破や中村の絶妙なパスなどから決定機を連発。だが最後のシュート精度を欠くと後半終了直前の38分、右SB三井貴耀(3年)のクロスをファーサイドのMF高田修平(3年)に合わせられて同点に追いつかれてしまった。

 帝京三は新村コーチが「選手権は思い通りにはいかないと思っているので。悪いゲームしようが、強い相手でも這いつくばってでもやらないといけない」と語っていたが、相手にほとんどの時間で攻められながらも少ないチャンスを確実にゴールに結びつけて2-2の同点に追いついた。苦しい展開の中でも試合をゴールをもぎ取る強さを発揮。だが、新潟明訓は直後に右SB白井克秀(3年)が決勝ゴールを決めて粘る帝京三をねじ伏せた。

 新潟明訓の田中健二監督は「今大会はとにかく相手は全部全国区なので、メンタル的に強くなれるか。強豪相手に戦えるか。失敗してもとにかくチャレンジして自信をつけさせる。とにかく個人で負けるな、と」。各自が強豪相手に負けないスキルを身に付けることをテーマに「adidas Cup」に臨み、チャレンジをしながら2日目までの4試合を全勝。強さを示した。

 新潟明訓は全国総体後、選手権へ向けたテストを兼ねて、配置転換などのテストを行ってきたが「思い切っていろいろなところ、ポジションにチャレンジさせたらピースがハマっていった。一気に得点力が上がっていった」と指揮官も驚く変化が生まれたという。左SBからFWへコンバートされた田辺が前線でその馬力と走力を存分に発揮し、最終ラインに入った木村風輝(3年)がスピードを活かして相手の攻撃を封鎖。前線にパワーが加わったことでより突破力を発揮するようになった高橋は、プリンスリーグ北信越の終盤4試合で8ゴールを記録した。そのプリンスリーグは終盤戦4連勝で2位。それも最終節の星稜高戦では相手をシュート1本に封じて、大逆転でプレミアリーグ参入戦の出場権を勝ち取った。加藤は「(全国総体で初戦敗退した)危機感からもあると思うんですけど、プリンスリーグでも高い意識で臨めたから2位で終われた」と頷く。

 元々、今年は加藤や中村、高橋ら1年時から全国舞台やプリンスリーグを経験した選手たちが揃う期待の世代。そのチームが夏からチーム力を確実に伸ばして冬を迎えようとしている。それも経験の浅いポジションを任されている選手もおり、まだ伸びしろがあるところが魅力。ここからの成長次第では全国上位も十分期待できそうだ。それでもまだ力任せに攻めてしまう部分などの課題も見られ、加えて加藤は「行ける実力は絶対にあると思う。ただ、勝ち続けるためには横綱じゃないとダメ。厳しい試合で勝つというのがまだないですね。(厳しい展開の試合で勝つための鍵は)勝ち切る力というか、戦えるかだと思います。その強さは絶対に持っているんで。きょうも交代で出てきて逃げている選手もいた。そうなるとスタメンで出ている選手たちが消耗もしますし、流れに入らないと自分たちを苦しくしてしまいます。(意識高い選手を)増やしていかないと厳しいし、競争も生まれない。(そのような力を本当に強いチームは)必ずもっているんじゃないかなと思います」と気を引き締める。

 相手が守りを固めてくることが予想される新潟県予選を勝ち抜いてまず全国切符を勝ち取ることができるか。加藤が「期待も大きいほど難しい。でも、それを乗り越えられるメンバーがいる」という新潟明訓の冬に注目だ。

(取材・文 吉田太郎)

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