beacon

[新人戦]悲願の選手権出場へ改革中の三田学園、9人目までもつれたPK戦制して兵庫4強入り

このエントリーをはてなブックマークに追加

鬼門だった準々決勝の壁を突破し、喜びを爆発させる三田学園高の選手たち

[1.29 兵庫県高校新人大会準々決勝 三田学園高 0-0(PK9-8)関西学院高 関西学院大G]

 兵庫県高校サッカー新人大会の準々決勝が1月29日に行われた。昨季、県1部リーグで優勝した三田学園高関西学院高の一戦は前後半で決着がつかず、PK戦までもつれたが、9人全員がキックを成功した三田学園が白星を手にした。

 試合後、福原幸明監督が「まったく内容は良くない」と苦笑いしたようにこの日、三田学園が見せた試合内容は褒められたものとは言えない。ただ、苦しみながらも掴んだ勝利は、昨季からの成長を示すものだったことも確かだ。

 序盤から試合の主導権は関西学院が握った。出だしに躓いた三田学園を豊富な運動量で圧倒すると、右サイドのMF石関凌(2年)や10番のFW三島涼風(2年)が効果的にスペースを攻略。後方からは一昨年にU-16日本代表に選ばれた左SB水田和真(2年)が正確な左足キックでサポートし、チャンスを伺った。11分には右クロスのこぼれ球を3列目が高い位置で回収すると、素早い配球から三島がゴールを狙ったが、三田学園DFが落ち着いてブロック。以降も関西学院がゴール前まで進出したが、「昨年から出ていた選手が多いので、計算できる」と指揮官が信頼を寄せるCB西川哲史(2年)ら三田学園DFが冷静な守備を見せ、1点を与えない。

 後半に入ってからは三田学園の攻撃陣が調子を上げたが、1点が奪えず勝負の行方はPK戦に委ねられることになった。昨季、三田学園は総体予選、選手権予選ともに準々決勝でPK戦負け。この日はPK戦に挑むにあたり、「呪縛を解くぞ」と福原監督から選手にハッパをかけられた。選手たちも昨季を超え、頂点まで駆け上がろうとする想いが強かった。

「僕たちは部員が90人くらいいて、ここに来られない仲間のためにも、僕たちは勝たないといけない責任がある。不安よりも、絶対に勝ってやろうという気持ちが強かった」(MF阪本聖弥、2年)と使命感に燃える選手は1人目からきっちりキックを成功させていく。先攻の関西学院もゴールネットを揺らし続けたが、迎えた9人目がキックを枠から外してしまうと、続く三田学園はDF横田大空(2年)が決めて、試合に決着をつけた。

 今年の三田学園は念願の選手権出場を目指し、改革を進めている。これまではライバル校に対する意識が強かったが、「これからは自分たちが強くなることに100%の力を注ぐ。選手にもそれは言っており、周りのチームや選手の存在を刺激にするのは良いけど、まずは自分が強くなる、上手くなることに100%に力を注ぎなさいと伝えている」(福原監督)と自らの成長に全力を注いでいる。まだ日は浅いが、選手たちにも変化が少しずつ見え始めており、これまで指揮官から雷を落とされると落ち込む選手が多かったが、「今年は前向きに捉える選手が多い。タフになっている」(福原監督)。

 この日で言えば、上手く噛み合わない前半に左サイドからの仕掛けで見せ場を作ったMF村上誠也(2年)が取り組みの成果が見られた筆頭だろう。前日の3回戦、須磨友が丘高戦はスタメン出場を果たしながらも持ち味を発揮できず、前半のみの出場に終わった。試合の入り方が悪いと引きずってしまうタイプの選手だが、この日は指揮官から課題として挙げられたボールを受ける前の準備を徹底。オフサイドとなり、ゴールは認められなかったが、後半15分には「理想的な動き出し」と胸を張る動きでMF覚井啓太(2年)のパスから左を抜け出して決定機を演出するなど、「今日の出来は良かった」と指揮官に言わしめる活躍を見せた。

「負けを次に生かせるチームが強くなっていく」。福原監督がそう口にするように失敗や悔しさを糧に成長するのは選手も同じ。この日の村上のように失敗を次に繋げる選手が今後も増えていけば、念願の兵庫県制覇がグッと近づくはずだ。

(取材・文 森田将義)

TOP