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[新人戦]新生・青森山田は東北準V。正木コーチ「後悔して欲しくない」「本当に気づいたら次からの行動が変わると思う」

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青森山田高は東北準優勝。CB小山内慎一郎主将は「危機感を持ってやっていきたい」

[1.30 東北高校新人選手決勝 青森山田高 0-1 尚志高 相馬光陽サッカー場A]

「本当に気づいたら次からの行動が変わると思う。悔しがっている、反省しているではなく、スイッチ入ったところが見たい」。学校業務などによって不在の黒田剛監督に代わり、今回の東北高校新人選手権で青森山田高の指揮を執った正木昌宣コーチは無念さを滲ませながら口にした。

 プレミアリーグチャンピオンシップと全国高校選手権の2冠王者として迎えた今大会。1、2年生の新チームは「2冠を達成したのは先輩たち」「自分たちはまだ何も成し遂げていない」ということを何度もミーティングで伝えられていた。だが、昨年10月の新人戦青森県大会5試合で全て8得点以上、計60得点を叩き出していたチームは「自分たちも」の思いが強すぎたか。正木コーチは当時から「(この代は)力がない。このままでは東北で勝てない」と指摘していたというが、そのことを自覚できなかった選手もいたかもしれない。スタートが遅れたことによる準備不足、雪の影響などあるかもしれないが、3か月前から「必死に」「本気で」変わることができなかったチームは東北タイトルを逃した。

 この日の決勝戦では前半4分に青森山田がプレミアリーグの戦いから学び、徹底してきたカウンターを受けない守りができずに失点。その後は対応していたものの、その1点が重くのしかかった。攻撃面ではボールをつなぐことはできていたが、相手の守りを切り崩すことができない。サイドを破ることもわずかでCKは試合を通してわずかに1。前後半にビッグチャンスはあったが、少ないチャンスを確実に決める強みを持ってきた青森山田がこの試合では決めきることができずに0-1で敗れた。

 前日の仙台育英高戦ではウォーミングアップから非常に雰囲気良く、試合では立ち上がりに相手を飲み込む形で2点を先取したが、この日は先発を外れた選手たちの気持ちが沈んでしまうなどムードを維持できず。2冠メンバーのひとりで新チームの主将を務めるCB小山内慎一郎(2年)は「昨日できて、今日できないとか波があるチームは勝てないと思うので、改善していきたい。気持ちの部分が欠けていたと思う。ムラがある部分な改善しないといけない」。昨年のチームの実力、意識の高さを知る主将は、個人個人が技術、フィジカル面で成長することの必要性、リードされてからのメンタル面の低さ、指示されたことを実行できない理解力の低さなど課題を次々と挙げていた。

 全国2冠から東北での敗戦を喫したチームはこの苦杯を今後へのきっかけにするしかない。正木コーチは「県内でずっと勝ってきているのは他のチームよりも必死にやってきた質とか量とかだったと思う。今の子達は勝って当たり前。負けることを知らない。必死でやっている姿が見えていなかった」と語る。青森山田が青森や東北のチームを上回るような必死さ、本気度で築いてきた「北の名門」の地位。だが、このチームからはまだ見えていなかったという。

 まずは青森山田の選手としてピッチに立つ条件を満たす選手になること。選手として成長することはもちろんだが、それは日常の姿勢から変えていかなければならない。昨年からのレギュラーである小山内やMF郷家友太(2年)、現2年生のリーダー格であるMF佐々木友の後ろにくっついて行動する選手がまだまだ多く、宿舎での挨拶、気遣いなど他の人がやってからやるような状況。その部分は今回の遠征でも指摘されて変わってきてはいるが、まだまだだ。

 正木コーチは「まず人としてきちっと成長しないと。普段の生活をちゃんとやっていれば、自信持ってサッカーでもなると思っている。普段の生活がだらし無い選手は信用できないと監督も言っている。そこのきっかけが今回であればいい」

 結果は昨年と同じ準優勝だが、GK廣末陸(3年)やMF高橋壱晟(3年)ら主力半数がいなかった1年前とは意味が違う。自分たちはまだまだ力が無い、人としても成長しなければならない。その「気付く」きっかけが今大会の準優勝になるか。正木コーチは「後悔して欲しくない」と語った。選手としては青森山田の主将を務め、選手権で計5ゴールを決めている正木コーチだが、自身が主将だった99年の全国高校総体は青森県予選で敗退して出場できなかった。

「僕はここ20年で唯一負けているキャプテンなんですよ。だから、どの年代にも言っていた。後悔して欲しくない、と。勝ち続ける難しさもあるんですけど、今のままだったら必死でやった? という問いかけが出てしまう。今のままじゃ本当に後悔するよと」。

 当時はまだ常勝軍団になる前の段階。それでも主将として、仲間たちとともに全国高校総体に出られなかった悔しさは非常に大きかった。同じ経験を後輩でもある教え子たちにして欲しくない。全国に出て、3年生たちのようにいい思い出をつくって卒業して欲しい。だからこそ、気づいて、変わってくれることを求める。小山内は「(自分や郷家だけが)危機感持っていてもチームは変わらない。自分たちの力の無さに気づいて危機感もってやらないと、山田で歴代最低の記録をつくるかもしれない学年なので、危機感を持ってやっていきたい」。選手たちは青森に戻って今回、東北大会に帯同しなかった選手たちと競争。勝つことは当然ではないことを理解して、日常から行動を変えて、ライバルたち以上に必死に、本気で努力をして、結果を残すチームになる。

(取材・文 吉田太郎)

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