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デュッセルドルフ国際ユース大会開幕直前!日本高校選抜・平野直樹監督インタビュー

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日本高校選抜の指揮を執る平野直樹監督(履正社高)

 第56回デュッセルドルフ国際ユースサッカー大会が、29日からドイツ・デュッセルドルフで開催される。日本高校選抜は第96回全国高校サッカー選手権の大会優秀選手を中心としたメンバー構成。昨年の5位を上回る優勝を目指して、スタンダール・リエージュ(ベルギー)との初戦(29日)から一戦必勝の姿勢で戦い抜く。大会開幕を前に、日本高校選抜の平野直樹監督(履正社高)が、現在のチーム状態についてや、本番の戦いへ向けての意気込みを語った。

●日本高校選抜・平野直樹監督(履正社高)
―いよいよ、大会が始まりますが、今のお気持ちと準備の手応えについて教えてください。
「多くのことを求めるのではなくて、シンプルに4-4-2(システム)なんだけれども、日本人のストロングポイントである『かかわる』というところ、前後だけのかかわりではなくて横も引っくるめて、前後左右をコンパクトにして、局面局面で数的優位を作るということをずっとやってきました。守備面でも同じです。ボールがあるところで数的優位を作れるようになってきている。守備面ではどんな相手でもボールが奪えるようになっているし、粘り強く献身的にやることが日本の良いところだと思うので、良いところが出てきているんじゃないかなと思います。(別の言葉で表現するならば)群れでボールを狩るという感じじゃないかな。それができている」

―一発で仕留めるところと、チャンスの数を増やすというところを攻撃のテーマに挙げられていました。オランダでの練習試合でも得点を獲ることができています(2試合で計8得点)。
「ヨーロッパの選手は1チャンス1ゴールというような、勢いで押されていても、1チャンスを決めきるだけの集中力が凄くある。そこが日本の決定的に足りないところとずっと言われています。『1チャンス1ゴール』を目指すんだけれども、それができないのであれば、ゴールチャンスを多く作って、10回だったら1回点を取れるように。それをするのであれば、10回チャンスを作らなければならない。そうすることで得点を奪っていきたいのだけれども、シュートチャンスを逃すとか、本当にサッカーの本質のところを外しちゃうケースもゼロじゃない。それはミーティングで何のために攻めているのか、何のために守備をやっているのか話したりしていました。

 守備のところも狼が狩りする映像を見せたり……。狼は1匹では狩りをせずに、2匹・3匹で狩りをしたりする。ボールを狩るためには1対1で負けないことは当たり前なんだけれども、どんどん数的優位をつくっていく。相手に時間も、スペースも、考える余裕も与えない。そんなことがこの間のアヤックス戦でもできていました。アヤックスと言えば、バルセロナの源流というクラブ。ポゼッションに長けているんだけれども、中盤で彼らのボールを奪って攻撃に持ち込むということもできていたし、結果、失点はゼロ。慣れるまでに危ないシーンもあったけれども、いいシュミレーションになった。きょう(29日)対戦するベルギーのリエージュがアカデミーは全部4-3-3でやろうとしている。中盤の3人が回ってボールを受けるということもやるだろうけれど、ボールを持たれても粘り強くやっていれば相手も焦れてミスが出るからというところもオランダで経験しているので、そういうところでは良かった。あとは(大会が)25分ハーフなので、チャンスでしっかり決められるか。押していたけれど……、という反省が異常に多いので、結果を求められればいいと思っています」

―2か月間、選考から見られてきて、見どころの多いチームになったと思います。
「こちらが求めているのが、『日本人らしいところ』と敢えて言ってきました。世界に挑戦する気持ち、自分を越えていく気持ちを持っている人、そしてタフな人であること、そして仲間とコミュニケーションを取れる、良いことも悪いことも言えるということを最初の選考基準にしていたので、結局キャプテンを経験していたという子とか増えましたよね。欧州に来て大柄な選手とやるからと言って、大きい選手をチョイスしている訳ではなく、技術のある小柄な子が多くなったんだけれども、結果的にそうなっただけで、彼らがこちらへ来て堂々と渡りあっている。それこそ、群れでボールを狩るということが現時点でできているかなと思います」

―ご自身の高校時代と今の高校選抜の選手たちを比べていかがでしょうか?
「僕らの時はただ一生懸命やるだけでクオリティとか、決して高くなかったと思います。個人として高い選手はいましたけれども。今の子どもたちは洗練されていて、僕らの時は“野武士”みたいなのはいっぱいいて、(自分自身も)泥臭い、下手くそな選手でした。無骨さが足りなくなって洗練されすぎていると言われているんだけれども、そういう意味でもタフな選手じゃないとダメ。(メンバーには)高校サッカーで泥臭く、粘り強くできる子たちが多いので、か細さ、ひ弱さは感じないですね」

―確かにたくましい選手が多い印象です。
「ボランチで中心となってやってくれている田部井涼とか、宮本優太とかというのは運動量も多いし、身体も張れるし、ゲームの流れも読める選手なので、いい意味でやれるというところを見せてくれていますね」

―前橋育英でCBだった角田(涼太朗)を左SBで起用したり、選手にとっても新しい発見がある。
「角田自身もCBやっている時でも繋ぎが好きだったり、攻撃が好きだったりというところが見えていた。CBは蓑田(広大)生駒(仁)も高いものを持っているので、角田もいいものを持っているということであれば、使わない手はない。一つのポジションのスペシャリストも大事なんだけれども、18名しかいないので複数ポジションをできることもチームにとって、とても助かる。だから、角田のCBとSB、宮本のボランチとSBというのもアヤックス戦でも試しているし、飯島陸だったらトップもオフェンシブ(MF)もあるし、菊地泰智だったらオフェンシブとボランチということもある。(交代出場の多い選手含めて)誰が出てもクオリティが落ちないし、むしろ一つエンジンが上がってというところがあるので、セレクトが間違っていなかったなと思います」

―高校選抜を率いる立場はいかがでしょうか。プレッシャーがあると思いますし、もしかしたら楽しめるような部分も。
「プレッシャーはありますよ。今までこの高校選抜というのが、ご褒美的なところで考えられていたところもあるんですけれども、こちらとしては決してそのようなことは思っていない。行く限りはこれだけの選手を預かっているので、できるだけシンプルではあるんだけれども、チームコンセプトを落とし込んで、寄せ集めではなくてチームとして結果を求めるということでやっている。楽しむ余裕……ヨーロッパのサッカー感や空気感は存分に楽しみたいと思っていますけれども、いざ勝負となれば負けていい勝負なんてないのでね。勝つためにやっているのでお祭り気分というのは一切ないですね」

―全6試合戦って、優勝することにこだわっていく。
「優勝が最大の目標なんですけれども、その前に1試合1試合しっかりやるしかない。(国内、オランダで)色々なチームに30分3本の試合をお願いして、(25分ハーフのゲームの)入り方・終わり方をこだわってやっていたので、勝負にこだわることと、得点を取ることと、日本人の良さを出すことと、こちらとしては3つのポイントを抑えながらできたんじゃないかと思います」

―日本のサッカーでインパクトを。
「いい準備ができていると思います。けが人もいないですので」

(取材・文 吉田太郎)
●2018日本高校選抜欧州遠征特設ページ

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