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群馬の対外試合解禁。打倒・育英に燃える桐生一がA戦を制す

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桐生一高はCB中谷優太(写真)とCB丸山琉空を中心に無失点勝利

[7.11 練習試合 前橋育英高 0-1 桐生一高 前橋育英高高崎G]

 今夏に群馬県で開催される予定だったインターハイサッカー競技は新型コロナウイルス感染拡大の影響によって中止。群馬県の高校は対外試合禁止の期間が続いていたが、ようやく解禁され、7月11日の前橋育英高桐生一高が練習試合を行った。25分×12本行われ、Aチーム同士が戦った1、2本目は桐生一が1-0で勝利している。

 試合は過去6年の選手権予選での対戦で、5度敗れている桐生一が立ち上がりから気持ちのこもった戦い。今年の前橋育英は、複数のJ1クラブが注目する司令塔MF櫻井辰徳(3年)を中心に強力な陣容。だが、桐生一は櫻井、MF熊倉弘貴主将(3年)の両ボランチに自由を与えないことを心掛け、守備意識高くその起点を潰そうとする。相手の強みを消し、自分たちがボールを持つ時間を増やそうとした。

 それでも、局面で個の強さが光る前橋育英は左SB相川陽葵(3年)の突破、ラストパスからこぼれをMF新井悠太(3年)が狙ったり、右SB秦英志(2年)がアーリークロスをゴール前に入れたりするなど相手ゴールを脅かす。

 だが、桐生一はMF落合遥斗主将(3年)が精力的に攻撃に係り、また1トップのFW小林凌大(2年)がよく収めるなどボール支配の時間を増加。そして17分、右サイドで突破口となっていたMF入澤祥真(3年)がコンビネーションで抜け出し、さらにカバーのDFを強引にかわしてゴール前に侵入する。最後は左足シュートをねじ込んで先制点を奪った。

 桐生一はFW熊倉弘達(3年)の仕掛けや、櫻井と熊倉弘貴がテンポ速くボールを動かすなど反撃。だが、1本目は選手同士の距離感が広く、攻撃が単発になってしまう。桐生一はともに身長170cm台前半の中谷優太(3年)と丸山琉空(2年)の両CBが隙を見せない。また、MF金沢康太(2年)や落合がセカンドボールを回収して攻撃に繋げていた。

 中谷は「身長(170cm)は低いですけれども、アジリティの部分やジャンプ力の部分を持ち味にしているので、そこをしっかりと発揮できたことが良いところだったと思います。よく身長が低いと言われるんですけれども、ずっとこのプレースタイルでやってきているので。スピードと身体の強さは負けない自信があります。丸山もインターセプトとかファーストとかしっかりと行けていたので自分としてはやりやすかったです」と微笑む。

 また、落合が「(DFラインは)普段だったらそんなに声を出してくれないんですけれども、きょう出ていて自分も頼もしいと思いました」と感謝したように、課題の部分にも意識的に取り組んだことで、チームの集中力は保たれ、良い流れに繋がっていた。

 2本目の4分、前橋育英は左SB中島修斗(3年)のクロスからFW中村草太(3年)の放ったヘディングシュートがクロスバーをかすめる。対して桐生一は6分、落合のスルーパスから強引に持ち込んだMF寶船月斗(2年)が左足を振り抜く。このシュートは相手GKの好守に阻まれたが、後半にSBからSHへポジションを移した松尾琉雅(3年)の仕掛けや落合のミドルシュートなどで追加点を狙いに行く。

 ただし、2本目は前橋育英ペース。細かくボールを動かし、桐生一を押し込む時間を増やした。選手が入れ替わる中、桐生一は苦しい時間帯が続いたが、ボールへの寄せはかわらず速く、ゴール前の集中力も切れない。前橋育英は中島の左クロスから今度はFW大野篤生(3年)がヘディングシュートを放つなど反撃したが、田野豪一監督が「気持ちは入っていたね」と評した桐生一が無失点のまま2本目も終えた。

 中谷は「25分という短い時間だったんですけれども、みんな集中していて球際も強く行くことができました。身体を張ってやろうと試合前にみんなで話合ってできたのでそこは良かったです」とコメント。桐生一イレブンは厳しい戦いの中でもサッカーを楽しみ、充実の表情で試合を終えた。

 宿敵・前橋育英に勝利したとは言え、シーズンはまだまだこれから。満足感に浸っているつもりはない。落合は「一応勝てたこととボールもしっかり保持できたことは自信に繋がったと思いますけれど、後半は相手がずっと押していたのでそこは反省だと思います」と引き締める。そして、中谷は「こんなところで気を抜いていられないし、育英ももっとやってくると思うので、もっと育英よりも準備をしっかりとしていきたいと思っています。(選手権の)県大会は絶対に育英に勝って、選手権全国では優勝目指して頑張っていきたいです」と誓った。ともに待望の再開初戦。この試合で出た反省点を改善しながら、個人、チームとして成長し、最大の目標である選手権を目指す。

(取材・文 吉田太郎)
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