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目指すはデ・ブライネとカンテのハイブリッド。横浜FCユースMF中川敦瑛は試合を決定付けられる10番に

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今年、横浜FCユースの10番を背負う中川敦瑛

[2020シーズンへ向けて](※横浜FCの協力により、オンライン取材をさせて頂いています)

 さすがにああはなれないかなと思いつつ、それでもああなれたらと願う自分もいる。ケビン・デ・ブライネとエンゴロ・カンテ。攻撃と守備の世界最高峰をハイブリッドすれば、圧倒的な存在になれるのは言うまでもない。「前への推進力だったり、キツい時こそ走れる運動量、守備での球際、そういう所が自分の長所として自信を持って言える所です。デ・ブライネとカンテ。そうなりたいですね、本気で」。横浜FCユースのナンバー10。中川敦瑛(3年)は攻守で試合を決定付けられる選手を、真剣に目指している。

 今でも見返したくなる試合がある。2018年のプリンスリーグ関東参入戦2回戦。明秀日立高戦でスタメンを張った25番の1年生は、群馬の地で躍動する。開始8分にヘディングで先制点をマークすると、20分にもカットインからファインゴール。“ドッピエッタ”の活躍でチームをプリンス復帰へと導いてみせた。

「あのゲームは嬉しかったですね。1回戦の昌平高戦で全然自分のプレーが出せなくて、明秀日立戦は『自分がやってやろう』という気持ちがあったので、あれで自信が付いたのはあったと思います」。1年生ながら主力としての自覚も芽生え、自身への期待も感じる機会が増えていく。

 それゆえに昨シーズンのリーグ開幕戦で受けた衝撃は、自分を見つめ直すきっかけになったと中川は振り返る。「第1節でFC東京U-18とやった時に、レベルの違いを思い知らされたというか、チームとしても個人としても『自分たちがやってきたことがここまで通用しないんだ』というのは、衝撃的でしたね。まだまだ足りないし、練習の質も上げていかないといけないと感じました」。

 ポジションもサイドハーフからインサイドハーフに変わったことで、プレースタイルにおける攻守の比重もまた変化させていく必要があった。「最初にインサイドをやった時は、周りを見るなんてやったことがなかったですし、慣れていない部分があったんですけど、そういう所を練習中からも意識することで、少しずつできてきたのかなと思います」。

「でも、難しいですね。結構(田畑)麟とかオーバーラップしていくので、アイツが上がる時はちょっと下がり目にいながら、相手のカウンターになった時に対応できるぐらいにはポジションを取ったり、そういうことは考えるようになりました」。イケイケの選手が多い周囲の中で、バランスを維持する術は必要不可欠。守備面での意識向上は著しい。

 とはいえ、もともとアグレッシブなプレーが持ち味。攻めたくないはずがない。「守備はもちろんやりながら、前に出て行く所が自分の役割かなと。もともと攻撃の選手なので(笑) だからこそ、シュートを打てる所なのにパスの選択肢を選ぶことも結構あったので、もっとゴール前で強引に行くシーンは増やしていかないといけないなとは思います」。

 リベンジを期したプリンスでの“2巡目”に当たる初戦は、小さくない自信を得るゲームになったという。「2巡目の初戦がFC東京U-18戦で、そこで2-0で勝ったのは大きかったのかなと。内容も悪くなかったですし、個人としても得点という所で結果を残せて、そこで『やっぱりいけるんじゃないかな』と思えたんです」。

 そこからの快進撃は周知の通り。見事プレミア昇格を果たしたチームの中で、インサイドハーフを務める中川の存在感は日ごとに強まっていった。「『自分が引っ張っていかないといけない』という気持ちは強くなりました。自分はプレーで見せていくタイプなので、背中で引っ張っていくじゃないですけど、そういう想いは出てきましたね」。背中で牽引できる選手へ。そういう意味では、新チームの背番号にも覚悟が籠められている。

「今年は10番を付けます。シンプルにカッコイイなって思いますし、10番を付けて結果を残していけば、代表に選ばれるチャンスもあるのかなと」。U-15世代から遠ざかっている“日の丸”への想いが、自然と口を衝く。

「やっぱりまた代表に戻りたい気持ちは強いですけど、今の代表の人たちを見ていると、まだまだ足りない部分はいっぱいあるなと。やっぱり(斉藤)光毅くんを見ていると、『ああいう選手が代表に行くんだな』というのは見ていてわかりましたし、『試合を決定付ける選手になれ』と信義さん(小野信義・前監督)にも言われていたように、そこがまだまだ自分に足りない部分ですよね」。

 攻守で試合を決定付けられる選手。最近よく見ているのはマンチェスター・シティのケビン・デ・ブライネとチェルシーのエンゴロ・カンテ。攻撃と守備の世界最高峰をハイブリッドすれば、圧倒的な存在になれるのは言うまでもない。「前への推進力だったり、キツい時こそ走れる運動量、守備での球際、そういう所が自分の長所として自信を持って言える所です。デ・ブライネとカンテ。そうなりたいですね、本気で」。笑顔の裏に、確固たる決意が垣間見えた。

 ようやくやってきた公式戦。待たされ続けた晴れ舞台に向けて、力強い言葉が紡ぎ出される。「もうシーズンも残り少ないですけど、チームのためにプレミアは全勝しに行く気持ちでいますし、個人としても得点はできるだけ多く獲りたい想いもあって、やっぱり結果を残したいというのが一番です。1試合1点は獲りたいですね。最低でも8点、獲りたいです」。

 それぐらい言ってもいいだろう。それぐらいの期待感を、ピッチに立つこの男は纏っている。横浜FCユースのナンバー10。背中で語れる圧倒的な存在へ。中川敦瑛は攻守で試合を決定付けられる選手を、真剣に目指している。

■執筆者紹介:
土屋雅史
「(株)ジェイ・スポーツに勤務。群馬県立高崎高3年時にはインターハイで全国ベスト8に入り、大会優秀選手に選出。著書に「メッシはマラドーナを超えられるか」(亘崇詞氏との共著・中公新書ラクレ)。」

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