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団結力と一体感強みの富山一、2年生中心の富山U-18に先制許すも執念のドロー

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富山一高(紫)は団結力と一体感を持って戦い、カターレ富山U-18とドロ―

[10.2 高円宮杯プリンスリーグ北信越第17節 富山一高 1-1 富山U-18 富山一高G]

 2日、高円宮杯JFA U-18サッカープリンスリーグ2021 北信越第17節で富山一高(富山)とカターレ富山U-18(富山)が激突。名門校とJユース勢による富山ダービーは、1-1で引き分けた。

 富山一は80年代頃から富山県を代表する存在であり続け、13年度選手権で北信越勢初の日本一。その後も19年度インターハイ準優勝、昨年度も選手権8強と全国上位で活躍を続けている。その富山一に対し、富山U-18の左SB兼浦秀多主将(3年)は「富山県同士の対決ということで絶対に負けられない戦い。一週間くらい前からみんな凄く気合が入っていました」と振り返る。

 約2か月半ぶりの公式戦で硬さが出て、重心が低くなった富山一に対し、10日前にインターハイ4強の星稜高(石川)を破っている富山U-18が入り良く試合を進めた。後方からボールを繋いで相手2トップの脇を狙いながら、CB村上瑛亮(2年)らがハイサイドへ縦パス。中盤の攻防戦でも優位に立っていた。ただし、富山一は2年生ストッパーDF湯川信治が競り合いで抜群の強さを発揮したほか、カバーリング秀でたDF能浦大嬉(3年)、DF岡本晃輝(3年)の3バックが安定するなど決定打を打たせない。

 その富山一は前半半ば頃から徐々にハイプレスもハマりだし、相手のミスを誘発。ポゼッションの時間を伸ばす。そして、10番MF中川晟(3年)の1タッチパスや左WB片山大治郎(3年)の攻め上がりを交えて攻撃。ただし、富山U-18もU-17日本代表候補のCB小川遼也(2年)が高打点ヘッドと対人守備で存在感を示すなど相手をゴールに近づけなかった。

 前半45+2分、富山U-18は左サイドでの余裕のある動きが印象的なSB兼浦がDFを巧みに外してクロス。これをFW春木慎之介(3年)が頭で合わせるが、富山一GK辰島尚悟(2年)が反応し、0-0で前半を終えた。

 富山U-18の朝日大輔監督は「(前半)動かせる分、背後がなかったので後半はもう一個背後へ行こうという話をしていました」と振り返る。その言葉通り、富山U-18は相手DFの背後を突く攻撃で先制点を奪った。後半7分、相手GKのキックを小川が左足ダイレクトで跳ね返す。DFライン背後に落ちたボールに反応した春木が独走。そのまま右足シュートをゴール左隅へ流し込んだ。

 1-0で勝った前期の富山一戦に続く先制点に歓喜を爆発させる富山U-18イレブン。だが、富山一は大塚一朗監督が「点取られてちょっと吹っ切れたことがあるのかな」と振り返ったように、前への姿勢を強めた。11分にFW及川元太郎(3年)とFW網谷飛来(2年)を同時投入。「寄せの部分とかできていたし、嫌らしさがあった」(大塚監督)という2トップの存在もあって、流れを傾ける。

 富山一は高い位置でボールを奪い返すと、サイドチェンジなど5レーンを意識した攻撃でCKやスローインを獲得。そして、デザインされたセットプレーから湯川がヘディングシュートを放つなど富山U-18ゴールを脅かす。富山U-18も速攻からチャンスを作り返していたが、ピッチサイドの3年生たちの応援も力に攻める富山一が終了間際に追いつく。

 後半43分、片山の縦パスに網谷が反応。我慢強く守っていた富山U-18CB村上がファウルで止める形となり、レッドカードが提示された。数的優位を得た富山一は諦めずに攻め続けると、45+2分に連続攻撃から及川がPKを獲得。キッカーに立候補した2年生DF湯川が右隅に沈めて同点に追いついた。

 富山U-18の朝日監督は「こういうゲームに最終的にはなるかなと思っていました。それでも弾けるかなと思っていたけれど、どうしても退場でみんな浮足立ってしまっていたので、そういうところは我々含めての反省でもあるかなと思います」と語る。それでも、失点後に連続で決定機を作られながらもGK土肥彪真(2年)らが至近距離からのシュートを連続ストップ。2点目を阻止し、勝ち点1を死守した。

 富山一は勝ち越すことができなかったものの、執念のドロー。コロナ禍で県外チームとの対戦ができなかった影響もあるようだが、例年同様選手権へ向けて仕上げて来ている印象だ。近年の強力FW陣や特別な高さはなく、インターハイ予選で敗退を喫しているものの、プリンスリーグ北信越では前期最少失点。伝統の堅守、この日も終盤に効果を発揮したサイドからの崩し、多彩なセットプレーで相手を上回っていきそうだ。

 何よりも今年の強みは団結力と一体感。ヘッド格の善本洋輔コーチは「今年はレギュラーだけじゃなくて全員で戦いたいという思いが凄く強くて、遠征でも色々な選手を試したりしてきました」と説明する。セカンドチームの選手たちもトップチームと同じトレーニング。3年生中心にまとまりが良く、誰がピッチに立ってもマジメに全力で頑張ってくれる、そして信頼できる選手が多いのだという。

 この日も応援に回った3年生が全力で応援。善本コーチは「声を出せない状況ですけれども、3年生中心にあれだけ応援の後押しがあって、あの同点ゴール」と頷く。プリンスリーグ北信越で4勝5分3敗の富山一だが、ホームでは無敗を維持している。この日キャプテンマークを巻いた中川が「応援とかもベンチ組とかスタメンも一体となって戦えているのは今年の強みだと思います。(それは去年、一昨年にも)負けていない」という力も武器に選手権へ。まずは富山奪還に集中し、全国で昨年度超え、日本一に挑戦する。

(取材・文 吉田太郎)
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