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インハイ決勝以来の公式戦。米子北は課題残すも元気に走り、戦い切って作陽下す

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前半36分、米子北高FW牧野零央(右から2人目)が先制ゴール

[10.9 高円宮杯プリンスリーグ中国第15節 米子北高 2-1 作陽高 ドラパーク米子球技場]

 9日、高円宮杯JFA U-18サッカープリンスリーグ2021 中国第15節で暫定2位の米子北高(鳥取)と同6位・作陽高(岡山)が対戦し、米子北が2-1で勝った。

 米子北にとっては過去最高タイの準優勝だったインターハイの決勝以来、約1か月半ぶりの公式戦。躍進したインターハイ、その後のクラスター発生時に支えてくれた人たちのために、“米北らしく”走ること、戦うことを誓って臨んだ一戦だった。

 その米子北は、CB鈴木慎之介主将(3年)が「正直、自分もあそこまで行けると思っていなくて。声もよく出ていたなという。インハイ前に比べたらアップの雰囲気も良かった」と振り返る準備と立ち上がり。トップギアで相手GK、ディフェンスラインにアプローチを掛けて作陽のビルドアップを乱すと、素早い仕掛けでゴールを襲った。

 前半6分にMF木村愛斗(3年)の左クロスからMF渡部颯斗(3年)の放ったヘッドは枠右。同7分には左SB海老沼慶士(3年)のサイドチェンジを渡部が折り返し、FW小橋川海斗(2年)が体ごと飛び込もうとする。

 作陽は慣れないプレスの速さに戸惑い、後手に。加えて、酒井貴政監督は「狙い持って蹴るところと、狙い持って動かすところの区別ができていなかった」と指摘する。CB山本修也(3年)やMF西田達哉(3年)が自陣PAからパス交換やドリブルで相手を剥がして縦パスを狙ったが、前半は受け手のポジショニングや動き出しが曖昧に。幾度かシュートまで持ち込んでいたものの、良い形の攻撃を増やすことができなかった。

 一方、米子北は30分で早くも小橋川をFW牧野零央(3年)へスイッチ。前線での競り合いやプレッシングで存在感を放つ牧野を加え、攻守の勢いを増す。33分にショートカウンターから渡部が迎えた決定機は作陽GK重松利樹(3年)に阻止されたものの36分、再びショートカウンターから左の木村がDFを外してクロスを上げる。そして、ニアへ飛び込んだ牧野が右足アウトで合わせて先制した。

 米子北はJ注目の10番MF佐野航大(3年)がボールを奪う部分やキープ力など試合を通して一段階上の動きを見せ、DFリーダーのCB鈴木慎之介(3年)とCB 飯島巧貴(3年)、右SB原佳太朗(3年)、海老沼、MF山中奨(3年)らが空中戦や競り合いで強さを発揮。久々の公式戦を不安視する声もあったが、前半は堂々の戦いを見せていた。

 後半、作陽は前線の動きを修正。3分には、後半攻め上がりでチャンスに絡んだ左SB中井陸人主将(3年)の折り返しをMF田口智士(2年)が左足ダイレクトで狙う。だが、これは米子北GK山田陽介(3年)に阻まれた。それでも、ボールを保持する時間と仕掛ける回数を増やし、快足FW西村颯人(3年)とFW池田陽多(3年)の抜け出しをシュートシーンへ結びつけた。

 だが、次の1点も米子北が奪う。21分、FW福田秀人(2年)とのパス交換で左サイドを突いた木村がラストパス。これを牧野が左足ダイレクトで合わせて2-0とした。後半、米子北は相手にポゼッションされる中でブロックを敷き、集中した守備。そこから縦に速い攻撃を繰り出し、リードを広げた。

 ただし、前半から飛ばした米子北は終盤に失速してしまう。作陽はビルドアップで幾度も相手の脇を取って前進し、コンビネーションからシュートを連発。だが、精度が上がらない。得点は終了間際に右サイドから崩し、交代出場FW大田知輝(3年)が右足で挙げた1点に留まった。

 米子北の海老沼は「インターハイやコロナで色々な方に応援してもらったので、その人たちに感謝するという気持ちを持って戦いました」と振り返る。また、中村真吾監督は「最初頑張った。しっかりアプローチも行けて、声も出て、元気に張り切ってやろうみたいな感じが凄く出ていて良かった。やっぱり試合ができるのは良いなと思ったけれど、後半甘くないことが分かって、また一から頑張ろうという課題を与えてくれました」。インターハイ準決勝(対星稜高)で試合終盤に2失点し、同決勝(対青森山田高)で後半終了間際と延長後半終了間際にそれぞれ失点しているチームは、再び試合終盤に甘さ。選手たちは試合の締め方を見直し、徹底する考えを口にしていた。

 今夏のインターハイで圧倒的な強さを発揮した青森山田を決勝で追い詰め、また競り負けた経験は自分たちだけが持つ特別なモノ。決勝含め、強豪校と戦う中で得た“日本一になるための基準”を持って“山陰の雄”は成長を目指す。鈴木は「本当、あの経験を経験だけで終わらせないように。(インターハイは)あそこで山田と戦えたのも大きいですけれど、他の試合でも、自分たちがあそこまでできるという一つの基準ができたと思います」と語り、佐野は「(選手権は)130人全員で妥協せずにチーム一丸にならないと勝てないと思うので、練習からもっと激しく、基準高くやれたら良いと思います」。この日は課題を残しながらも、走り、戦って周囲への感謝を表現。「米北は元気だ」ということを証明した米子北が、冬への挑戦を再スタートした。

(取材・文 吉田太郎)
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