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元代表主将の指導5年目で東北新人4強。花巻東は模範の野球部にも「少しでも近づけるように」

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東北新人選手権で4強入りした{{c|花巻東高}を指導する柱谷哲二テクニカルアドバイザー

[1.30 東北高校新人選手権準々決勝 鶴岡東高 0-1 花巻東高 Jヴィレッジ]

 30日、東北高校新人サッカー選手権大会準々決勝がJヴィレッジで行われ、4強が決定した。{尚志高(福島1)、明桜高(秋田1)、東北学院高(宮城1)と共に、花巻東高(岩手1)が4強入り。鶴岡東高(山形2)をFW藤原涼の決勝点で1-0と退け、準決勝進出を決めた。

 かつて仙台、鳥栖、東京Vなどでプレーした元Jリーガーの花巻東・清水康也監督は、「昨日の1回戦よりアグレッシブに戦ってくれた。自信をつけてくれているのだと思う」と振り返った。決勝点となったのはクロスのこぼれ球を藤原が蹴り込んだ形だが、「あそこで中に走ってくれていたことが大事。泥臭い形でしたけど、それをやれるかどうかなんです」と、足を止めずに戦った選手たちを称賛した。守っても、後半は鶴岡東のシュートを0本に抑え込んでの逃げ切りに成功。守備でも手応えを掴む内容で、初めての4強入りとなった。

 そんなチームを見守り、また時には熱く鼓舞しているのが柱谷哲二テクニカルアドバイザーだ。かつて東京Vで幾多のタイトルを手にし、日本代表主将としても活躍した男が、いまはコーチとしてベンチ入りして選手と共に戦っている。

 柱谷TAが現職に就任したのは2018年から。「ある日、(恩師である)国士舘大学の大澤英雄理事長から『花巻東に行ってくれ』と言われたんだよ」と笑って振り返る。2017年まで当時JFLのヴァンラーレ八戸の指揮を執っており、その前年はJリーグのガイナーレ鳥取の監督だった。「『ちょっと無理です』と最初は断った」というのも当然だろう。しかし、大澤理事長からはその後も懇請があり、ついに花巻東の関係者と会うことに。その相手が同校野球部・佐々木洋監督(メジャーリーガーの大谷翔平投手や菊池雄星投手を育成)だった。

 もともと佐々木監督は野球部だけでなくサッカー部の強化を切望しており、その手助けを母校の国士舘大に頼み、そこから柱谷氏に話が巡ってきていた形だった。その席で佐々木監督から頼み込まれた柱谷氏は、考えを改めて花巻東へ赴く決断を下した。

「佐々木監督の人柄と熱意に打たれたというのが一番。誠実で情熱のある言葉に、心動かされるものがあった。僕はもともと指導するカテゴリーにはこだわらずに動いてきた。サッカー部を強くしたいと語る佐々木監督と話しながら、『こいつとなら一緒に仕事をしたい』と思えた。自分にとってはそこが大事だった」(柱谷TA)

 まずは石だらけのグラウンドを整備するところから始まった花巻東。東京での仕事もこなしつつ、今は年の半分ほどをサッカー部で過ごす。2019年からは国士舘大でコーチをしていた時代の教え子である清水監督を迎えて指導体制も整えつつ、チームの指導に当たってきた。

「最初はサッカー以前の部分からだった。挨拶もできないようでは応援もしてもらえない。『グラウンドを何とかしてほしい』と言っても聞いてもらえるわけもないですよ。だからまずは応援してもらえるようなチームになることが重要だった。選手のスカウトにしても、柱谷だから来てくれるとか清水だから来てくれるとかそんな簡単なことじゃない。特待制度も含めて、いろいろなことを整える必要があった」(柱谷TA)

 先ごろ念願の人工芝グラウンドも完成したが、「これも佐々木監督が猛プッシュしてくれたんです」と明かし、こう語る。

「野球部を観ていると色々なことが素晴らしすぎて、『サッカー部はまだまだだな』と思わされることばかり。でも、模範になっている野球部に少しでも近づけるようにやっていきたい」

 柱谷TAが就任時に用意したのは五カ年計画。今シーズンはまさに「その5年目に当たるので、ここで(岩手県を)優勝できれば」と虎視眈々、初めての全国行きを狙う。そのための土台作り、そして自信という財産を蓄えるために、まずはこの東北新人大会で4強のその先を狙っていくこととなる。

花巻東高FW作山寛都がボールを追う

(取材・文 川端暁彦)


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