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立ち上がりや空中戦の攻防で成徳深谷に差。関東切符獲得の武南は強みのパスワークをより追求して次へ

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後半27分、武南高は交代出場FW山本昇汰のゴールで2-0に

[4.27 関東大会埼玉県予選準決勝 成徳深谷高 1-2 武南高]

 名門・武南が“3大会連続”で関東大会へ――。2022年度関東高校サッカー大会埼玉県予選は27日、準決勝を行い、第2試合では成徳深谷高武南高が激突。武南が2-1で勝ち、2019年度、2021年度に続いて3大会連続(2020年度大会は中止)となる関東大会進出を決めた。武南は30日の決勝で正智深谷高と戦う。

 2018年度大会の優勝校・成徳深谷は3-5-2システム。GKは木村航大主将(3年)で右から小久保伊吹暉(2年)、増子颯竜(3年)、辻本晴也(3年)の3バック。右WB安野心富(3年)、左WB尾澤大成(3年)、ダブルボランチが松田陽瑠(3年)と高橋流(3年)、トップ下が和光翔夢(3年)、2トップに清家瑠(3年)と平井心瑛(2年)が構えた。

 一方、最多17度の優勝を誇る武南は4-2-3-1システム。GKが内藤聖(3年)で、4バックは右SB江川颯軌(3年)、CB鈴木翔汰主将(3年)、CB重信有佑(3年)、左SB加藤天尋(3年)。山田詩太(3年)と森田颯(3年)のダブルボランチでトップ下が21年U-16日本代表候補の10番MF松原史季(2年)、右SH櫻井敬太(3年)、左SH山田藍大(3年)、1トップを杉沢旭浩(2年)が務めた。

 立ち上がりの攻防が試合の流れを大きく左右した。鈴木が「(昨年は大事な試合で)入りで点を取られちゃうというのが多かったので、絶対に入りで失点しないで、自分たちの流れを作って(ボールを)収めていく。きょうは入りが良くて、みんな『勝つぞ』、という気持ちがあったので、気持ちで飲み込めたかなと思います」と振り返ったように、武南が序盤から押し込むことに成功する。

 成徳深谷の為谷洋介監督は「ウチがああいう前半の入り方をしたかった。相手の方がゲームに入る意識が高かったです」と残念がる。武南は前へのパワーがある成徳深谷の攻撃をヘディングが強みの鈴木と対人能力高い重信中心に跳ね返し、セカンドボールを拾ってアタック。山田藍、杉沢、森田とどこからでも仕掛けられる強みも活かして主導権を握った。

 成徳深谷は我慢強く守り、セットプレーの数を増やそうとしていたが、思うような展開に持ち込むことができない。武南も成徳深谷のコンパクトな守りの前に、狙いとするサイドチェンジの数を増やすことができていなかった。それでも30分、武南は相手のロングボールを跳ね返したところから速攻。松原がDF背後へ絶妙なラストパスを送ると、杉沢が右足ダイレクトでゴールへ突き刺した。

 畳み掛ける武南は32分、山田藍のカットインシュートが右ポスト直撃。成徳深谷は後半開始から左WBに鈴木嵐(2年)、FWに秋本光瑛(2年)を送り出す。平井を起点に押し込もうとするが、後半もセカンドボールを繋がれて守勢となってしまう。武南は山田詩や松原の好パスも交えて攻めると、10分には森田のカットインシュートが右ポストを叩く。

 仕掛けてチャンスを作り出していた武南だが、内野慎一郎監督は全く満足していなかった。幅を十分に活用することができず、攻めて、跳ね返され、また攻め直すことの繰り返しに。「悲観的にならずに自分たちでやろうやろうとしていたけれど、空回りしてしまった部分があった」と指摘。昨年からの先発を半数以上残す武南は経験値の部分でも相手との差に繋げていたが、ベースとするパス回しの部分で課題を残す内容だった。

 辛抱強く守る成徳深谷もチャンスを作り出す。1後半2分、鈴木の左クロスに平井が身体ごと飛び込む。なかなかシュートまで行けない中でもGK木村が好守を続け、増子のカバーリングや松田、高橋のサポートする動きなど崩れずに守り、チャンスを待ち続けていた。

 武南は後半17分にFW山本昇汰(3年)を投入し、成徳深谷もFW片山樹(3年)とMF佐々木颯太(3年)を相次いでピッチへ送り出す。勝負の終盤、次の1点を奪ったのは武南の方だった。

 後半26分、武南はバイタルエリアでボールを受けた松原が左前方の杉沢へパス。テンポ良く杉沢が繋ぐと、最後は「相手が食いついてきていたので、自分の得意なキックフェイントをしたらGKも逆突いて絶対に決めれるなと自信があった。落ち着いて流し込めました」という山本が切り返しからの左足シュートで2-0とした。

 相手の運動量がやや低下したこともあり、武南は幅を使った攻撃も増加。そして、終盤にFW渡辺崚太郎(3年)、左SB高橋秀太(2年)を投入したものの、SBの背後を突かれるなど押し返され、成徳深谷の佐々木に切れ込まれるシーンもあった。諦めずに攻める成徳深谷は後半38分、高橋の右CKを増子が高打点ヘッド。クロスバーを叩いた後の混戦から秋本が押し込む。増子のヘッドの時点でゴールラインを越えていたという判定となったが、執念のゴールで1点差とした。

 成徳深谷は40+3分にも再び右CKから増子がドンピシャヘッド。だが、ボールは枠上へ外れ、武南が決勝進出を決めた。武南の内野監督は空中戦の守備の出来や立ち上がりに失点しなかったことを讃えた一方、「後半向こうが運動量落ちてきた時にちょっとずつできてきたけれど、内容としては……。(強みであるパスワークの部分が)希薄になっている」と厳しい。課題の立ち上がりで主導権を握り、相手のパワーに飲み込まれずに跳ね返したことなど良かった部分を継続し、課題を改善して決勝や関東大会、その先の戦いへ向かう。

(取材・文 吉田太郎)

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