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[MOM3826]横浜FMユースFW内野航太郎(3年)_5戦7発にも満足しない生粋のストライカーは「結局、内野かよ」を重ね続ける

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相手ゴールに迫る横浜F・マリノスユースの絶対的ストライカー、FW内野航太郎

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[5.1 プレミアリーグEAST第5節 柏U-18 1-2 横浜FMユース 日立柏人工芝]

 そのゴールの瞬間。試合をピッチの外で見つめていた相手チームの選手から、こんな言葉が聞こえてきた。「結局、内野かよ」。そのフレーズが、このゲームを観戦していた人々の想いを過不足なく表わしていたことは間違いない。結局、内野なのだ。

「相手からそう言ってもらえるのは一番嬉しいですね。こうやって記録に残り続けていれば、相手の記憶にも残ると思いますし、どのチームにも『内野、嫌だな』『アイツは抑えられないな』という存在になっていきたいです」。

 どれだけ得点を重ねても、満足なんてするはずがない。未来のトリコロールを担い得る圧倒的なストライカー。横浜F・マリノスユース(神奈川)が誇る点取り屋。FW内野航太郎(3年=横浜F・マリノスジュニアユース出身)は「結局、内野かよ」と言われる結果を、これからも叩き出し続けていく。

 チャンスはあった。雨の中の一戦となった柏レイソルU-18(千葉)と対峙するアウェイゲーム。前半32分にはFW磯ヶ谷佳心(3年)との連携から抜け出すも、マーカーの捨て身のタックルにシュートは打ち切れず。後半32分にもやはりフィニッシュシーンを迎えたが、相手のブロックに阻まれる。もちろん横浜FMユースの最警戒人物だ。そう簡単に仕事をさせてもらえるはずもない。

 それでも、この男は一刺しですべてをさらっていく。43分。磯ヶ谷のパスから右サイドを内野が抜け出す。ファーストタッチが少し流れたものの、そのままドリブルで突っ込むと、GKともつれたボールは、再び9番の足元にその行方を選ぶ。「正直気持ちが生んだゴールだと思います。ゴールに対する執着心は誰よりも持っていますし、そこが自分の一番強いところなので、この1週間の準備が実を結んでくれました」。最後は1点を返されたものの、内野のゴールが決勝点に。ストライカーの一撃が、チームの連敗ストップを手繰り寄せた。

『1週間の準備』というフレーズには理由がある。前節の川崎フロンターレU-18(神奈川)戦では、前半に自身で先制点をマークしたものの、結果的にそこから3失点を喫しての逆転負け。その責任を感じた内野は、練習からチームメイトとやるべきことを共有していたという。

「フロンターレ戦ではなかなか自分のところにボールが入らない時間帯があって、それで悪い流れになってしまったので、まずは自分の背後に呼び込むというところで、1週間チームメイトに『自分を見てくれ』と声を掛けてきました」。有言実行。背後へのランニングは最終盤に実る。それが『結局、内野かよ』のゴールに繋がったというわけだ。

 既にトップチームの練習にも参加しているが、そこで得た課題と収穫は自身の中でさらなる向上心に結び付いている。「プレーの連続性や守備の時の運動量が自分と全然違いますし、戻るところはグッと戻りますし、そういうところが足りないのと、シュートの振りがまだ甘いなと感じました。右足だったら自分も負けていないと思うんですけど、左足のシュートで考えると、まだまだだなって。トップには外国籍選手が多くて、アンデルソン・ロペス選手やレオ・セアラ選手と比べると、自分がそこに食い込むにはもっともっとやっていかないといけないと感じています」。

「でも、アンデルソン・ロペス選手とレオ・セアラ選手にも負けていないところが自分にはあると思いますし、高校年代ではフィジカルも売りにしてやっていますけど、彼らと比べてもそこで優位に立てないのであれば、ゴール前でボールに入った時のクイックネスをもっと出したり、フィジカル以外のところでプラスアルファを出していかないとああいう選手には勝てないと思うので、そこはずっと意識してやっています」。自己分析もバッチリ。より高みを目指す上で、超えるべき存在も明確だ。

 ここまでのプレミアでは全試合でゴールを重ねているが、それすらも納得のいく数字とは言い切れないようだ。「5試合で7得点と聞いたら良く聞こえるとは思うんですけど、正直“分母”が多いですし、チャンスもチームメイトに去年からたくさん作ってもらっているので、まずはチームメイトに感謝したいです。自分はそこを決められなくなったら価値がなくなると思っているので、そこは本当に何点獲っても満足できないですし、何点でも多く獲れるようにやっていきたいです」。

 獲れる得点は、すべて獲る。その仕事を運命付けられた生粋のストライカー。内野はただひたすらにゴールだけを見据えて、自らの未来を自らの結果で切り拓いていく。

(取材・文 土屋雅史)

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