beacon

シーズンを通して引き分け、敗戦の後は必ず勝利。最終節でも強さを示した青森山田がプレミアEAST制覇!

このエントリーをはてなブックマークに追加

青森山田高が2年ぶりにプレミアリーグEAST優勝

[12.3 高円宮杯プレミアリーグEAST第22節 FC東京U-18 0-2 青森山田高 東京ガス武蔵野苑多目的G]

 高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2023 EASTは3日、最終節を行い、青森山田高(青森)が2年ぶり4回目の優勝を果たした。勝てば優勝の決まる首位・青森山田は、アウェーでFC東京U-18(東京)と対戦し、2-0で勝利。12月10日のプレミアリーグファイナル(埼玉)で“U-18年代の真の日本一”を懸けて広島ユース(広島)と戦う。

「優勝チームの強さ」を最終節で示した。青森山田は前節まで15勝3分3敗の成績。だが、引き分け、敗戦の次の試合では必ず勝利してきた。正木昌宣監督は「実は連敗とか連続で引き分けたとかなくて、『優勝するチームは連続で失敗は絶対にダメだよ』と言い続けていた」という。青森山田は一週間前、勝てば優勝だった昌平高(埼玉)戦でドロー。だが、今シーズン続けてきた「連続で失敗しない」ことを最終節で再び表現し、優勝を決めた。

 対戦したFC東京U-18は、U-17ワールドカップで抜群の動きを見せたU-17日本代表の10番MF佐藤龍之介(2年)やU-17日本代表MF永野修都(2年)、トップ昇格のU-19日本代表GK小林将天(3年)らが先発。彼らにとってもシーズン最終戦で特別な試合だった。

 小林が「(優勝のかかる青森山田がフルパワーで来るのは分かっていたが、)自分たちは同じ、それ以上のテンションでいけないといけない中で、自分たちの中で士気を上げていったのはありますね」と説明したように、試合前から集中力高く準備していたFC東京U-18が勢い良く試合に入る。

 佐藤や右SB金子俊輔(2年)が立ち上がりから鋭く前へ出る動き。右サイドを突破した金子のクロスをU-17日本代表FW山口太陽(2年)が折り返し、佐藤がフィニッシュするシーンもあった。

 立ち上がりはボールを保持された青森山田だが、連動したプレッシングで押し返し、左SB 小沼蒼珠(2年)の力強いインターセプトからFW米谷壮史(3年)が左足シュートを放つなど相手ゴールへ迫る。そして15分、青森山田は小沼の右ロングスローを190cmCB小泉佳絃(3年)が頭でそらす。米谷が狙ったこぼれをMF福島健太(3年)が右足でゴールへ蹴り込んだ。

 青森山田のトップ下として先発を続けた福島が、最終節でリーグ戦初ゴール。フィールドの先発メンバーで唯一得点のなかったMFが、大一番で大きな1点をもたらした。この後も青森山田攻勢の時間が続く。「春先よりも良くなっている」(正木監督)という前からの守備で相手に前進することを許さず、敵陣でCB山本が頭から飛び込んでクリアするシーンも。高い位置でボールを奪って速攻へ持ち込んだ。

 18分にはMF川原良介(3年)のスルーパスから米谷が左足を振り抜き、22分には右クロスから福島が決定的なヘッドを放つ。だが、福島の一撃は相手GK小林に反応され、こぼれ球を福島が左足で狙うもクロスバーをヒット。追加点を奪えなかったものの、10番MF芝田玲(3年)が相手のドリブル突破を個の力で止めたほか、小泉やMF菅澤凱(3年)が幅広くカバーリングする。38分、FC東京U-18は永野が鋭い反転で左サイドを突破。ラストパスをMF岡崎大智主将(3年)が左足ダイレクトで狙う。だが、青森山田GK鈴木将永(3年)が素晴らしい反応で阻止する。

 FC東京U-18も気持ちの込もった戦い。MF伊藤ロミオ(3年)のダイナミックな守備などで踏ん張っていた。だが、青森山田は41分、米谷との左ショートコーナーから芝田が右足クロス。これをニアの右SB小林拓斗(3年)が頭で逆サイドのネットへ流し込んだ。

 2-0。後半立ち上がりは再びFC東京U-18が攻勢に出たが、青森山田はGK鈴木の身体を張った守備などで追撃を許さない。だが、青森山田も次の1点が遠かった。11分に芝田の右足FKが左ポストをヒット。また、前線で存在感ある動きを見せていた米谷の至近距離からのヘッドをFC東京U-18GK小林に止められてしまう。その米谷やMF杉本英誉(3年)が鋭くゴールへ迫るなど、シュート数は相手の5本を大きく上回る13本。だが、勝負の行方を決定づけることができなかった。

 それでも、青森山田は後半に選手同士で会話することや連動して戦うことをより意識。そして、ボールを奪うこと、勝つことへの執着心の強さも見せ続けた。後半38分に相手MF佐藤の突破からMF吉田綺星(3年)に放たれた一撃もクロスバー。小泉が身体を投げ出し、小沼や山本がゴールをカバーすることでシュートコースを限定していた。

 優勝して青森に帰ることだけを目指してきた。この一週間、青森は積雪。サポートメンバーたちは雪かきして練習環境を整えてくれた。山本は「自分たちが練習するために本当に仲間が2時間くらい雪かきをして、自分たちだけ練習して他の仲間たちはできない。感謝の気持ちがありました。先週、仲間たちがテレビで見ている中で優勝を決められなかった。雪かきしてくれたり、応援してくれる仲間のために今週勝って決めようという話をしていたのでホッとしています」。交代出場したMF後藤礼智(3年)とFW津島巧(3年)を含めて最後まで献身的な戦い。正木監督も「GKのファインセーブもあり、相手のシュートがバーも。(だが、相手に)プレッシャーを掛け続けている結果だと思うので、理想の形で勝てたと思います」と語ったように、“堅守・青森山田らしく”無失点で優勝を決めた。

 昨年度まで青森山田を29年間指導した黒田剛前監督が、町田ゼルビア監督へ転身。昨年11月に正木監督が就任したが、新指揮官の下で1年間を戦うのは今年が初めてだった。だが、就任1年目で町田をJ2初優勝、J1初昇格へ導いた黒田前監督からも刺激を受けながらチームは成長。今年初めて観戦に訪れた恩師も、「(3年生の姿を久しぶりに見て)力強くなっているなと感じた。身体も一回り大きくなっている。出足も素晴らしかったし、ボールを奪い合うところは山田のボールになっていた」と評する戦いで勝利を収めた。

 その黒田前監督も期待したプレミアリーグファイナルでの勝利。埼玉スタジアム2002で開催されるファイナルへ向けて、芝田は「こっちの土俵に持ってくるのが青森山田的には一番大事なので、埼玉スタジアムはずっと目指してきた場所ですし、そこを思う存分発揮できたらなと思います」と力を込めた。ここからプレミアリーグファイナル、選手権5試合を勝ち続けることが青森山田の目標。正木監督は「良く(黒田)監督が言っていたように。『最後まで成長しよう』と良く言っていたので、あと1か月、より良いものにして終われればと思います」。新生・青森山田は、“青森山田らしく”選手権決勝の日まで成長を続け、2冠を勝ち取ってシーズンを終える。

(取材・文 吉田太郎)

●高円宮杯プレミアリーグ2023特集
吉田太郎
Text by 吉田太郎

TOP