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最終日に「音が全然違う」ほど変わった球際の強度。「地域トレーニングキャンプ関西U-17」で体感、学んだ高校2年生が全国での活躍、個人昇格に繋げる

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「2023地域トレーニングキャンプ関西U-17」最終日は左SB沖村大也(東山高2年、右)らが強度の高い動きを継続

 関西の有力な高校2年生選手によって構成された「2023地域トレーニングキャンプ関西U-17」が、16日と17日の2日間、J-GREEN堺で行われた。17日は2チームに分かれて紅白戦(30分×3本)を実施。“世界基準”を学んで活動を終えた。

 今回の活動にはJFAや都道府県の担当コーチ陣に加え、U-16日本代表の廣山望監督も帯同。初日の練習試合後に2度のミーティングが行われ、廣山監督がU-17日本代表コーチとして参加したU-17ワールドカップの映像や関西U-17の練習試合の映像を見ながら選手たちと考えを共有したという。

 U-17ワールドカップで日本が対戦したアルゼンチンやナイジェリア、スペインの基準を確認。日常から「本気でボールを奪うこと」を意識し、強度や予測力を変えなければ世界相手にボールを奪うことも、ボールを守ることもできない。日本が世界で学び、再確認した「(今後の育成において)本気でボールを奪うこと」の重要性を選手たちも理解。廣山監督が「意識変えて守備の出力を変えるだけで、だいぶゲームの攻守、強度が変わってくる」と話す通り、この日の紅白戦は立ち上がりから球際で「良かったですね。(球際での)音が全然違う」(廣山監督)というほどの戦いが見られた。

 ビブス青とビブスピンクに分かれた行われたゲームでは、「やっぱり、廣山さんから言われて、より強度を増した部分とかもありました」というチーム青の左SB沖村大也(東山高2年)が立ち上がりから非常に強度の高い動き。彼やインターセプトを連発するなど攻守にワンランク上のプレーを見せていたMF福本一太(阪南大高2年、チーム青)を筆頭に、各局面で前日の練習試合とは明らかに違う強度や、切り替えの速さが表現されていた。

 チームピンクのナイジェリアからの留学生FWディビッド・ローレンス(福知山成美高2年)の存在も各選手に及ぼしていた好影響。日本語で「(ハートの強さは)全然負けていない。負けない」と語るディビッドのボールへの執着心、ハングリー精神をピッチ上で体感した各選手は負けずに渡り合っていた。

 試合はチーム青が快勝した。序盤から攻守に勢いのある戦いを見せるチーム青に対し、チームピンクはCB國岡俊哉(興國高2年)や右SB阪上聖恩(神戸弘陵高2年)のカバーリングで凌いで攻め返す。だが、チーム青はダブルボランチの福本とMF坂上宗太郎(桃山学院高2年)がインターセプトを連発し、攻撃参加。前線でボールを収めるFW太仁紫音(大谷高2年)と一際ゴールへの意欲を感じさせるFW増井那月(京都橘高2年)、そして左サイドの沖村、MF木村有磨(履正社高2年)が攻撃を加速させる。

 17分にMF久松大耀(興國高2年)がドリブルからクロスバー直撃の右足ミドル。直後には久松のインターセプトからPAへ抜け出した増井が右足ループシュートでゴールネットを揺らした。

 さらにチーム青は、27分にも増井のラストパスから久松が決めて2-0。チームピンクはMF河崎慶二(初芝橋本高2年)の折り返しからFW山下ハル(東山高2年)がクロスバー直撃の右足シュートを放つ。だが、クレバーな守備を続けるCB黒瀬直弥(三田学園高2年)中心に堅いチーム青のゴールを破ることができずに0-2で1本目を終了。2本目、チーム青がさらに差を広げる。

 10分、前日のびわこ成蹊スポーツ大戦で2ゴールの太仁が自らのシュートのこぼれを頭で押し込み、3-0。15分には敵陣中央の太仁が右前方へパスを通すと、ボランチの位置から駆け上がっていた福本が右足ダイレクトでゴール左隅へシュートを突き刺した。19分にも太仁の落としから、右中間の福本が対角の右足シュートを見事に叩き込んで5点目。さらに坂上を起点に太仁が再び決めて6-0とした。

 3本目に入ると、立ち上がりほどの強度を持続できなかったことは確か。それでも、チーム青は貪欲にゴールを目指し続け、13分に増井が加点する。その後もチーム青はMF寺川康正(草津東高2年)、MF的場勇人(興國高2年)らがボールを前進させてMF高畑宗希(近大附高2年)や増井がシュートを連発。対して、GK重田和真(大阪産大附高2年)の好守などで踏ん張ったチームピンクも反撃する。

 だが、チーム青はディビッドのシュートを黒瀬とCB嵜山仁(近大和歌山高2年)が2人がかりでブロックしたほか、声を発し続けるGK山崎晃輝(近江高2年)、右SB倉島正行(奈良U-18)、左SB沖村を含めて集中力を切らさない。チームピンクは27分にMF井田琉汐(神戸弘陵高2年)のスルーパスからディビッドが1点をもぎ取ったが、チーム青が7-1で快勝した。

 U-16代表の廣山監督は高校2年生の才能たちがこの日以上の強度を日常から意識して続けることを期待する。「続けられるか、ですね。(2日間の経験で)自分で『やっぱり、これじゃダメだ』って思ってやる選手が増えてくれば」。これに対し、福本は「(今日対戦した)ディビッドやったり、世界はやっぱりもっと凄い人が多いんで。昨日、U-17ワールドカップのスペインとか見たら、やっぱ全然違ったんで、基準を上げないといけないなと思います」。近年の関西勢では22年度の東山高(京都)と23年度の近江高(滋賀)が選手権準優勝。この2日間で体感、学んだことを意識して日常に取り組み、全国舞台での活躍や個人昇格に繋げる。

MF福本一太(阪南大高2年)は攻守で違いを見せるなど2得点

選手たちは「2023地域トレーニングキャンプ関西U-17」から飛躍を目指す

(取材・文 吉田太郎)
吉田太郎
Text by 吉田太郎

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