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「未来を描く試合」を重ねた先にある、まだ見ぬ景色を目指して。帝京長岡は鳥栖U-18相手に3発快勝でホーム連勝を飾る!

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帝京長岡高は3発快勝でホーム連勝を飾る!

[4.29 プレミアリーグWEST第4節 帝京長岡高 3-0 鳥栖U-18 長岡NT]

 まだ4試合を経験したに過ぎないけれど、もうハッキリとわかったことがある。このリーグで戦い続ければ、絶対にみんなが強くなるし、みんなが上手くなる。しかもこんなに多くの人々が自分たちのサッカーを見に来てくれるのだから、力が湧いてこないはずがない。

「本当に高校年代の最高峰のリーグに所属させてもらっていて、毎週末が全国大会みたいな感じなので、モチベーションは全員が間違いなくありますし、週末のために平日の厳しい練習を積んでいくしかないということはみんなわかっていると思うので、苦労は買って出るじゃないですけど、しんどいトレーニングにも自分から飛び込んでいく感じかなとは思っています」(帝京長岡高・山本圭晋)。

 2年ぶりの王座奪還を目指す難敵相手に、3発を叩き込んでホーム連勝!29日、高円宮杯 JFA U-18サッカープレミアリーグ 2024 WEST第4節で、帝京長岡高(新潟)とサガン鳥栖U-18(佐賀)が激突した一戦は、前半にFW柳田夢輝(3年)とFW安野匠(3年)のゴールで2点をリードした帝京長岡が、後半にもMF遠藤琉晟(3年)が追加点をマークし、3-0で勝利。2週間前の神村学園高(鹿児島)戦に続いて、ホームでの連勝を飾っている。


「試合前から裏のスペースを取ろうという話はしていたので、そこをうまく突きながら、セカンドボールを拾って、バランス良くポジションを取って、押し込めたかなと思いますね」とキャプテンのDF山本圭晋(3年)が話したように、立ち上がりからゲームリズムを掴んだのは帝京長岡。2トップの柳田と安野が攻守に走り、中盤では遠藤とMF香西大河(3年)がセカンド回収を含めてボールを握れば、右のMF和食陽向(1年)、左のMF水川昌志(3年)と両サイドハーフも積極的にチャンスメイク。ペースを力強く手繰り寄せる。

 すると、勢いそのままにスコアを動かしたのは23分。右サイドで相手を押し込み、和食が思い切り良く打ったシュートはDFに弾かれるも、拾ったMF池田遼(3年)が残したボールを安野は強引にシュート。ここに「安野はオーバーヘッドとかも普通にやってくるヤツなので、『シュート打つんかな』みたいに思っていました」と反応した柳田がプッシュしたボールは、ゴールへと吸い込まれる。「3節まで点が獲れていなくて、それが一番悔しかったので、メチャクチャ嬉しかったです」と笑った10番の先制点。ホームチームが1点のアドバンテージを手にする。

 続いた緑の歓喜は、わずかに3分後の26分。ドイスボランチでのパス交換から、遠藤は右へ展開。待っていた和食が丁寧に上げたクロスに、飛び込んだ安野がダイレクトで合わせたシュートは、左スミのゴールネットを確実に捕獲する。「サイドからのワンタッチシュートを意識しようという形を今日も体現できたのかなと。スーパーなゴールでしたね」と古沢徹監督も納得の一撃。帝京長岡の勢いが止まらない。

「相手が前から強くハメてくることは映像で見てわかっていたんですけど、そこに慣れなくて、自分たちのリズムでできていなかったですね」と10番を背負うFW鈴木大馳(3年)も言及した鳥栖U-18は、小さくないビハインドを追い掛ける展開に。37分にはMF池田季礼(2年)の左FKに、ファーで合わせたDF池末徹平(3年)のヘディングはゴール右へ。43分にも池田が蹴った右CKから、FW新川志音(2年)が枠へ収めたシュートは、帝京長岡のGK小林脩晃(3年)がファインセーブで回避。最初の45分間は2-0で終了した。


 試合の流れを決める次の1点も、ホームチームが奪う。後半6分。遠藤が頭で残したボールから、安野が左サイドをゴリゴリと前進しながら、エリア内へ突入。相手ディフェンスも懸命に対応したものの、こぼれに詰めた遠藤は右足一閃。強烈なシュートがゴールネットへ突き刺さる。「試合前からゴールを決めたいとは思っていた」という地元出身のダイナモがプレミア初ゴール。点差は3点に広がった。



 田中智宗監督も「『なんか合ってないな』というか、テンポも上がらなかったですし、ウチがやりたいことをやらせてもらえなかった印象です」と口にした鳥栖U-18は、攻撃的なカードを投入しながら鈴木や新川、MF山村チーディ賢斗(2年)の推進力を生かして反撃体制を整えるも、16分に新川が放ったシュートは右ポストに、39分にも池田の右CKにDF岩村淳之介(2年)が合わせたヘディングはクロスバーにそれぞれ弾かれ、1点が遠い。

 帝京長岡は右からMF永井仁之(3年)、DF下田蒼太朗(3年)、山本、池田と並んだ4バックを中心に、守備陣も集中を途切らすことなく、相手の強力アタッカー陣に対抗。「あれだけ守備の帰陣のスピードも徹底してできれば、そう簡単にはやられないと思うので、この90分間の中でさらに成長してくれている感覚ですね」と古沢監督も手応えを口にするパフォーマンスを貫いてみせる。

 ファイナルスコアは3-0。「自分たちの良さを完璧に消されて、なおかつ相手の良さを前面に出された試合だったかなと感じます」と鳥栖U-18のキャプテン、MF森夲勢那(3年)も認めるゲーム内容で、帝京長岡がホーム連勝を会場に詰め掛けた1,100人の観衆とともに喜び合う結果となった。



 6度目の挑戦となる昨年末のプレーオフを逞しく勝ち抜き、とうとう悲願のプレミアリーグ昇格を達成。今シーズンから高校年代最高峰の舞台へと乗り込んできた帝京長岡にとって、前年王者に0-2で敗れた開幕戦は、明確な基準を突き付けてくれたという。

「最初にサンフレッチェ(広島ユース)とやれて、去年の王者の力を経験できたのは大きかったですね。プレミアの強度とか、そういう部分は凄く感じられましたし、そこからここまで修正してこれたのは良かったと思います」(柳田)

 第2節の神村学園戦は、攻撃陣が爆発して4-0と完勝。前節はアウェイで米子北高(鳥取)に「米子さんの縦に速いサッカーと同じになってしまって、別にリズムは悪くないのに、自分たちの中で悪い感覚になってしまって」(古沢監督)1-2で惜敗。迎えたこの日の一戦は好ゲームを披露して3-0で勝利。結果と内容の両面で一進一退を繰り返す中で、広島ユースが施してくれた貴重な『90分間のレッスン』は、間違いなく今季の帝京長岡を構成する絶対的な“モノサシ”になっていくはずだ。

「プレミアではもう1試合1試合が全国大会のベスト4以上みたいなレベルの試合が続くので、『結果的に残っていたいな』というような気持ちではたぶん落ちてしまいますよね」と語った古沢監督が、続けて教えてくれたチームの“新たな目標”が興味深い。

「広島に一発目の試合で叩かれた分、ホームでやれる“9月1日”にとにかくリベンジしようと。そこまで負けずに行けば、シックスポイントマッチで、そこで何とか噛み付けるから、選手たちにも『未来を描く試合を』と言っているんですけど、どこかで掴む試合が来るから、そこまでとにかく練習を頑張ろうと話しています」。

「選手たちもかなりハードに練習をやってくれるので、そういった意味ではチャンピオンを獲る気でやって、結果獲れなかったとしても自ずと残留できていれば、来年またそこにチャレンジできるのかなって。まあ、想いはありますけど、手応えはないです(笑)。1試合1試合、綱渡りという感じですね」。

 きっと帝京長岡の選手たちにとっては、今の自分たちが歩いているプレミアリーグという名の“綱”は、細くて頼りなく感じているかもしれない。だが、勝利と敗戦を繰り返し、嬉しさと悔しさを繰り返しながら、その上を渡り続けていくことが日常になれば、いつしか同じ場所を歩いていても、その“綱”には思った以上の幅があり、確かな強さがあることを実感する日が来るはずだ。

 指揮官が表現した『未来を描く試合』の連鎖の先にあるのは、選手たちが、スタッフが、そしてチームがまた見たことのない景色。おそらくは今の彼らが向かっている“9月1日”も、1つの通過点。2024年の帝京長岡がみんなで描いていく未来の先に待っているものは、果たしていかに。



(取材・文 土屋雅史)

●高円宮杯プレミアリーグ2024特集

土屋雅史
Text by 土屋雅史

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