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[MOM4739] 湘南U-18MF中村龍(1年)_スーパールーキー、躍動!1年生ボランチが1ゴール1アシストで全国切符獲得の主役をさらう!

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1ゴール1アシストで勝利の主役をさらった湘南ベルマーレU-18MF中村龍(1年=VIVAIO船橋SC出身)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[6.9 日本クラブユース選手権関東予選3代表決定戦3回戦 東急SレイエスFC U-18 1-2 湘南U-18 拓殖大学G]

 その醸し出す存在感は、1年生のそれではない。周囲も認める才覚はハッキリとした結果に結び付く。負ければ終わりという、とにかく大事な試合でゴールとアシストを叩き出し、主役の座をさらってしまうのだから、何とも末恐ろしい。

「まずチームで勝つことはもちろんですけど、自分にとっても一番良い経験になるような大会にしていきたい想いはありますね。まだこれから全国大会に向けて、メンバー争いもありますし、入れ替えも全然あると思うので、まずそこを勝ち抜いてスタメンで出て、良い結果を残せるように頑張っていきたいと思います」。

 湘南ベルマーレU-18(神奈川)をボランチの位置で支えるスーパールーキー。MF中村龍(1年=VIVAIO船橋SC出身)の2得点に絡む鮮やかなパフォーマンスが、崖っぷちのチームを全国の舞台に力強く導いた。


 試合の動画を撮影しながら、カメラ越しにピッチに立つ先輩たちの姿を見つめていた。この日の前日。クラブユース選手権関東予選の3代表決定戦2回戦。横浜F・マリノスユースとの一戦に、その前の週にケガを負っていた中村は出ていない。結果的にはPK戦の末に負けたものの、“撮影係”から見てもチームの雰囲気は決して落ちていなかったという。

「『これで行ける』となってからのPK負けだったので、少し気持ちも落ちるかなと思ったんですけど、『全然明日でしょ』というような、先週のようなモチベーションがあったので、自分もそれに乗り遅れないようにという想いもありましたね。今週はケガもあって平日はあまりチームの練習に合流できなかったので、その不安もあったんですけど、トレーナーの方もしっかり見守ってくれましたし、今日は『思い切りやってこい』と言われました」。全国大会出場権獲得のラストチャンス。東急SレイエスFC U-18との決戦に、中村はスタメンとしてまっさらなピッチに送り出される。

 いきなりそのセンスを発揮したのは前半14分。相手陣内で前を向くと、通すべきパスコースを一瞬で見つけ出す。「常に寺下くんのところを見てはいたんですけど、良いタイミングで動いてくれたので、自信を持ってパスができました。『任せた』という感じでしたし、『あそこなら絶対に決めてくれるだろう』と思っていました」。届いたボールをFW寺下翔和(3年)は冷静にゴール。1年生ボランチが先制点を演出してみせる。

 ただ、試合はそう簡単に進まない。22分に失点を許し、スコアは振り出しに。それでも「こういう展開はK1(神奈川県1部)リーグでもよくあったので、そんなに焦らないで落ち着いて、自分たちがいつも練習をやっているプレーをしていこうと思っていました」と中村。このあたりのメンタルにも大物感が漂う。

 後半7分。携えた得点感覚が発動する。左サイドをMF山崎翔流(3年)が駆け上がると、何となく“少し未来”の映像が頭の中に思い浮かぶ。「そこまであまり点を決める感じはしなかった中で、翔流くんが左サイドを駆け上がって、自分は『こぼれが来たらいいな』という感じでした」。目の前にボールが来る。もうシュートを打つしかない。

「ゴール前でしたし、『あとは打つだけだ』と思って、思い切り振り抜いたら良い感じに相手に当たって、ゴールに入りました。選択肢はシュートだけでした。もう嬉しすぎて、覚えていないです」。ゴールに収まったボールを確認すると、応援し続けてくれたチームメイトたちの元へ走り出す。

 結果的にこの中村の1点が、そのまま決勝ゴールに。「昨日のゲームはちょっと傷めていて出られなかったんですけど、今日は『できる』ということだったので、思い切って使いました、1年生ですけど周りも見えますし、スルスルと上がってゴール前まで行けるのも彼の強みだと思うので、ナイスゴールでした」と平塚次郎監督も賞賛した34番の1年生が、超重要な一戦のヒーローを逞しく担ってみせた。





 中学時代は千葉のVIVAIO船橋SCでプレーしており、U-15日本代表候補にも選出されてきた中村が進路として選んだのは、神奈川のJクラブアカデミーだった。「VIVAIOはドリブルのチームだったんですけど、自分はパスも使っていくようなスタイルだったので、そういう自分のプレースタイルを凄く認めてくださって、『このチームに入って活躍して、プロになりたいな』と思ったので、ベルマーレを選びました」。

 シーズン開幕後は少しケガで出遅れたものの、5月過ぎからはコンスタントに試合出場を重ねており、「前への推進力という部分で、ドリブルは誰にも負けない自信がありますし、声掛けのところでもチームを鼓舞していくことは自分が得意としてやってきたことです」という自身の持ち味を着実にチームへ還元し始めている。

 初めての寮生活もすぐに馴染むことができたという。「3年生が凄く優しくて、ストレスなく過ごしているので、本当にありがたいなと思いますし、良い生活を送れています」という中村に対して、2つ年上の先輩であり、同じ寮生でもある寺下は「メッチャやってくれますし、攻撃センスもあって、本当に頼もしい1年です。寮でも一緒に生活していますけど、マジでいいヤツです。日常生活でもマジメですよ」と笑顔で言及。すっかりチームの一員として認められているようだ。

 湘南U-18出身のボランチと言えば、今は日本代表のキャプテンを務めている“大先輩”が思い浮かぶが、中村ももちろんその存在は意識している。「遠藤航さんは本当に意識しています。ああいう大舞台で自然にやれているのは凄いなと思いますし、凄く参考になりますね。ただ、自分は攻撃的な選手なので、もっと攻撃の良さが生かせるようにしていきたいなと思っています」。それでも、人は人、自分は自分、という意志が垣間見えるあたりも頼もしい。

 この日の活躍で奢ってしまうようなメンタルは、そもそも持ち合わせていない。「今日のゴールは嬉しかったですけど、それで一喜一憂はしないですね。この経験をもとに、常に一発は狙っていきたいなという想いはありますし、もっとチームの中で重要な選手になれるように頑張りたいと思っています」。まだまだ自分は成長の過程。常に“これから”が重要だということも、もうこの若者はとっくにわかっている。

 湘南を勝負の地に選んだ15歳の新星。重要なゲームで活躍する星を感じさせる高校1年生。中村龍が緑と青のユニフォームを纏って紡いでいくストーリーは、まだまだ始まったばっかりだ。



(取材・文 土屋雅史)
土屋雅史
Text by 土屋雅史

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