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[高校新人戦]選手権4強・矢板中央、主力半数不在も貫禄の逆転勝ち

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[1.30 栃木県高校新人大会3回戦 矢板中央 4-1 烏山 矢板中央G]

 第88回全国高校サッカー選手権で栃木県勢として24年ぶりとなる4強へ進出した矢板中央が30日、新チームの公式戦初戦となる平成21年度栃木県高校サッカー新人大会3回戦で烏山と対戦。FW堀越龍也(2年)のハットトリックの活躍などにより4-1で勝った。

 選手権でチームの歴史を塗り替えた矢板中央が貫録の逆転勝ちだ。新チーム初戦のメンバーはGKが斉藤夕希也(1年)でDFが山越康平、高橋直也、塩田貴大(いずれも1年)→柴田弘規、阿久津貴紀(ともに2年)。中盤は渡辺裕紀主将、金子一輝(ともに2年)→田畑喜行(1年)、水戸隆靖(2年)、菊地夏輝(1年)、FWが堀越と阿部潤(2年)→吉澤功三郎(1年)の布陣。選手権で活躍した“栃木の若島津”ことGK三浦拓(2年)が左手小指の剥離骨折(準々決勝には出場予定)、また同じく選手権で輝きを放った渡辺光、島野一也、螺良圭佑(いずれも2年)、石井涼斗(1年)がいずれも選手権で追った負傷の影響などで欠場。また選手権で10番を背負っていたFW中田充樹(2年)はギブスを右足にはめた状態とベストメンバーにはほど遠いものだった。

 高橋健二監督は「(主力のいない間に)選手層を厚くしたい。次の選手たちにとっては(主力不在は)チャンス」と期待を寄せていたが、新チーム初戦は高校選手権の優秀選手に選出された渡辺主将が「立ち上がりから落ち着くところがなくて、ミスも反省点も多い試合」と顔をしかめる消化不良の試合となってしまった。

 試合開始早々、流れの中からまさかの先制点を献上。グラウンドの外から試合を見つめていた前主将で高校選手権優秀選手のDF須藤貴郁(3年)が「(下級生が多く)DFの安定感が欠けていた」と分析する隙を突かれて失点してしまった。それでも選手権で躍進したチームは「栃木では負けるわけにはいかない」とばかりにギアチェンジ。失点直後に左サイドからダイレクトのパス交換でチャンスをつくり堀越が同点ゴールを決めると、さらに渡辺主将のループパスでDFの背後を取った堀越が冷静に勝ち越しゴールを奪った。

 後半、抜群の展開力を見せる渡辺主将を起点に、阿久津ら両サイドバックの果敢なオーバーラップなどサイド攻撃を徹底した矢板中央は相手を圧倒。堀越と菊地のシュートが立て続けにクロスバーを叩くなどなかなか追加点を奪えなかったが、それでも試合終盤に渡辺の左CKから菊地が左足シュートを決めると、直後にも左サイドを突いた吉澤からのパスを受けた堀越がこの日3点目のゴールを決め、粘る相手を振り切った。

 攻撃陣を中心に全国4強メンバーが多数残るだけに周囲の期待は早くも高まっているが、選手たちは勝つために何をしなければならないかは分かっている。3年生の先輩たちは「県ベスト8が限界」という前評判を「かつてないほど」(高橋監督)のひたむきな練習と、それぞれが役割を貫く守備で評価を覆す進撃を見せた。

 渡辺主将は「周りの期待は大きいけど、プレッシャーを力に変えること。練習から高い意識でプレーすること」と宣言し、指揮官も「守備と運動量」の大事さを説く。3年生たちとともに作りあげた勝つサッカーを進化させて選手権で再び国立のピッチに立ち、そして果たすことのできなかった「あと2勝」を手にすること。三浦は「(選手権では)最後甘さが出てしまったと思う。最後のところで勝てるチームになるために甘さを出すことなく1年間頑張りたい」。3度目の選手権出場で成し遂げた今冬の快挙。昨年以上のタレントを揃え、大型チームとなる可能性も秘める矢板中央は、「先輩たちのサッカーを原点に」新たなる一歩を踏み出す。

(取材・文 吉田太郎)

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