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[大学選手権]「金メダリスト」實藤「来年はもっと飛躍を」

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[12.26 全日本大学選手権準決勝 高知大1-2中京大 平塚]

 ふたつめの金メダルには手が届かなかった。2010年、誰より飛躍を遂げた高知大DF實藤友紀(4年)の目の前で決勝弾はゴールへ吸い込まれた。1-1に追いつかれて迎えた後半23分、最終ラインの背後へ抜け出しかけた中京大FW藤牧祥吾(3年)に身体を寄せた實藤だったが、「あともう少し寄せてやろうと思っていたんですけど、あのタイミングで打ってくるとは」。相手ストライカーは實藤がプレッシャーを強めるよりも早く右足を振りぬき、ボールはGKの頭上を越えてゴールへと突き刺さった。

 實藤はU-21日本代表の一員として出場した第16回アジア競技大会決勝で優勝ゴールを決め、日本にとって初となる金メダルをもたらした。また抜群の身体能力を生かし、右SBのレギュラーとしてアジアトップレベルの選手たちを封殺。アジア競技大会前、全国的に無名だった地方大学のDFは一躍、全日本大学選手権の「大会の顔」として注目を集める存在となった。

 大学最後の公式戦でもある今大会、實藤は高めた評価通りの実力を発揮。九州の強豪・鹿屋体育大、そして連覇を狙った明治大を連続完封した。だが準決勝は明治大戦で負傷した右足の痛みを抱えながらのプレー。本人は「アドレナリンが出て何ともなかった」と強がったが、微妙に感覚がずれていたのかもしれない。それでもマークしていたFWに叩き込まれた決勝点の事実を素直に受け止めていた。「次、上でやるときもああいうタイミングで打ってくる選手はいっぱいいる。きょうやられたこと繰り返すのではなく、次のステップに生かしたい」。加えて「(後半は)前がかりになってみんな自分のことで精一杯になってしまっていた。自分が統率しなければいけなかった」

 この日視察に訪れたU-21日本代表の関塚隆監督からは、“練習要員”として27日から31日までJ-GREEN堺(大阪)で行うAFCアジアカップカタール2011の日本代表トレーニングキャンプ参加を打診されたが、右足の負傷もあり辞退。自身も「ツキがあった」と表現していた2010年シーズンは完全に終了した。ただ地元・高知では複数テレビ局の取材を受け、「ローソンでサインを求められた」ほど知名度を上げた躍進の1年。「高知大では地域の人の協力もあって人とのつながりができて、自分も人間として大きくなったと思った。ひとりではこんな舞台に来ることはできなかった。周りの人の支えがあったからこそここまでこれた。2010年、自分としては飛躍できたんじゃないかと思う。でも終わりがよくなかった。来年はもっと、2010年よりも飛躍したい」。

 2011年は川崎フロンターレへ入団。川崎Fの向島建スカウトグループ長は實藤のプレーについて「(確実に)よくなっている。自信をもってやっていた」と評価。そのサポーターへ向けて實藤は「体の強さ、スピードを見てもらいたい。DFなんだけど、攻撃できるところも見てもらいたい」。1月中に提出する卒論のテーマは「アジア大会について」。すでに日本サッカー協会から資料を取り寄せた。飛躍を遂げ、金メダルを獲得するまでの日々を自分のことばにまとめてプロ1年目、そしてロンドン五輪アジア予選の始まる重要な1年をスタートする。

(取材・文 吉田太郎)
第59回大学選手権特集

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