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[MOM958]富山一FW渡辺仁史朗(3年)_絆が生んだ決勝ゴール

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.3 全国高校選手権3回戦 富山一3-2市立浦和 駒場]

 2人だからこそ感じられるものがあった。通った小学校こそ違えど、小学4年生から同じサッカークラブでプレーする富山一のFW渡辺仁史朗(3年)とMF大塚翔(3年)。中学時代もチームメイトとして過ごし、高校3年生を迎えた今年度でコンビ歴は9年目を迎えた。そんな2人が、チームをベスト8に導く決勝ゴールを生み出す。ゴールを奪った渡辺が振り返る。「あそこにボールが来ると思っていた」。

 この試合、渡辺は序盤からゴールを脅かした。GKにセーブされたものの、前半4分にチームのファーストシュートを放つと、前半17分には均衡を破る先制ゴールを叩き込んだ。左サイドのDF竹澤昂樹(3年)が自陣から敵陣深くへとロングボールを蹴り出すと、そこに反応したのが渡辺。相手DFとの競り合いをものにすると、鋭く右足を振り抜く。DFに当たってコースが変わったものの、シュートはゴールマウスに吸い込まれた。

「自分の思いどおりではなかったですね。DFに当たってしまいましたから。でもいつも以上の観客の前で決められて、最高にうれしかったです」。対戦相手である市立浦和の地元・駒場スタジアムでの試合に、1万379人もの観衆が集まっていた。その中で奪った先制ゴールを、素直に喜んだ。前半20分に大塚がPKを決めて、リードを2点に広げると、同25分後には2人の阿吽(あうん)のコンビプレーで試合を決定付ける3点目を奪う。

 右サイドでボールを受けたのは大塚。その前方へ渡辺が走り出す。2人の周囲には浦和市立の選手が密集していたが、守備陣を無効化させるスルーパスが大塚から渡辺へと渡った。「ジンとはトップとトップ下でずっとプレーしてきました。だからアイコンタクトで動きは分かります」と大塚が語り、「ショウはスルーパスが好きなので、感覚的にあそこに来ると分かりました」と渡辺が語ったように、2人にしか見えないパスルートがゴールへの道を切り開く。ダイレクトで渡辺が合わせたボールはゴールネットを豪快に揺らし、チーム3点目が生まれる。長い年月をかけて構築されたホットラインが、最高の舞台で眩い光を放った瞬間だった。

 後半は防戦一方となり、自陣に釘付けとなる時間帯が増えた。しかし、前線に1人残った渡辺は、味方が蹴り出すロングボールに向かって走り続けた。たとえ相手DFを背負っていても、ワンタッチで裏に抜け出すなど、技術の高さも見せ付ける。「ボールを追いかけるのは大変でしたが、あれが僕の仕事。相手からボールを奪って追加点が取れれば最高ですしね」と話したように、相手DFと競り合い、こぼれ球に反応してボールを前へと運び、最後までゴールも狙い続けた。3点差から2点差に詰め寄られて辛勝したチームにおいて、2ゴールを奪った上に、試合終了のホイッスルが鳴るまで献身的に動いた背番号9が果たした役割は大きかった。

 国立まであと1勝、そして優勝まであと3勝と、頂点が薄っすらと見えてきた。だからこそ、目標は今まで以上に明確なものになる。最高の相棒である大塚は「最後の大会なのでジンとはチームを引っ張って行こうと話しています。日本一になって、笑って卒業できればいいですね」と口にした。もちろん渡辺も同じ気持ちで戦っている。「次の試合に勝って国立に行きたいし、絶対に日本一になりたい」。9年間、歩みをともにしたコンビは、富山県史上初の選手権制覇を視界に捉えている。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)


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