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[選手権]成るか「自信を与えてくれた」久御山越え、京都橘が京都府勢45年ぶりVへあと1勝

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[1.12 全国高校選手権準決勝 京都橘3-0桐光学園 国立]

 第91回全国高校サッカー選手権は12日、準決勝を行い、京都橘(京都)が桐光学園(神奈川)を3-0で下し、初優勝へ王手を懸けた。

 優勝すれば、京都府勢としては1967年度の洛北以来45年ぶりとなる全国制覇。出場2回目、前回出場時は初戦敗退だった京都橘が歴史を変えようとしている。準決勝の対戦相手はプリンスリーグ関東1部王者で今大会、四日市中央工(三重)、作陽(岡山)などとの強豪対決を制している桐光学園(神奈川)。京都橘の米澤一成監督は「始める前から桐光さんの方が自力に勝るところは目に見えていた。ディフェンスの意識を高めて試合に臨みました」と説明していたが、今大会初戦から準々決勝まで全試合で失点していた京都橘が相手の強力攻撃陣を封じ込む。

 MF釋康二(3年)が「目立つ感じじゃないんですけど、セカンドボールを拾わないと攻撃がつながらない。だいぶセカンドボールを拾って試合の流れを掴むことができたと思います。意識してできたと思います」と振り返ったように、釋とMF宮吉悠太(2年)のボランチコンビの健闘によってセカンドボールの攻防戦で優位に立った京都橘は、CB橋本夏樹(3年)を中心としたディフェンスラインも相手に決定機、シュートチャンスをつくらせない。そして迎えた前半42分、カウンターからFW仙頭啓矢(3年)がドリブルで中央を攻め上がると、左前方のFW小屋松知哉(2年)にスルーパス。PAの小屋松が後方へ落としたボールに反応したMF中野克哉(1年)の右足シュートはクロスバーを叩いたものの、跳ね返りを仙頭が右足で押し込んで先制点を奪った。

 後半、京都橘は前掛かりになった相手の攻撃を跳ね返すと小屋松、仙頭の俊足2トップのスピードを活かしたカウンターで押し返す。そして後半31分、右サイドからMF伊藤大起(3年)が切れ込むと、PAでこぼれ球を拾った小屋松の左足シュートで2-0。桐光学園のU-18日本代表CB諸石健太(3年)が「0-1になって普段ならば踏ん張れるところを踏ん張りきれなかった」と残念がっていたが、さらに39分にはカウンターからFW赤澤祥平(2年)が抜け出し、最後はこぼれ球を拾った伊藤が勝負を決める3点目を奪った。

 全国トップクラスと言われる吹奏楽部の演奏など大応援に支えられたチームは決勝へのチケットを獲得。これまで全国での経験値が浅かったチームに勇気を与えたのは2年前に京都府勢として18年ぶりに決勝進出した久御山の存在だ。久御山はFW宮市亮(現ウィガン)が主将を務めていた中京大中京(愛知)との初戦を4-2で制すと、準決勝では優勝候補筆頭と目されていた流通経済大柏(千葉)にPK戦の末に勝利し、決勝まで駒を進めた。2000年以降、全国大会でわずか2勝しかしていなかった京都府勢の評価を覆す決勝進出。米澤監督は「ボクらが自信を持たせてもらったのは一昨年、久御山が決勝まで行かれたということ。自分らにとってもいい刺激になって、『自分らもやったら行けるんちゃうかな』と希望を持てるような活躍をしてもらった。そこに乗っかっていけたんやないかと思います」と説明し、仙頭も「京都はあまり注目されていなかったと思うんですけど、(久御山)あそこまで行けたんで、ボクらも『夢じゃないな』と思いました」という。ただ仙頭は久御山が決勝で滝川二に敗れていることにも触れ、「久御山は準優勝で終わっている。全国制覇の枠を開けてくれているのかなと思うので、そこを狙って行きたいです」と力を込めた。

 プリンスリーグ関西1部で5位に入った強豪校だが、普段の練習場は土のグラウンド。また学校のグラウンドはサッカーコート一面を取ることができないという。決して恵まれた環境ではなく、また今大会は主将のDF高林幹(3年)がウィルス性の胃腸炎で離脱するアクシデントもあったが、逆境を乗り越えた。伊藤は言う。「新人戦やインターハイはベスト8で終わったりしていた。『監督にレベルの低い時代』と言われていたので、ダメかなと思った時期もあったんですけど、細かいところから話し合ったり、全員でまとまりをつくることができていると思います。(スタッフたちを)見返してやろうと思っていましたし、3年なんで試合に出て、まず全国行って、勝ち進んでやろうと思っていました」。その願いどおりの快進撃、そして決勝進出だ。日本一まであと1勝。14日、京都橘は鵬翔(宮崎)との決勝を制し、「勇気を与えてくれた」久御山を越えて全国の頂点に立つ。 

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 吉田太郎)

【特設】高校選手権2012

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