[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.31 全国高校選手権1回戦 日本航空2-3佐賀商 江戸川]

　後半ロスタイム、圧巻のボレーシュートが決勝点になった。180センチ以上の“ハイタワー”を3人擁し、セットプレーを武器とする佐賀商が、ようやくチャンスをものにした。決めたのは、CBの松尾渉(3年)。FW顔負けのスーパーゴールだった。

　もちろん、偶発的に生まれたゴールではない。松尾は小学生から高校1年生まではFWを務めていたという。「高2のとき、(相良利朗)監督からヘディングの強さを活かしてDFをやってみないかと言われて。元々攻めより守りのほうが好きで、ボールを奪うのは得意でした。FWのときもあんなシュートは撃っていなかったし、FWだったらここまで活躍できなかったかもしれません」。DFとしてのセンスを見抜いてくれた恩師への感謝を語った。

「(残り)時間がなかったので、こぼれたら狙おうと思っていました。(シュートを)浮かすとチャンスがなくなるので、抑えて撃とうと。緊張していたし、ピッチも滑るので、前半からプレーが良くなかったですけど、(ゴールで)帳消しになったと思います(笑)」。記者に囲まれて緊張の面持ちだったが、得点シーンを振り返ると笑みを見せてくれた。

「前に攻め続ける1年」(相良利朗監督)というスローガンで挑んだ2012年。文字通りに、県大会5試合で26得点をあげ、攻撃力で相手を上回って佐賀を勝ち抜いた。さらに、全国でも1試合で3得点をあげて勝利をつかんだ。しかし、県大会から数えると5試合連続で失点しており、DFとしては「無失点」(松尾)を目標にしたいところだ。全国で上位進出を目指すには攻撃力とともに、高い守備力も欠かせない。

　目標とする選手は「DFカルレス・プジョール(バルセロナ)」(松尾)。高校卒業後は地元企業への就職が決まっており、サッカーはアマチュアチームで続ける予定だという。「みんなから信頼されるDFになりたい」と語る大型CBは、最初で最後となる全国の舞台で、さらなる躍進を誓っていた。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文　奥山典幸)

---

【特設】高校選手権2012
連載:高校マン・オブ・ザ・マッチ