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[MOM922]神戸U-18MF表原玄太(3年)_忘れていた武器で決勝点

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.21 Jユースカップ準決勝 神戸U-18 1-0札幌U-18 金鳥スタ]

 バイタルエリアから左へ突き進んだ背番号10に迷いはなかった。ステップを踏んでボールと身体のタイミングを合わせると、左足を振り切って先制ゴールを奪い去った。神戸U-18イレブンは、得点を挙げたMF表原玄太(愛媛FC内定)をあっという間に囲み潰し、その山の中で喜びを分かち合った。試合の立ち上がりには、連覇を狙う札幌U-18に二度のチャンスを作られた。ともに右サイドを破られてクロスの供給を許した。どちらもゴール前に相手がいないことに救われたが、ヒヤリとする場面だった。神戸にとってみれば、相手に脅威を突きつけるプレーが欲しかったところだ。まさにそのとき、10番を背負った表原の仕掛けがゴールを呼び込んだ。

 神戸の野田知監督は「あれは素晴らしかったですね。久々に彼のああいうプレーを見ました。いつもはあそこでシュートを外すけど、今日は入れてくれた」と笑って、得点シーンを称賛した。表原自身にとっては、気合いの一発だった。「今日は試合を決めるという強い気持ちで臨んでいたので、自分のゴールで勝てて良かった。相手がブロックを組んでいてスペースを見つけるのは難しかった。その中でワンチャンスを生かしたような形。パスを受けたときからドリブルをするスペースは見えていた。そのときに今日は珍しくGKの動きも見えたので(笑)決められて良かった。最近、カットインが少ないと思っていたので、今日は行ってやろうと思っていた」と秘めていた思いを明かした。

 神戸は、15日に埼玉でプレミアリーグのチャンピオンシップを戦ったばかり。フルタイムでも決着がつかずにPK戦へもつれ込んだ熱戦の疲労と、日本一を寸前のところで逃したショックとを振り払ってJユースカップに向けた意気込みを取り戻す必要があった。しかし、2日間のオフを挟んで迎えた練習再開日にもチームメートは元気を取り戻していなかった。その様子を見た表原は、練習開始前に一発芸を披露するなどしてチームの沈滞ムードを一掃。下級生が多いチームの中で、最上級生としての役割を果たしていた。しかし、自分がやるべきことがまだあることは知っていた。ピッチ上のプレーで引っ張ることこそが本当の役目だった。

 約1週間前のチャンピオンシップでは、神戸での成長がプレーに表れていた。テレビで試合を観戦していた地元の仲間から「お前、変わったな。中学のときはゴリゴリ、ドリブルで行ってたのに。パスが増えた」と感想を告げられたという。表原自身、この3年間でプレーの幅が出てきたことは実感していた。「ユース(U-18)に入ったばかりの頃は組織的な守備なんて何も知らなくて、(基本的なことを)教えてもらって『おお、これがユースのサッカーか』なんて思っていたぐらい。『ここで二度追いするのか』とかスタッフに教わりながら自主練習で身につけてきた。攻撃面でも、ユースに入ってからはパスが増えたというか、周りを見て使い分けることができるようになってきた」と成長の手ごたえを話した。しかし、振り返ってみる中で忘れていたことに気が付いた。だから、ゴールを振り返り「でも、その(新しいことを得た)分、自分の仕掛けも出さないといけなかった。忘れていた。チャンピオンシップでは出せなかったけど、元々の持ち味が出た」と笑顔を見せた。

 自分を成長させてくれた神戸でのプレーは、泣いても笑っても残り1試合。「90分守備で走れて、攻撃では試合を決めるゴールを取る選手というのが、目指す選手像。ここまで来たら勝つしかない。最後は笑顔で終わりたい」と何も惜しむつもりはない。持っている物すべてを出し尽くし、日本一のタイトルを取りに行く。

(取材・文 平野貴也)
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