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なでしこジャパンvsブラジル 試合後の佐々木監督会見要旨

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[8.3 ロンドン五輪準々決勝 日本2-0ブラジル カーディフ]

 日本女子代表(なでしこジャパン)は3日、ロンドン五輪準々決勝でブラジル女子代表と対戦し、2-0で快勝した。前半27分、FW大儀見優季(旧姓・永里)の今大会初ゴールで先制すると、後半28分にもFW大野忍が今大会初ゴールとなる追加点。守備陣も最後まで高い集中力を保ち、ブラジルの反撃を完封した。

以下、試合後の佐々木監督会見要旨

佐々木則夫監督
「耐えに耐えながら相手の隙を突くサッカーになったけど、よく結果を出してくれた。選手がよくやってくれたということに尽きる。もっと自分たちがボールを動かしてできるかなと思ったが、相手の身体能力、技術、パスワークに、してやられた感もある。ただ、戦い方を切り替えて、自分たちがやらないといけないことをまっとうして、結果を出してくれた」

―準決勝以降はどんな戦いをしていきたい?
「まずコンディション。選手一人ひとりのコンディションを整えながら、次のフランス戦に臨むしかない。前回フランスとやった反省を踏まえ、最近のフランスの状況も見て戦うしかない。相手のボールを奪ったときのサポートが非力になっている。プレッシャーもあるだろうし、こうした大きな舞台で結果も出さないといけないが、もう少し積極的なところを出しながらやれればと思う。ブラジルに対しても、もう少し気を利かせてボールを動かせば、守備の穴はあったはずだが、突き切れなかった。数少なく突いたところでゴールを奪って勝てたが、もう少しそのへんを積極的にやらせたい」

―ハーフタイムの指示は?
「ブラジルのイングランド戦を分析して、後半途中からスタミナが落ちると思っていた。あれだけハードワークをしていたし、相手陣内に行けば、空いたスペースがあるので、もっと勇気を持って動かせと言った。(後半の)立ち上がりはできたが、その後は相手の勢いが上回った。そこで切り替えて、リトリートしてカウンターというサッカーをしないと、この状況を回避できないと思って徹底した。状況によって、相手の持ち方が悪ければ、ラインを上げてプレスをかけて狙う。ダメならすぐにリトリートしてカウンター。その切り替えを徹底した中で、選手はよく我慢しながらやってくれた」

―大儀見の評価は? ブラジルの監督が『日本は守備的で、ブラジルが勝つべきだった』と話していたが?
「大儀見は点を取って結果も出してくれたし、厳しい状況でも守備に攻撃にハードワークしてくれた。ブラジルは非常にいいチームで、僕が予想していたよりも素晴らしいチームだった。もちろん、ジャッジする部分によってはブラジルでしょうが、五輪の戦いではどんなことが起こるか分からないし、最後の最後まで勝とうという意識で我々の方がまさったので、我々がウェンブリーに行くべきだと思っている」

―試合前は選手に何と言って送り出した?
「ホテルのミーティングでは、ある意味、腹を据えて、一発勝負なので、どっちが勝とうという意識が強いか、どっちが最後まで集中力があるかの勝負になると思っていたので、それを伝えた。ロッカールームでは選手たちが声をかけ合ってピッチに立った。ハーフタイムも選手は勝負の目になっていて、1点取られても取り返すという気持ちでピッチに戻っていった。その集中力は素晴らしかった。僕のコメントより、選手のお互いの声のかけ合いがよかったと思う」

―前半立ち上がりはブラジルの攻撃が流動的でつかまえ切れなかったが、どう修正した? 押し込まれながらも耐えられた要因は?
「公式戦でブラジルと対戦するの僕が監督に就任して初めてで、やはり親善試合と公式戦では違うなと思った。完全な3バックで来るのかと思っていたが、4バックで、攻撃もあれほど流動的に前線が流れながら受けるというのは、分析した中ではなかった。3バックに対して4-4-2でプレッシャーをかけるのは不得意なところもあったので、準備していたが、選手が切り替えてやってくれた。立ち上がりは想定外な相手の戦い方に動揺した感もあった。第1ディフェンダーが決まらず、ボールを動かされて、耐えるしかなかった。後半はリトリートと前から行くのを徹底してやった。現在のなでしこの状況では、それが一番いいのではないかと、切り替えた。状況は悪かったが、ブラジルの攻撃も最後のところはマルタ選手が引きすぎていたので、逆に我々は助かった。後半は少し慣れてきたのもあると思う。耐えるサッカーというのは、ドイツ(での女子W杯)でも数試合やっている。あの状況でどう対応するかは、感覚の中で彼女たちの体にしみ込んだものがあるだろうし、精神的にも肉体的にも戦術的にも培ったものがあるのではないかと思う」

―南アフリカ戦の戦い方を踏まえてプレッシャーもかかったと思うが、どう乗り越えたか? 大儀見と大野の2トップについては?
「大儀見と大野の2トップについては、大野が攻守にわたってアグレッシブにかかわれるようになってきたので、日本でのキャンプが終わった段階からイメージを持っていて、フランス戦からその布陣でやってきた。仕掛けのタメをつくったり、相手のDFの裏を取ったり、ゾーンディフェンスの中でボールを受けて間をつくったり、大儀見だけがターゲットではなく、彼女もターゲットになったり、裏に抜けたり、それが今、選手の中で功を奏している。やってみたら北京の2トップが、4年後、どう成長しているかという状況になっている(笑)。
 南アフリカ戦は僕の指示の中でああいう結果となり、このステージでやらせてもらった。実際、結果を出さなかったらというのもあったと思うが、そういう意味でも選手はよくやってくれたと思うし、日本で応援していただいている方にも、もう一度スペクタクルな試合を見せて、結果を出して、元気や希望を伝えられたらと思っている」

―決勝ではどのチームと対戦したいか?
「ウェンブリーでの準決勝という素晴らしいステージで、何とか今日より自分たちのサッカーができるように努めるだけだと思っている。勝てるかどうかは、相手がフランスなので分からないが、ウェンブリーという素晴らしいステージで、準決勝という素晴らしいオリンピックの舞台で、自分たちが今までやってきたサッカーをやるだけだと思っている。相手がどこであっても、決勝というさらに素晴らしいステージでやれることを望んで、これからコンディションを考えながらやっていくしかない」

―南アフリカ戦では勝ち点1を取りにいく戦いをして、これまでのなでしこにはなかったことだったが、選手はどう受け止めて、勝たないといけない準々決勝に向かっていったのか?
「勝ち点1を最初からは狙ってないんだよ。最初は勝ち点3を狙いにいっている。最初から勝ち点1を狙うワザなんてだれもできない。途中経過と、本当に時間がない中で判断した。それは選手も理解してやってくれた。その勝ち点1が、この試合に対してのモチベーションにはなっていたと思う。選手からクレームが来たわけでもないし、このステージで、ここのピッチで戦うことにスタッフも選手も一丸となっていた。もちろん、そういうジャッジがどうあるべきかは僕自身もまた考えないといけないところはあるが、実際に今日勝つというのが一番の目的で、そしてその先にもつながるということに視点を当てた戦い方だった」

(取材・文 西山紘平)

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