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なでしこジャパンvsフランス 試合後の佐々木監督会見要旨

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[8.6 ロンドン五輪準決勝 日本2-1フランス ロンドン]

 日本女子代表(なでしこジャパン)は6日、ロンドンのウェンブリースタジアムでフランス女子代表と対戦し、2-1で競り勝った。前半31分、MF宮間あやのFKから相手GKのミスを突き、FW大儀見優季(旧姓・永里)が2戦連発となる先制点を決めると、後半4分にはMF阪口夢穂が追加点。その後は猛攻を浴び、後半31分に1点を返されたが、フランスのPK失敗もあり、2-1で逃げ切った。五輪史上初の決勝進出を決め、これで銀メダル以上が確定した。

以下、試合後の佐々木監督会見要旨

佐々木則夫監督
「準決勝というステージまで選手たちががんばってきて、08年からオリンピックでメダルを獲得するという思いでやってきた中で、勝つんだという思いが、ちょっとの差でフランスの選手よりもうちのなでしこジャパンの方があったのかなと思う。ここまで来たら、何がどうこうより精神的なものというか、メダルを勝ち取るんだという思いがピッチの選手から伝わってきた。今日の勝利は感無量です」

―直前のフランス戦を踏まえた守備面の指示は? 2点を演出した宮間のFKについては?
「守備はセットプレーで2番の選手(レナート)に対し、阪口選手と熊谷選手が連係した中で対応しようと、ミーティングでも実戦でもトライした。決定的なチャンスは与えなかったと思うし、よかったと思う。フランスの出方はスタートからイメージどおりで、ミドルゾーンに引いてカウンターというものだった。我々としてはカウンターされる前に、ビルドアップできることも踏まえて何とか点を取りたいというのがあった。後半はフランスの足が止まるかなと思っていたが、やはりメダルを取るという思いはフランスの選手にもあり、消耗戦になったが、選手がよくがんばった。宮間についてはFKだけでなく、全体のバランス、鼓舞するところもチームの中で力になっている。彼女はピッチに出る前、ロッカールームでゲキを飛ばしたのだが、開幕戦同様に涙がグッと来た。それだけ宮間がピッチ外でもミーティングの中心になっているし、そういう中でみんなのメダルに懸ける思いがフランスよりも少しだけまさったのではないかと思う」

―は日本女子代表はエコノミークラスで、男子がビジネスクラスで来たというのは事実か? もしメダルを取ったら帰りはビジネスクラスになるのか?
「来るときは『プレミアム(エコノミー)』。ビジネスと同様だったので、全然問題なかった(笑)。メダルを取ったら帰りはビジネスと、噂では聞かせていただいている。ただ、席が全員分、空いているか心配なので、そのときは『プレミアム』で。選手もそうだけど、席がビジネスだとかエコノミーだとか、我々はあまり……。プレーを見てもらえば分かるとおり辛抱強いというか、そういう意味でエコノミーでもOKというのが今の力になっている」

―試合前のロッカールームでの宮間の言葉とは?
「『素晴らしいみんなと、素晴らしいウェンブリーという舞台に立てて、私はすごくうれしい』と。率直に感動を選手に伝えてくれて、一人ひとりの思いも同じだったと思うし、彼女の言葉がみんなに火をつけた。僕もまさかウェンブリーに監督として立てるなんて思っていなかったし、それも喜びだったので、宮間のコメントと一致したので、うるっときた」

―決勝の相手がアメリカになった場合の戦略は? PKに関して戦略はあるか?
「もしアメリカが出てきたときに、ここで戦略を言ってしまうと、決勝が厳しくなってしまうので控えさせていただきます。PKもそのときの状況でどうなるか。もし今日アメリカがPKになったらスカウティングできるでしょうが、我々の(PKに関する)スカウティングはできなかったということで、我々の方が有利かなと(笑)。闘志を持って、自分の力、仲間の力を信じて、そして監督の力を信じて戦ってくれと。戦略はそれだけだと思う。たまにはね(笑)」

―最後、攻め込まれた原因は? この試合で見えた選手、チームの成長は?
「後半の立ち上がりは普通に攻撃を仕掛けて、2点目を取りに行く。状況によってはリトリートしながらカウンターを狙おうとしていた。2点差が一番危ないんだと、2点目が入ったときに選手には伝えたが、2点取ったことで守り切れるだろうという思いが出て、どうしても一歩前に行く力が弱まった。逆に相手は2点ではあきらめない。もっとパワーアップして前に出てくる。そういう双方の関係があって、ああいう戦い方になった。アンバランスに統制するのもどうかなと思ったので、僕自身も選手の選択に任せ、状況を見ていた。ただし、カウンターに行くときは押し上げろと言った。もっと前でコントロールできればよかったが、思いのほか後ろになった。ブラジル戦もそういう戦いになって、何とか勝ち切ったという思いが、彼女たちにそういう選択をさせた。ブラジル戦で味をしめたものが、今のなでしこジャパンにはある。メダルを取るという思いが、リスクをかけないながらの戦い方に我々のチームを変化させているというか、そういう対応も出てきている。あの小さな福元選手が神様に見えた」

―ブラジル戦から改善できたポイントは?
「ブラジルとフランスはタイプ、戦い方が違う。相手を見ながら戦ってくれたことが成長したところ。イメージのビデオも見せながら準備はしたが、選手がよく準備してくれた。何より結果を出した。強豪国相手に辛抱強くやった。メダルが欲しい、獲得するんだという思いが今日の勝利に導いた。それに尽きると思う」

―メダルを獲得したが、選手にどれぐらい喜ぶ時間を与え、決勝に向けてどう切り替えるか?
「勝利した、メダルを獲得したというのは称賛に値するし、しっかり喜びを分かち合いたい。明日はしっかりコンディショントレーニングをして、日本料理を食べさせてあげたい。そういう企画をしてあげたいなと。そして、決勝に向けてさらに士気を高めていきたいと思っている。(試合時間は)日本の夜中だったが、数多くの人に応援していただき、パワーをいただいた。決勝で勝つか負けるかは分からないが、皆さんが感動するような試合をまた日本に伝えたい」

―4年前のチームとの一番の違いは?
「強豪国とかなり多くの試合をできた。W杯も含め、そのあともアメリカという素晴らしいチームと何試合もやらせてもらい、強くしてもらった。劣勢でも耐える力が付き、スピード、パワーを誇る相手とも戦えるようになった。そういう経験値が選手たちを成長させてくれた。アジアの予選も厳しいし、W杯のとき以上に成長している国々と厳しい戦いを我慢しながらやる。そして、ちょっとの差だけど、最後の点数は我々の方が1点上回り、勝利している。経験値が大きく成長させてくれたと思う。W杯に優勝したりして、いい条件にあたらないと、こういう場を与えられない。そうした場を与えられた状況の中で選手はそれを自分たちの成果としてやってくれて、今日も結果として出してくれた」

(取材・文 西山紘平)

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