[10.12 国際親善試合 日本1-0フランス サンドニ]

　欧州遠征中の日本代表は現地時間12日夜(日本時間13日未明)、フランス・パリ郊外のスタッド・ドゥ・フランス(サンドニ)でフランス代表と対戦した。過去1分4敗(PK負けは引き分け扱い)と勝ったことのないフランスとの敵地での一戦。日本は0-0のまま守備陣が粘ると、後半43分にFW香川真司が劇的な決勝点を奪い、1-0で競り勝った。

以下、試合後の選手コメント

●FW香川真司(マンチェスター・U)
――劇的勝利だったが、ゴールを決めたときの感触は?
「時間帯的にも良かったし、個人としても良かった」?
「――ゴールシーンを詳しく。
「日本は最後のチャンスということで(攻撃陣が)上がっていたし、右サイドにスペースがあった。今ちゃん(今野)が持った瞬間、右サイドのスペースに(長友)佑都が走って素晴らしいクロスを上げてくれた。練習どおりの形だった。素晴らしい速攻だった」
―歴史的な勝利、節目の勝利になる?
「そんなに節目ということは感じない。ただ、結果は大きい。僕自身も、厳しい状況だったので、自信が必要だった」
―前半は押し込まれていたが?
「前半は相手が予想以上に前から来ていて、守備ラインが下がってしまったことで、ボールの奪いどころが定まらなかった。後半はラインを上げて行くことや、サイドで起点をつくること、ボールを持ったときに前へ前へ行こうと話していて、それができた」
―ハーフタイムにはどんな話をした?
「ラインが下がってしまっているから、もっと上げていけ、ということと、サイドで起点をつくろうという話をした。あとはボールを持ったときに、前へ前へ行こうとした」
――試合後は選手同士で話した?
「技術的に見たとき、前半にシュートまで行けなかったのは課題だったけど、もっとボールをキープして、持てると思うと皆で言っていた。もっとボールを支配してやりたかったし、後半のようなプレーを前半からやりたかった」
――前半は縦パスがなかなか入らなかった。
「縦パスが入らないと、前に進まないし、ハーフウェーラインのところでボールを受けても、最後の3分の1のところでボールポゼッションしていくことが大事。前半は明らかに相手が押していた」
――乾選手が入って活性化された?
「入ったことでサイドに起点が出来たし、前半はうまくいかなかったけど、佑都も後半は起点になっていた」
―いいきっかけになったのでは?
「今季は国もチームもサッカーも変わった中、自信を持つためにも結果を求めたかったし、何かきっかけが欲しかった。それはゴール。そういう意味で点を取れたのは良かった」

●FWハーフナー・マイク(フィテッセ)
「いい勝ちですね。理想どおり点を取れて。勝ったことがデカイと思う。フランスはみんな身体能力が高いし、耐えるしかなかった。みんなで耐えて、攻撃にいけて、チャンスもつくれた。自分も決め切らないといけなかった」
―ピッチコンディションは?
「欧州っぽいというか、下がゆるい感じのピッチだった。みんなでカバーして勝ち取った勝利。勝ててよかった」
―フランスに初めて勝ったが?
「みんな勝てる自信はあったし、勝ててさらに個人的にも自信になったし、チームとしても自信になった」
―立ち上がりは押し込まれたが?
「みんなで耐えるしかなかった。そういう時間を耐えて、少ないチャンスをものにしたのがよかった」

●MF遠藤保仁(G大阪)
―どういう試合運びを考えていた?
「みんなが崩していかないといけないという気持ちを持っている。気持ちがあれば成長していけると思っている」
―今日、122試合目になったが?
「毎試合、勝ちたいという思いを持って試合を重ねてきたので、今日、勝って良かったと思う。でもそれは個人のことで、チームとは関係ない」
―何が良くて、ここまで来られた?
「サッカーは一人の力ではやれることが限られている。いろいろな人に支えられてやってきた。僕の力というよりは、周りの支えがあったからこそ、ここまで来ている。パフォーマンスを継続させるような工夫も特にしていないんです」
―フランスに初めて勝ったが?
「最後は勝ったけど、カウンター以外で完璧に崩せたのはほとんどなかった。でも、気持ちがあれば成長していける。次は今日よりも苦しむと思う。親善試合という気持ちではやらない」

●MF中村憲剛(川崎F)
「落ち着いて1つ2つ外せば、展開できるところはあった。ちょっと縦に急ぎ過ぎた。(香川)真司がうまく中に入ってくると、SBが真司に付けないから、中盤で俺か真司が空く。守備のリスクはあるけど、そこで前を向けたらチャンスになるし、そういうのがもっと増えれば面白くなると思う」
―前半6分にスパイクを交換していたが?
「相手に踏まれてスパイクが破けて。ちゃんとスタッド(が取り換え式のスパイク)は準備していた。そこをちゃんと書いといてくださいね」
―ピッチコンディションは問題なかった?
「昨日も練習でやっていたし、こういうイメージだろうなとは思っていた」

●DF今野泰幸(G大阪)
―決勝点のシーンは素晴らしいカウンターからだったが?
「自画自賛ですね」
―押し込まれる展開だったが?
「もう少しああいう展開にはしたくなかった。自分たち主体でゲームをコントロールしたかった。でも、攻め込まれてはいたけど、ラインも上げながらコンパクトにできていた。だから失点もゼロに抑えられたと思う」
―フランスに初めて勝った結果をどう評価する?
「それは監督が評価すること。自分はビデオを見て、ラインがどうだったか、もっと上げられたかを確認したい。そういうのが失点につながるし、ラインコントロールが一番気になる」
―フランスの印象は?
「相手もルーズだったし、3対2をサイドでつくりながら行けそうな気はしていた。アウェーの雰囲気なのか、グラウンドなのか、前半はうまくいかなかった」
―世界中に日本の存在をアピールできた?
「アピールとかではなく、僕らは日本を代表して、チームの能力、個人の能力を上げることしか考えていない。監督の目指すサッカーに少しでも近づけられるように。今日の試合はもう終わったこと」
―ベンゼマの対応が難しかった?
「中にも入って来るし、キープ力もあってなかなかボールを奪えなかったけど、決定的なところまでは行かれてない。試合前に考えていたとおりにできた」
―吉田との関係は?
「ラインコントロールを声をかけながらやろうと。リスクマネジメントとしてボールとは逆サイドのSBを戻そうと話していた」
―手応えをつかめた?
「ボールも何度も奪えたし、やれるなとは思った。ただ、ビルドアップのところで、個人としても、チームとしても、もっとやれたのかなと。ちょっとミスが多かった」
―決勝点の場面はドリブルで運んでいるときから長友が見えていた?
「最初、持ち上がったとき、あまりにもフリーで。後ろに相手がいるのは分かったけど、あきらめ気味でドフリーになった。(香川)真司が中に入ってDFが食いついて、右を見たら長友がいた。最初は見えてなかったけど、真司には長友が見えていたんだと思う。上手くDFを引き付けてくれた」
―ゴールが決まった瞬間、派手なガッツポーズを見せていたが?
「試合をやるからには勝ちたい気持ちだった。小さいころから見ていたフランスと、このスタジアムでやれるということで試合前から興奮していたし、そこで勝ちたいと思っていた。引き分けで終わるのではなく、勝ち切れたのは大きい」
―小さいころから好きだった?
「(01年に)0-5の試合が大好きで、10回以上見た。フランスに魅了されて(笑)。フランスの選手は滑らないのに、日本の選手だけが滑っていた。そういうのも含めて、あのフランスとできるのが楽しみだった。怖さもあったけど」

●DF長友佑都(インテル)
―アシストの場面は?
「カッサーノが『自分はアシストをしたいからギリギリまで味方を見る。それでも出しどころがなかったらシュートを打つ』と言っていて。シュートを打とうかと思ったけど、カッサーノのことが頭をよぎった。彼ならシュートと見せかけてクロスを入れるなと。ベストなタイミングだった。今野さんの(パスを出す)タイミング。(香川)真司の中に入って相手を引き付けるタイミング。すべてがマッチして、これは来たなと。最後まで冷静に周りが見えていた。相手も絶対に俺がシュートを打つというふうに見ていた」
―フランス相手にも1対1で負けなかった?
「1対1は世界でもやれる自信はある。世界との戦いで一人は抜けるようなプレーをしないと相手は崩れない」

●DF酒井宏樹(ハノーファー)
―先発は練習から分かっていた?
「もしかしたらあるのかなとは思っていた。緊張はあったけど、せっかくの整った舞台。こういうチャンスはなかなかないし、最初で最後という気持ちで臨んだ」
―内田がベンチスタートだったが?
「タイプが違うし、比較することはできない。今日のフランスみたいに、エブラがダメでもクリシーが出てくるような関係になりたい」
―前半にクロスからハーフナーがヘディングシュートを打つシーンもあったが?
「前半、ベンゼマは守備をしてこないのは分かっていた。2対1をつくれたし、欲を言えばもっと攻めたかったけど、相手も(前線に)3枚残していて、なかなか攻撃に重きを置けなかった」
―後半途中からはリベリが入ってきたが?
「とにかく自分と1対1になったらサイドに持っていくことしかできない。あのレベルの選手だと左も右も同じくらいに蹴れるけど、それでも右足には持っていかせないようにした」
―清武と2人の間を突破される場面もあったが?
「あのあたりがワールドクラス。悔しかったし、間を狙ってくるのは分かっていたけど、それまでフィジカルでは負けてなかったし、大丈夫だろうと……。まだまだです。ドイツでも強い選手はいる。もっともっとパワーアップしないといけない」
―フランスに初めて勝ったが?
「よく守れていたし、先発したからには結果を出したかった。自分が出て負けたくなかったし、無失点が一番よかった」
―後半は足を気にしていたが?
「すねを相手に削られて。できる痛みだったけど、つりそうになったのもあった」
―交代はベンチの判断?
「やっている以上、自分からはバツを出せない」
―ブラジル戦は大丈夫?
「捻挫とかではないし、打撲なので大丈夫」

●GK川島永嗣(スタンダール・リエージュ)
「もっと向こうが勢いを持って来るかなと思ったけど、少し落ち着いた前半になった。いいブロックもつくれていたし、なかなか攻撃には行けなかったけど、意図を持ってやれた。ギリギリのところで、相手のチャンスになりそうなところで、向こうが簡単に外してくれたり、DFもしっかり体を付けていた。相手もいい形でマークを外してきたけど、カバーの意識がよかった」
―前半も悪くなかった?
「意図は持ってやれていたけど、できた、できないで言えば、できなかったかもしれない。でも、2年前(の南アフリカW杯)は守備はできたけど、攻撃はできなかった。100%思っている形ではできてないけど、前に進んでいるかどうかで言えば、確実に前に進んでいる。自分たちの進んでいる方向は間違ってない」
―終盤は素晴らしいセーブが続いたが?
「相手がリスクを冒して攻めて来たので、ああいうシーンが出てくるかなというイメージは持っていた。我慢する時間も大事だし、チャンスをつくったときに決めることも大事」
―後半はフランスに対してスタンドからブーイングも飛んでいたが?
「「(フランスの選手も)大変だなと。プレッシャーがかかって当たり前のチームだし、僕らも欧州でプレーしていれば、そういうプレッシャーを感じることもある。そこで相手が前に出てきて、自分たちが点を取れたのはよかった」
―次はブラジル戦だが?
「ブラジルとの試合はまた別の試合。内容も同じにはならない。個人の能力は(フランスより)ブラジルの方が上かもしれない。自分たちも組織ではやれたけど、1対1をもっともっと求められる。一人ひとりが成長するためにもいいゲームにしたい」
―フランスに初めて勝ったという結果については?
「(01年に)ここでボロ負けして、フランスや欧州に良くない印象を残した。今回、フランス、欧州にいい印象を残せたのはよかった。でも、ここが終着点ではない。W杯でどういう結果を出せるかが大事。親善試合とはテンションの違う試合で結果を残せるかどうか。ここで立ち止まっている時間はない」

(取材・文　西山紘平、矢内由美子)